
2019年に始まった働き方改革。現在多くの企業で働き方改革に向けた制度整備が進んでいますが、実際の職場環境とのギャップを感じるという声も少なくありません。
本コラムでは、働き方改革の概要、企業の取り組み事例、現状の課題、および「制度×環境 」の視点から見た解決策について、わかりやすく説明します。働き方改革の推進に課題を感じている方や、次のステップを模索している方は、ぜひ参考にしてください。
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はじめに、働き方改革制度の概要と目的、背景について見ていきましょう。
働き方改革の概要
働き方改革は、日本政府が推進する労働環境の改善施策であり、具体的には「労働者が多様かつ柔軟な労働形態を選択できる社会」の実現を目指す取り組みです。
「働き方改革関連法」は2019年4月から施行され、長時間労働の是正や非正規雇用の処遇改善などの施策が進められています。
働き方改革の目的ときっかけ
働き方改革が注目されるようになった背景として、まず少子高齢化による労働力不足が挙げられます。日本の人口は2050年には1億人を下回ると予測されており、女性や高齢者など多様な人材の活躍が不可欠となっています。
企業には、育児や介護を抱えながらも仕事と両立しやすい労働環境の構築・整備が求められています。
働き方改革の企業の取り組み、具体例

働き方改革に関する具体的な施策としては、以下のような取り組みが挙げられます。
テレワークなど柔軟な勤務形態の導入
働き方改革における「柔軟な勤務形態」を実現する施策の一つに、テレワークやフレックスタイム制の導入があります。コロナ禍をきっかけに急速に広まったテレワークですが、現在では出社と組み合わせるハイブリッド型の働き方が多く見られるようになりました。
2025年10月からは、3歳以上小学校就学前の子を養育する労働者のために「柔軟な働き方を実現するための措置」が企業に義務付けられます。フレックスタイム制や始業・終業時刻の繰り上げ・繰り下げ、テレワークなど、労働者が個々の状況に合わせて働き方を選択できるような制度整備が求められています。
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参考:厚生労働省「育児・介護休業法
改正ポイントのご案内」
https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/001259367.pdf
休暇制度や福利厚生の充実
休暇制度・福利厚生の充実施策として、有給休暇の取得促進に加え、傷病・出産・育児・介護などのライフイベントに対応できる「ライフサポート休暇」や、家族の誕生日や記念日のための「メモリアル休暇」など、特別休暇制度を導入する企業も増加しています。
さらに、業績評価に応じた特別休暇の付与や、連続休暇、季節休暇などの多様な休暇制度の導入によって、従業員のワークライフバランスの向上を図る取り組みが広がっています。
オフィス環境の改善
働きやすいオフィス環境を実現するため、フリーアドレス制の導入や多目的スペースの設置など、柔軟なオフィスレイアウトを採用する企業が増えています。
集中作業用ブースや、オンライン会議に適した音響設備を備えたスペース、カフェスタイルのミーティングエリアなど、多様な業務内容に対応した設計が注目を集めています。また、オフィスに自然光や植物を取り入れることで、従業員のストレス軽減やモチベーション向上を図る空間づくりも重要なトレンドとなっています。
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働き方改革の現状と企業が抱える課題
働き方改革関連法は2019年から順次改正されていますが、実際の現場ではどのような変化が見られるのでしょうか。ここでは、働き方改革の現状と企業が抱えるおもな課題を3つご紹介します。
1.「制度」と「現場」の乖離
働き方改革関連法の施行から数年が経過しているものの、制度と現場の実態には依然として大きな隔たりがあるようです。
例えば、時間外労働の上限規制に対応するため、多くの企業が残業時間の削減に取り組んでいますが、業務量自体は減らないという現実に直面しているケースが見られます。このため、同じ仕事を短時間で行うプレッシャーが増加したり、「見えない残業」や「持ち帰り残業」が生じたりする場合があるようです。また、業務の属人化が解消されないことで、特定の社員に負担が集中するという課題も少なくありません。
これらの問題の根底には、日本の人材不足も深く関係していると考えられます。内閣府の令和6年版経済財政白書によれば、2024年現在の日本企業の人手不足感は、特に非製造業や中小企業において歴史的に高い水準に達しているとのこと。この背景には、1995年をピークに減少し始めた生産年齢人口や、2011年以降一貫して減少している総人口など、約25年以上にわたる労働供給の制約があるという分析結果が示されています。
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参考:内閣府「令和6年度
年次経済財政報告
第2章」
https://www5.cao.go.jp/j-j/wp/wp-je24/h02-00.html
2. 従業員のエンゲージメント低下
働き方改革の推進に伴い、従業員のエンゲージメント低下も課題として浮かび上がっているようです。
時間と賃金がリンクする「勤務時間制度」では、効率的に早く仕事を終わらせても決められた時間までオフィスにいなければ賃金が控除される仕組みとなっています。そのため、生産性を高めても十分に評価されないと感じ、業務改善への意欲を削がれるという指摘があります。
制度だけを先行させた働き方改革は、結果として従業員のモチベーション低下につながるという点にも注意すべきかもしれません。特に若手社員においては、働き方改革による残業抑制が成長機会の喪失感につながり、エンゲージメント低下の要因となっている事例も見受けられます。
加えて、残業時間の削減による収入減少やリモートワークによる孤独感・疎外感、オフィスに出社する意義の見いだしにくさ、新しい働き方に対応した評価制度の整備不足なども、エンゲージメント低下を引き起こす要素として考えられています。
3. 多様な働き方とオフィス環境のミスマッチ
テレワークやフレックスタイム制などの柔軟な働き方が広がる一方で、従来型のオフィス環境がそれに対応しきれていないケースが少なくありません。おもな課題としては以下のような点が挙げられます。
- 出社とリモート参加が入り混じるハイブリッド会議に会議室の設備が対応できていない
- フリーアドレスを導入したものの個人荷物の保管場所が不足している
- 在宅勤務と出社が混在する中でのコミュニケーション不足している
- 従来のオフィスレイアウトが多様な働き方に対応できていない
特に出社と在宅勤務を組み合わせたハイブリッドワークが一般的になりつつある中、オフィスの役割そのものの見直しが求められています。
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働き方改革を実現するために重要な2つのポイント

働き方改革を実現するためには、どのような取り組みを実施すればよいのでしょうか。ここでは、重要なポイントを2つご紹介します。
1. 働き方改革に合わせた社内制度の整備
働き方改革を実現するためには、「長時間労働の是正」「多様で柔軟な働き方の実現」「雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保」という3つの基本柱を理解し、自社の現状と課題を正確に把握することが大切だと考えられます。
実際の社内制度の整備では、従業員一人ひとりが自分の事情に合わせて多様な働き方を選択できる環境づくりを目指すとよいでしょう。そのためには、フレックスタイム制度などの柔軟な勤務形態の導入、育児・介護との両立支援制度の充実、年次有給休暇の取得促進など、具体的な施策を計画的に実施していくことが求められます。
また、制度の導入だけでなく、従業員への周知徹底と理解促進も重要な要素です。働き方改革の意味や目的を共有し、新しい制度を積極的に活用できる風土を醸成することで、形だけではない実効性のある改革を進められる可能性が高まります。
2. 多様な働き方に対応したオフィス環境づくり
社内制度の整備と並行して重要なのが、多様な働き方を可能にするオフィス環境の整備です。
これからのオフィスには、一人で黙々と集中する仕事から、複数人で活発に行う作業まで、さまざまな業務スタイルに対応できる柔軟な空間設計が求められています。固定席にこだわらないフリーアドレス制の導入や、目的別のスペース設計(集中ブース、ミーティングスペース、リフレッシュエリアなど)により、従業員が業務内容に応じて最適な場所を選べる環境を整えることが効果的でしょう。
また、現代のオフィスはただ働くだけの場所ではなく、「社員が行きたくなる場所」「コミュニケーションが自然と生まれる場所」としての役割も期待されています。オフィスで働く人にとって、オフィスは「ただ作業をする場所」から「対面でのコミュニケーションや創造性を発揮する場所」へとその意味合いが変わりつつあるのが現状です。
具体的には、偶発的な出会いや対話を促進するレイアウト、心地よく過ごせる空間デザイン、最新のICT環境の整備などが挙げられます。いま企業には、自宅やサテライトオフィスでは得られない価値を提供できるオフィスづくりが求められているのです。

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働き方改革を真に成功させるためには、制度整備と環境づくりの両輪が欠かせないでしょう。特に多様な働き方が広がる現代では、従業員のエンゲージメントを高めるオフィス環境の重要性が一層増しています。
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