気候変動対応 -地球温暖化防止-
地球温暖化は、大量生産、大量消費、大量廃棄型の社会経済活動や生活様式の変革を迫るものであり、地球環境を維持、改善していくために企業が取り組むべき喫緊の課題であると認識しています。昨今の顕著な温暖化事象や新技術開発を受け、2021年に設定した気候変動対応について、TCFD開示のフレームワークに沿って社内論議を重ねて見直しを行いました。イトーキグループは、サプライチェーンを含め、新目標に向けて着実に推進していきます。
ガバナンス
気候変動対応に関わる方針や戦略は、取締役常務執行役員・企画本部長が管掌しています。この枠組みの中で、経営企画部下のサステナビリティ推進課がマテリアリティ設定、中期環境計画、個々の対策の進捗状況などを立案・報告。適宜、管掌役員を経て常務会で審議・報告され、取締役会による監督を受ける体制をとっています。
リスク管理
気候変動のリスク・機会は、TCFD提言に沿って抽出し、マッピングの上、特定しました。マッピングは影響度と発生可能性の2軸で評価し、それぞれ重大、大、中、小の4段階で点数化。影響評価を大、中、小に分類しました。
大と評価されたものは自動的にリスク・機会として特定。中の評価のうち9点がついたものは関係者内で議論の上、判断しました。以下、リスク分析マップ内の①~⑧、機会分析マップ内の①~④が特定されたものとなります。
戦略
特定したリスク・機会に対する対応策は、外部有識者と共にTCFD提言に沿って、温度シナリオ、時間軸、財務影響度、発生可能性を勘案しながら議論を重ね、対応策を策定しました。
リスクの対応策
リスク分析マップで特定したリスクを移行リスクと物理リスクに分類し、移行リスクは1.5℃シナリオ、物理リスクは4℃シナリオでそれぞれ対応策を検討しました。その結果、移行リスクに対しては「CO2排出量削減のロードマップの実行」や「継続的な省エネ活動」など、物理リスクに対しては「BCPの定期的な見直し」や「重要部品の複数調達」などの対応策を策定しました。
移行リスクの対応策
物理リスクの対応策
機会の対応策
機会分析マップで特定した機会は、1.5℃と4℃の両方のシナリオで対応策を検討しました。その結果、「環境配慮型製品および働き方ソリューションの開発強化」、「多様な働き方を支える製品開発やソリューション営業の強化」などの対応策を策定しました。
- 時間軸は、短期:0~1年、中期:1~3年、長期:3~10年としています。
- 影響評価は、リスク分析マップおよび機会分析マップでの影響評価の得点を表しています。
指標と目標
指標は、中期環境計画2026(目標項目)の中でCO2排出量削減、総エネルギー投入量削減、廃棄物量削減、リサイクル促進、水使用量削減の5項目を設定しています。この中で柱となるのが、移行リスクの対応策でもあるCO2排出量削減です。Scope1、2、3ごとに、それぞれ2030年の削減目標に向け、中期環境計画2026に取り組んでいきます。
2023年度のKPIと実績
2023年度のCO2排出量削減目標(Scope1~3の合算)として掲げた、2013年度比12%削減に対し、結果は8.5%削減となりました。
2023年度目標 | CO2排出量(Scope1~3)の削減 2013年度比12%削減 |
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2023年度実績 | CO2排出量(Scope1~3)の削減 2013年度比8.5%削減 |
Scope1、2の実績
Scope1、2については2013年度比33%削減の目標に対し、結果は34.7%削減となり目標を達成しました。また、売上高原単位当たりのCO2排出量については、2013年の0.187t-CO2/百万円より、0.088減少し、0.099t-CO2/百万円となりました。Scope1、2削減の具体的な取り組みについては以下で紹介します。
Scope3の実績
2023年度のScope3のCO2排出量は229,458t-CO2となりました。2013年度比は6.4%削減になります。なお、Scope3の集計については、2022年に引き続き報告対象の見直しを行い、グループ会社6社を新たに算定に加えています。またカテゴリー1についてはグループ間の集計方法を是正し、2019年度のデータに遡って修正を行っています。
Scope3のカテゴリー別排出量割合
2023年度におけるScope3のカテゴリー別CO2排出量は、カテゴリー1の「購入した製品・サービス」が最も多く、全体の87%を占めています。CO2排出量の削減を進めるためには、カテゴリー1に関わるサプライチェーンとの協働が重要であると認識しています。詳細数値はESGデータブックをご参照ください。
それぞれの実績内容については下記をご覧ください。
具体的な取り組み
イトーキグループでは2050年カーボンニュートラルを達成するため、バリューチェーン全体で関係するみなさまと協働しています。中期環境計画を単年度目標に落とし込み、それぞれの分野でCO2排出量削減活動に取り組んでいます。ここでは主な部門での具体的な取り組み事例をご紹介します。
製造部門の取り組み
APセンターのオンサイトPPA方式による太陽光発電システム(2023年2月稼働)
イトーキグループでは、ポストコロナにおけるオフィストレンドの変化、ペーパーレス化等の影響を考慮し、生産性向上を目的として生産ラインの再編を実施。これに加え、各製造部では工場内照明のLED化、粉体塗装の導入、低温乾燥への変更によりエネルギー効率の向上に取り組んでいます。併せて、オンサイトPPA方式による太陽光発電システムを導入することで再エネの促進を図り、さらなるCO2排出量削減に取り組んでいきます。
物流部門の取り組み
イトーキ東京ロジスティクスセンターが入る物流倉庫
貨物の委託物流量が3,000万トンキロ以上あるイトーキでは、運送ドライバーの労働時間に上限が課される「物流2024年問題」は対応すべき重要課題です。この課題に対応する為、2023年8月に「イトーキ東京ロジスティクスセンター」および「イトーキ東京BASE」を開設しました。ここでは首都圏における配送効率130%向上の目標を設定。倉庫の効率的な運用、配送時間の短縮、トラック稼働率の向上を目指しています。
ESG推進プロジェクト
ESG推進プロジェクトの進捗報告会
2022年7月より開始された「ESG推進プロジェクト」をより実効性の高い活動とするため、各本部が目標に対する施策を検討し、社長をはじめとした社内取締役にレビューする仕組みに変更しました。12月には年間総括として進捗報告会を行いました。これと併せてCO2排出量削減に資するスモールプロジェクトを推進し、最終的に各部門において事業化に向けて取り組むことを確認しています。ESG推進プロジェクトは2023年末で発展的に解消し、関係各部の活動に引き継がれています。
サプライチェーンの取り組み
サプライヤーのみなさまには、年初に開催している方針説明会等を通じて、イトーキの取り組みをご理解いただく機会を設けてきました。2023年度はイトーキに納入する部材、資材ごとの重量データを提供いただき、CO2排出量Scope3のカテゴリー1「購入した製品・サービス」の算定において数値の精度向上を行いました。今後は情報提供いただく対象サプライヤー数を拡大し、より一層の精度向上を目指していきます。
今後の課題
現在Scopeの算定は環境省が定める「サプライチェーンを通じた温室効果ガス排出量算定に関する基本ガイドライン(ver.2.4)」に沿って算定しています。今後は重量データに加え製造段階におけるCO2排出量算定のための情報の提供に向けてサプライヤーのみなさまとコミュニケーションを深化させ、より精緻な排出量把握に取り組んでいきます。