2026年10月01日
「働く」をもっと快適に、もっと自分らしく。AIが導く育てるオフィス
私たちは今のオフィスで、本当に生産性を高め、十分に力を発揮できているのでしょうか。集中できる場所がない、必要な人とすぐに話せない。日々感じる小さな不便には、働く環境をより良くするヒントが隠れているかもしれません。
イトーキが開発を進めているのは、データとAIを活用し、オフィスを継続的に最適化していく新たなソリューションです。AIを活用したオフィスづくりの最前線に立つ開発者3名に、現在の取り組みとその先に描く未来を聞きました。
株式会社イトーキ ソリューション事業開発本部 ソリューション開発統括部 プロダクト開発部 部長
伊藤 謙太郎
大手SIerでシステム開発を経験。流通小売の新規事業立ち上げを経て2024年にイトーキへ入社。AIを活用したオフィスソリューションの企画・開発を担う。
株式会社イトーキ ソリューション事業開発本部 ソリューション開発統括部 プロダクト開発部 AI開発チーム
酒井 美帆
2012年新卒入社。オフィス営業、人事、ABWコンサルティング、データ分析サービス「Data Trekking」の開発などを経て現職。オフィス業界の知見をもとに、AIソリューションの企画を推進する。
株式会社イトーキ ソリューション事業開発本部 ソリューション開発統括部 プロダクト開発部 AI開発チーム
ファム ニュン
ハノイ工科大学でソフトウェアエンジニアリングとデータサイエンスを学び、2025年1月に新卒入社。データ処理・実装を担当。
- 本文中の所属部署・役職・制度等は取材当時の情報です。
「つくったら終わり」から、変化し続けるオフィスへ
――働き方が多様化するなか、オフィスに求められることも変わってきているのでしょうか?
酒井:これまでのオフィスは、一度整備したら10年ほど使い続け、オフィスの契約更新や設備の老朽化、人員増加のタイミングで移転や改装をするのが一般的でした。
一方で今は、事業や組織、働き方の変化のサイクルが速くなっています。テレワークやハイブリッドワークの浸透、出社回帰、AI活用の広がりなど、企業を取り巻く環境は絶えず変化しています。
こうした変化によって、オフィスに求められる役割も変わっています。だからこそ、一度つくって終わりではなく、その時々の働き方や組織に合わせて、継続的に見直し、進化させていくことが重要になっています。
ただ、変化のたびに大規模な改装を繰り返すことは現実的ではありません。今のオフィスは働き方に合っているのか、どこに課題があり、何を変えるべきなのか。そうしたことを判断するには、実際のオフィスの使われ方をデータで把握しながら、課題を見つけ、改善を重ねていくことがこれまで以上に重要になっています。
「会議室が足りない」は本当?データとAIで見えてくるオフィスの課題
――では、そういったオフィスの課題を解決するために、AIやデータをどのように活用しようとしているのでしょうか?
酒井:私たちが目指しているのは、オフィスの計画・設計から完成後の運用まで、データやAIを活用しながら課題を捉え、改善につなげていくことです。
その中核となる仕組みとして開発しているのが、「ITOKI OFFICE AI AGENTS」です。
伊藤:例えば、「会議室が足りない」と感じたことがある人は多いと思います。
会議室を探し回ったり、空きがなくて会議を先送りしたり。多くの人が当たり前のように経験していることですが、こうした小さなロスが積み重なることで、生産性にも少なからず影響を与えています。
でも、本当に会議室が足りないのでしょうか。
実際にデータを見てみると、予約されているのに使われていない会議室があったり、少人数で大きな会議室を使っていたりすることがあります。現場では「会議室不足」に見えていても、実は会議室の数ではなく、使い方に原因があるケースも少なくありません。
酒井:これまでは、こうしたオフィスの実態を把握することが簡単ではありませんでした。
そこでイトーキでは、家具や会議室に設置したセンサーから利用状況を取得する「ITOKI OFFICE DEVICES」の開発も進めています。予約情報と実際の利用状況を組み合わせることで、「足りないから増やす」ではなく、「今ある環境をどう活かすか」を考えられるようになります。
伊藤:「ITOKI OFFICE AI AGENTS」の役割は、単にデータを見せることではありません。さまざまなデータから課題や原因を分析し、改善策の検討まで支援することです。
会議室不足はあくまで一例です。働く環境には、私たちが気づいていないだけで、多くの思い込みや非効率が隠れています。データとAIを活用することで、これまで見えなかった課題を捉え、解決策を考えられるようになります。
働きやすさから、企業の課題まで。AIで広がるオフィスの可能性
――AIによって、私たちの働き方やオフィスは、これからどのように変わっていくのでしょうか?
酒井:現在は、働きやすさやコミュニケーションだけでなく、生産性の向上、人材の採用や定着など、オフィスがさまざまな課題の解決に寄与することが期待されるようになってきています。
従来のオフィスづくりでは、社員へのアンケートやヒアリングなどをもとに要望を把握してきましたが、現在は予約情報やセンサーから得られる利用状況など、オフィスの実際の使われ方を示すデータも活用できるようになっています。AIでそれらを組み合わせて分析することで、働く人が感じている課題と実際の使われ方の両面から、お客様ごとに異なる課題や目指す働き方に合わせて、オフィスを継続的に改善していくことができるようになります。
伊藤:もう一つ大きいのは、変化への対応スピードです。AIを活用して働き方や組織の変化をより早く捉え、その時々に合った状態へオフィスをアップデートしていく。AIは、そのための判断を支える存在になっていくと思います。
──一方で、AIを活用すれば、それだけでより良いオフィスをつくれるのでしょうか?
酒井:AIだけで、より良いオフィスをつくれるわけではありません。オフィスづくりは専門性が高く、一般に公開されている情報だけでは分からないことも多い領域です。
イトーキは、家具づくりから空間づくり、働き方の研究やコンサルティングまで、長年オフィスに向き合ってきました。そこで蓄積した知見やデータとAIを掛け合わせることで、分析を実際のオフィス改善につなげられると考えています。
伊藤:「家具メーカーがAI?」と思われることもあります。
ただ、家具や空間といったハードだけでなく、AIやシステムまで一体で考えられることが、イトーキならではの強みです。リアルなオフィスを知っているからこそ、AIを技術だけで終わらせず、働く人の体験やオフィスの改善につなげていけると考えています。
「本当に必要なもの」を選び抜く。AIソリューション開発の難しさ
──AIでできることが広がる一方で、本当に役立つソリューションにする難しさもありそうですね。
酒井:AIはできることが多いからこそ、「何を実現するために使うのか」を見極めることが難しいですね。今はさまざまな機能をスピーディーに形にできますが、増やしすぎると使い方が複雑になり、本当に必要な価値が見えにくくなります。
だからこそ、「AIで何ができるか」ではなく、「お客様のどんな課題を解決するのか」を起点に考えています。プロトタイプをつくって実際に試していただき、その声をもとに改善する。そのサイクルを素早く繰り返しながら、本当に必要なものを見極めています。
伊藤:技術的に実現できることと、実際にお客様に使っていただけるものとの間には、ギャップがあります。
営業は目の前のお客様の課題を早く解決したい。一方、開発は多くのお客様に活用していただけるサービスにする必要があります。だからこそ、「何を実現したいのか」という目的に立ち返りながら、営業と開発で擦り合わせることを大切にしています。
業界を盛り上げて、働く人を幸せに。AIで描く未来
──今後、AIを活用してどのようなオフィスや働き方を実現していきたいですか?
ニュン:オフィスから集まるデータを活用して、働く人の行動やオフィスの使われ方をより深く理解できるようにしたいです。どこに課題があり、どう変えればより働きやすくなるのかを捉え、より良いオフィスづくりにつなげていきたいと考えています。
酒井:今は、オフィスの利用状況の可視化や予約、ファシリティマネジメントなど、それぞれの仕組みが個別に存在しています。今後はそれらをつなぎ、さまざまなデータをAIで分析しながら、オフィスの状態や課題を継続的に捉え、より良い環境へと改善していけるようにしたいですね。働き方や組織の変化に合わせて、オフィスも変化し続けられる。そんな仕組みをつくっていきたいと考えています。
こうした考え方がイトーキだけでなく、業界全体に広がってほしいと思っています。オフィスは、多くの人が一日の長い時間を過ごす場所です。だからこそ、新しい技術やサービスによって、もっと快適に、自分らしく働ける場所にできる。イトーキもその未来をつくる一社として、これからも挑戦していきたいです。
- 所属部署・役職・制度は取材当時のものとなります。現時点の情報と異なる場合があります。





