目次
- 病院の人材不足の現状とその背景
- 病院が職場環境改善に取り組むべき理由
-
医療施設のバックヤードに必要な4つの要素
1.効率的な「動線設計」で医療業務をスムーズに
2.多職種連携を促進する「コミュニケーション空間」
3.スタッフが心身をリフレッシュできる「休憩空間」
4.「プライバシー」を守る安心ゾーニング -
働きやすい医療環境をつくる具体的な取り組み
職種を超えた交流を生む「スタッフコモンズ」
柔軟な働き方を実現する「フリーアドレス制」
リアルタイム所在確認できる「在席管理システム」 -
イトーキがご支援した医療施設の環境改善事例
3選
医療法人杏和会 阪南病院
医療法人徳洲会 湘南鎌倉総合病院 医局
医療法人社団こころとからだの元氣プラザ - 病院の職場環境改善はイトーキにおまかせください
厚生労働省が推進する医師の働き方改革や深刻化する人材不足により、医療現場では働く環境の見直しが急務となっています。中でも、医局やスタッフルームなどバックヤードの環境改善は、スタッフの定着率を高めるために欠かせない施策です。
本コラムでは、医療従事者が快適に働ける職場づくりの具体的な手法と、イトーキが実際に支援した環境改善の事例をご紹介します。
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病院の人材不足の現状とその背景
近年、日本の医療現場は深刻な人手不足に直面しており、人口減少や医療に求められるニーズの変化、医師や看護師の地域偏在によって、優秀なスタッフの確保が年々難しくなっています。
こうした状況を受けて、厚生労働省は2014年に改正医療法を施行し、「勤務環境改善マネジメントシステム」をスタートさせました。これは各病院が医師・看護師・薬剤師・事務職員などの様々なスタッフと連携し、勤務環境の改善を自発的に進めていく任意の仕組みです。
さらに、2024年4月からは医師の働き方改革による時間外労働の規制が開始され、これまで医師の長時間労働に頼ってきた日本の医療体制は、今、大きな転換点を迎えています。
病院が職場環境改善に取り組むべき理由
病院の職場環境の不備がスタッフの離職につながるケースは、よく見られます。
厚生労働省が掲げる「医療従事者が健康で安心して働ける職場環境の整備」という方針も、こうした現実を踏まえたものです。スタッフの定着率を高めるには、病院スタッフ全員が快適に働ける職場環境を整えることが重要となっています。
たとえば以下のような施策を行うことで、スタッフの心理的負担は大きく軽減します。
- 労働時間の管理や休憩時間の確保など基本的な勤務条件の改善
- 産休・育休制度や院内保育所など福利厚生の見直し
- 医局・スタッフルーム・休憩室などバックヤードの環境整備
- スタッフ同士の交流や情報共有をサポートする空間づくり
職場環境の改善によってスタッフのエンゲージメントが向上すれば、人材の定着はもちろんのこと、医療の質の向上や利用者満足度の改善にもつながります。
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出典:医療従事者の勤務環境の改善について(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/quality/index.html
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医療施設のバックヤードに必要な4つの要素
日本では少子高齢化が進んでおり、病院も地域に合わせた医療体制の見直しが必要になっています。病床数を減らすことで、使わなくなった病床エリアに余裕が生まれるケースも出てきました。
こうした空きスペースの有効活用として、これまで後回しになりがちだったバックヤード環境の改善を検討する病院が増えています。
バックヤード改善に取り組む際は、次の4つの要素がポイントになります。
1.効率的な「動線設計」で医療業務をスムーズに
医療現場では一刻を争う場面が多いため、スタッフが無駄な移動をせずに効率よく働ける動線づくりが欠かせません。医局からスタッフルーム、診療エリアへと移動しやすく、事務作業から患者対応へとスムーズに切り替えられるレイアウトが理想です。
また、患者から見えない専用の動線もあるとよいでしょう。休憩中のスタッフと患者が鉢合わせすることがなくなり、双方が気を遣う場面を減らすことができます。
2.多職種連携を促進する「コミュニケーション空間」
チーム医療の質を高めるには、職種を超えたスタッフ同士の自然な交流を促す空間設計が重要です。
医局や看護師ステーション、事務エリアなど、普段は接点の少ない部署間での偶発的な出会いを促し、集中作業と交流を使い分けられるような柔軟なレイアウトが、病院全体の連携強化のポイントとなります。
3.スタッフが心身をリフレッシュできる「休憩空間」
忙しい医療現場では、限られた休憩時間をいかに有効活用するかが、スタッフのコンディション維持につながります。
たとえば、自然光が入る場所に休憩室を設けることで、明るく開放感のある空間に。窓を開けて新鮮な空気を取り込むことも、気分転換に効果的です。さらに、座り心地のよいソファやカフェスペースなどを設置すれば、短い時間でも十分にリフレッシュできる環境が整うでしょう。
食事を取るために便利な、冷蔵庫や電子レンジなどを設置することも快適性を高めます。
4.「プライバシー」を守る安心ゾーニング
スタッフが安心して働けるように、最優先で配慮したいのが「プライバシー」です。
たとえば、着替えスペースと休憩スペースは壁できちんと仕切り、安心して利用できる間取りに。
ほかにも、院長室とスタッフルームの間に適度な距離を設けてお互いの会話が聞こえにくい配置にするなど、働く人の快適さのために工夫できることはたくさんあります。
休憩中のスタッフの様子が患者の目に触れたり、スタッフ同士の会話が漏れたりしてしまわないよう、スタッフのみが使用する場所は患者が利用する導線から物理的な距離を取ることも大切です。
働きやすい医療環境をつくる具体的な取り組み
医療現場で働くスタッフが快適に業務に取り組めるよう、各施設ではさまざまな工夫が進められています。
ここでは、スタッフ同士の連携や業務の効率化をはじめ、柔軟な働き方やコミュニケーションを促進するための具体的な取り組みをご紹介します。
職種を超えた交流を生む「スタッフコモンズ」
医療現場では職種を超えた連携が欠かせませんが、普段は働く階や部署が違うため、なかなか交流する機会がありません。そこで注目されているのが「スタッフコモンズ」と呼ばれる共有スペースの設置です。
医師・看護師・薬剤師・事務職員など、様々な職種のスタッフが気軽に立ち寄れる場所として設計され、軽い挨拶から本格的な勉強会まで、幅広い用途に活用できます。
ソファセットや自由に使えるテーブルを配置し、普段は接点のないスタッフ同士が自然にすれ違う動線をつくることで、偶発的なコミュニケーションが生まれやすくなります。
柔軟な働き方を実現する「フリーアドレス制」
自分の座席を持つ従来の固定席から、自由に座席を選べるフリーアドレス制に移行する医療機関も増えています。フリーアドレスとは、医局やスタッフルームでスタッフ一人ひとりが専用デスクを持たず、その日の業務内容に応じて最適な場所で働けるシステムです。
毎日異なるメンバーと隣り合うことで自然な会話が生まれ、職種を超えた交流も活発になります。このような出会いが新しいアイデアを生み、チーム医療の向上につながることが期待されています。
また、スタッフ全員に固定の席を設ける必要がなくなるため、比較的自由なレイアウトが可能になりスペース効率が向上します。それにより、これまで新たなスペースを生みだせることも、導入が進む理由です。
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リアルタイム所在確認できる「在席管理システム」
フリーアドレス制には柔軟な働き方ができるというメリットがある一方、「誰がどこにいるかわからない」という課題もあります。
そこで活用されているのが、スタッフの位置情報を把握できる在席管理システムです。とくにフリーアドレス化を実施した医療機関では、緊急時の連絡や業務連携において、スタッフの所在確認がより重要となります。
在席管理システムを導入すれば、緊急時の迅速な対応体制を構築できるだけでなく、日常的なコミュニケーションの効率化も図れます。
◇ ◇ ◇
イトーキは、小さなタグを持ち歩くだけで誰がどこにいるかをリアルタイムに把握でき、座席予約や利用状況の確認も簡単に行える在席管理システム「Workers
Trail(ワーカーズトレイル)」を提供しています。
約400台のIoTセンサーを活用した本社オフィスでの実証実験によって、高い精度と信頼性が確認されているため、医療現場の多様な運用にも柔軟に対応できるのが特長です。
イトーキがご支援した医療施設の環境改善事例 3選
ここからは、イトーキが環境づくりをサポートし、スタッフの働きやすさ向上をご支援した医療施設の事例を3つご紹介します。
医療法人杏和会 阪南病院
患者さんの療養環境の向上とスタッフの働く環境の向上、感染症・耐震に配慮した新病棟の病室は、全室個室で安心して療養できる環境を実現しました。心落ち着く空間で休息できる環境を創造。スタッフの働き方改革も意識した、多目的に使えるラウンジも設置しています。しっかり休憩して、こころにゆとりを与え、安全で上質な医療が提供できるようになるためのスペースとなりました。
医療法人徳洲会 湘南鎌倉総合病院 医局
「皆さまに愛され、信頼される病院」「来て良かったと言われる病院」を目標に掲げ、常に「断らない医療」を実践し続けている病院です。医局では、AMP(アクティビティ・メディカル・プレイス)を導入し、固定席を廃止して必要なスペースを確保。「医師の増加によるスペース不足」「休憩スペースの充実」「チーム内コミュニケーション」など、さまざまな課題を解決するために限られたスペースを有効活用し、医師が働きやすい環境づくりを目指しています。
医療法人社団こころとからだの元氣プラザ
人間ドック・健康診断を通して「こころとからだ」の健康に貢献することを理念とする医療法人社団こころとからだの元氣プラザ。同院は2020年4月に、飯田橋から神保町へと移転しました。「効率的なゾーニング」、「安心と信頼を獲得する建築計画」、「成長と変化へ対応しうる施設」を基本コンセプトに、受診者目線とスタッフの働きやすさに配慮した「人」に優しい施設を実現しています。
病院の職場環境改善はイトーキにおまかせください
病院・医療施設の働きやすさは、ひとつの取り組みだけでは実現できません。
勤務環境の整備、コミュニケーション促進のための空間づくり、ICTを活用した業務効率化など、ハード面とソフト面の多角的な施策を組み合わせることで、はじめて大きな成果につながります。
イトーキは、医療現場に最適な環境づくりをトータルでお手伝いいたします。スタッフが快適で安心して働ける職場の実現に向けて、ぜひ一度お気軽にご相談ください。