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働き方

戦略総務とは?総務部門が持つべき目標と役割、施策事例、実践ポイント

総務部門といえば「裏方として会社を支える存在」というイメージを持つ方が多いかもしれません。しかし近年、企業を取り巻く環境の急激な変化により、総務部門が積極的に経営に関わる「戦略総務」というアプローチが注目されています。

本コラムでは、戦略総務とは何か、なぜ重要なのか、そして総務部門が目指すべき方向性や目標、実現のためのポイントについて、具体的事例を交えながらくわしくご紹介します。

戦略総務とは?定義と従来の総務部門との違い

まずは戦略総務の基本的な概念を理解するため、従来の総務部門との違いについて見ていきましょう。

従来の総務部門が担ってきた機能

これまで総務部門が担当していた業務は、以下のようなバックオフィス業務が中心でした。

  • オフィス環境の維持管理
  • 物品調達
  • 各部門のサポート業務
  • 来訪者への対応
  • 管理層と現場スタッフの連絡調整など

これらには、他部門からの依頼への対応など、いわば受け身として発生する業務が少なくありません。
従来の総務業務は、他部門や経営陣が策定した方針やルールに従った業務の遂行、つまり働きやすい職場環境を積極的に「創り出す」ことよりも、すでに構築された仕組みを「維持・管理する」ことに重点が置かれる傾向にあった、といえるのではないでしょうか。

戦略総務が目指す新しいアプローチとは

一方、戦略総務は従来の総務機能に加え、企業の成長戦略において総務部門が主導的な役割を果たすことを目的とします。これまで経営層が中心となって進めてきた組織改革を、総務部門の専門性と視点を活かして推進するという新しいアプローチです。

具体的には、職場の生産性向上優秀な人材の獲得と定着労働環境の改善といった課題に対し、自ら問題を発見し、解決策を企画・立案します。さらに施策実行にも携わり、企業の経営方針への積極的参画を目指します。

もともと総務は、社内の様々な機能を統括・管理する立場で、経営層とは密接な関係にありました。このような背景を考えると、組織改革の推進役として発展していく流れは自然なものといえるでしょう。

戦略総務が注目される背景

戦略総務が注目されている背景には、現在多くの企業が直面している以下のような課題が関係しています。

深刻化する人材不足と競争激化

戦略総務が注目される背景の一つに、深刻化する労働力不足への対応が挙げられます。

人材不足の状況下においても、企業は存続していくために利益を出さなくてはなりません。さらに、優秀な人材はより魅力的な職場環境を求めて転職する傾向が強まっており、企業は人材の確保と定着のための施策が急務となっています。

このような事情から、従来はバックオフィス業務を中心に行っていた総務部門も、働きやすい環境づくりを通じて人材確保の取り組みを行うなど、戦略総務への転換が求められているのです。

働き方に対する価値観の変化

働き方に対する価値観の変化も見逃せない要因です。現在は多くの企業で、ワークライフバランスを重視した働き方を選択できるようになりました。

従来は決められた時間でのフルタイム勤務が一般的だった業種・職種も、フレックスタイム制が取り入れられたり、定年退職後のシニア層が再就職を選択したりと、多彩な雇用形態が一般的になっています。企業がこうした変化に対応するためには、オフィス環境や勤務制度を管理する総務部門が変革の中心的役割を担う必要があります。

戦略総務が担うべき3つの役割

戦略総務に求められる役割は多岐にわたります。ここでは、その中でもとくに重要な3つの役割について詳しく見ていきましょう。

1. 経営層と現場をつなぐパイプ役

戦略総務のおもな役割として、現場の実情と経営陣の方針の両方を正確に把握するという役目があります。

たとえば、様々な部署との接点が多い経理や物品管理業務を通じて、現場の生の声をできるだけ多く収集するといった取り組みが重要になってきます。

経営陣の意向を聞くこと、そして現場からの意見を経営層に伝えること、この双方向のコミュニケーションを実現できれば、よりスムーズな制度改善につながるでしょう。

2. 生産性向上のための環境整備

社内環境を改善し、従業員が最大限のパフォーマンスを発揮できるような体制構築も戦略総務の重要な仕事です。

  • 業務手順の見直し
  • 勤務形態や社内制度の変革
  • オフィスの設備、環境の整備

企業と従業員の双方にとってメリットのある変更点はないか常に検討し、実際に改革を推進していくことが求められます。

3. 組織風土の改善と人材確保

企業に優秀な人材を確保し、定着させるためには、従業員エンゲージメント向上のための取り組みが重要になります。

企業の理念や文化を社内に浸透させるとともに、従業員の満足度向上を図らなくてはいけません。そのためには、従業員一人ひとりが働きがいや愛着を感じられるような職場環境づくりが不可欠です。そしてそれは、人事制度や福利厚生などのソフト面と、オフィス空間などのハード面、両方からのアプローチが必要になります。

従業員満足度の高い企業は、外部からも「魅力的な勤務先」として注目されます。結果として、転職市場においても選ばれやすい企業となり、継続的に優秀な人材を採用できるという好循環が生まれます。

戦略総務への転換を成功させる4つのポイント

従来の総務から戦略総務への転換を成功させるためには、次の4つのポイントを押さえることが重要です。

1. 経営視点での情報分析

戦略総務の出発点は、まず会社が直面している問題を明確にすることです。各部門の責任者との対話を重ね、現状を正確に把握することから始めましょう。

効果的に情報を収集するためには、幅広い視野を持つ必要があります。業界の最新動向、他社の取り組み事例なども調査し、有益な情報を社内に還元していくことが重要です。

2. デジタルツールの活用

これまでの業務を継続しつつ新たな取り組みをスムーズに進めるには、業務効率化のためのデジタルツールを活用すると効果的です。デジタル化によって生み出された時間とリソースを、より戦略的な業務に集中させることができるようになります。

たとえば、円滑な意思疎通やリアルタイムでの情報共有が可能になる社内コミュニケーションツールの導入は、現在多くの企業で進められている施策の一つです。

3. 部門間コミュニケーションの促進

戦略総務は、明確な答えが存在しないような課題にも数多く取り組んでいかなくてはいけません。新たな制度の運用に難航することも少なくないでしょう。その中の1つが、部門を越えたコミュニケーションを促進し、従業員が素直な意見を出せる風土を育てることです。

結果を急ぐあまり試行錯誤する余裕がなくなり、現場が自由に発言しづらい雰囲気になると建設的なアイデアが生まれなくなってしまいます。立場や部門間の垣根を越えて、自由な意見交換ができる風土を育てることが、戦略総務への転換に成功する鍵となるのです。

4. BPO(外部委託)の活用

従来の業務を継続しながら戦略総務の変革を進めるにあたり、BPO(Business Process Outsourcing:外部委託)をうまく活用すると効果的です。総務の管理業務や事務作業は標準化しやすいものが多いため、専門企業への委託に適した部門だといえます。

定型業務を外部に任せることで、総務は社内に関する知識を要する中核業務に人材を集中できます。結果、組織全体の生産性向上にもつながるでしょう。

戦略総務として取り組む施策の例

企業の成長戦略において主導的な役割を果たす戦略総務ですが、具体的にはどのような取り組みを行えばよいのでしょうか。ここでは代表的な施策を4つご紹介しましょう。

働き方改革の推進

「労働者が多様かつ柔軟な労働形態を選択できる社会」を目指す働き方改革の推進において、総務部門の戦略的な取り組みが不可欠です。

たとえばテレワーク体制を整備する場合は、在宅勤務の許可だけでなく戦略総務が中心となって情報共有ツールの選定や業務フローの見直しを行うことが重要です。

リモートワーク中に疑問点が発生した場合に備え、手順書を準備・共有しておくことでスムーズに業務を進行できます。また、フレックスタイム制度を導入する際は、従業員の多様なライフスタイルに対応するために、勤務時間制度の改正も必要になります。

働き方改革関連法に対応しつつ、自社特有の課題や従業員の要望に応じた柔軟な制度改革を行いましょう。

福利厚生の充実と社内制度改革

戦略総務がその力を最も発揮できる領域の一つが、福利厚生の改善です。
おもな取り組み例として、以下のような施策があります。

取り組み分野 具体的施策の例
住居支援制度
  • 住宅補助から社宅借り上げ方式への移行を検討
  • 税務上の優遇措置と多様な生活スタイルの両立を目指す
子育て・介護サポート
  • 国の制度に加え、自社独自の支援制度を構築
  • 男女問わず休暇制度を利用しやすい環境づくり
健康促進
  • 健康診断費用の負担
  • 各種補助制度・助成制度の活用
  • 費用対効果を重視した健康維持促進策

福利厚生を充実させることで従業員のワークライフバランスが改善され、ひいては生産性向上と採用力の両面において企業力強化につながるでしょう。

デジタル化の推進

戦略総務によるデジタル化推進として、たとえば電子承認システムの導入が挙げられます。従来の紙ベースの申請書類を電子化することで、承認フローの迅速化と処理時間の大幅短縮を実現できます。

また、ワークフローシステムの導入によって、社内の稟議申請を電子化・自動化し、担当の承認者への通知から承認までのフローをシステム上で完結することが可能です。これにより外出先やリモートワーク時でも承認対応できるようになり、決裁までの時間短縮と記入漏れによる差し戻しの低減が実現します。

さらに、RPA(業務自動化ツール)を活用し、定型業務が自動化すれば、総務担当者はより戦略的な業務に集中できるでしょう。

オフィスの環境整備

オフィス環境の管理・維持はこれまでも総務が担ってきた業務ですが、能動的な「改善」は戦略総務の重要な取り組みです。

たとえば、従業員サーベイによってオフィスに足りていない要素を浮き彫りにします。そこから「メンバーに相談しにくい」「リラックスできる場所がない」「うるさくて集中できない」などの課題を抽出し、その解決策をオフィスに落とし込めば、実態と課題の分析に基づいた改善施策を実行できるのです。

オフィス環境の充実は従業員のモチベーションや帰属意識に寄与するうえに、訪れた求職者に「ここで働きたい!」と思わせるきっかけにもなります。壊れたから直す、足りないから補充する、だけではないポジティブな環境整備が、企業の成長にも大きな影響を及ぼすのです。

戦略総務を実現するイトーキのご支援

オフィス家具メーカーとして長年あらゆる企業のオフィス空間づくりをご支援してきたイトーキでは、戦略総務の取り組みを後押しする以下のようなサービスを提供しています。

総務部門が戦略的に主導する、オフィスと働き方の改善をご検討の際は、ぜひイトーキにご相談ください。プロジェクトの進め方を含めて、企業や部門に最適なかたちをご提案させていただきます。

ここからは、中でも近年ニーズが急増しているオフィスデータ分析サービス「Data Trekking(データトレッキング)についてくわしくご紹介します。

オフィスデータ分析サービス「Data Trekking(データトレッキング)」

これまでは感覚で行われることも多かったオフィスづくりですが、データを使用して客観的な根拠に基づき判断することで、より精度の高い改善が可能になります。
あらゆる分野でDXが急速に進む現代では、デジタル化によってオフィスであらゆるデータが取得できるようになりました。そこで得られたデータを分析し、改善に活かす、データドリブンなオフィス改善のニーズも高まっているのです。

イトーキが提供する「Data Trekking(データトレッキング)」は、「働き方」と「働く環境」をデータで捉え、その関係性をモニタリング。従業員と組織の可能性を最大化し続けるオフィス戦略を支援します。

  • スペース稼働データ(オフィス内の各スペースの稼働状況、人の状況)
  • 組織サーベイデータ(組織と個人のエンゲージメントやコンディション)
  • レイアウトデータ(オフィスの席数・面積・用途)
  • 独自指標データ(人事評価など、企業の独自データ)

これらのデータを掛け合わせ、包括的な視点で分析することで課題を浮き彫りに。実効性の高い打ち手までご提案するので、納得感の高いオフィス改善を実施できるのです。

まさにこれからの戦略総務にぴったりのソリューションとなっています。
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