トップメッセージ

働き方そのものを提案する企業に進化し高みを目指す

社会から信頼・尊敬される企業(会社)になるために

はじめに、公正取引委員会から物流業務の委託内容において規定に違反するおそれがあるとして2024年11月28日に行政指導(警告)を受けたことについて、ステークホルダーのみなさまにご心配、ご迷惑をおかけすることになってしまいましたこと、改めて深くお詫び申し上げます。本件については、物流事業者様との取引適正化に向けた是正処置を行い、2025年3月17日をもって公正取引委員会への報告を完了いたしました。

コンプライアンス対談 [1056KB]

私は常々、「社会から尊敬される企業(会社)にならなければいけない」と社員にメッセージを発信してきました。どんなに業績が良かったとしても、それが規範に反することをして得た利益だったならば、何の意味もなく、また、そのような企業(会社)は長続きするはずがないと考えているからです。

それにもかかわらず、このようなことが起こった最大の原因は、社会の変化に対するアンテナが低く、変えるべき悪しき商慣習を変えることができなかったことと猛省しています。当然のことながら、経営陣をはじめ社員一同、これまで以上にコンプライアンス体制を強化し、引き続き、再発防止活動および独占禁止法をはじめとする法令順守のための意識改革を徹底していきます。

営業利益は悲願の100億円を突破

中期経営計画「RISE TO GROWTH 2026」の1年目であった2024年度は、売上高から最終利益までの全段階において過去最高を更新し、私が重要な経営指標のひとつとして掲げている営業利益は100億円を突破しました。これは、オフィス構築が人的資本投資の一手であると広く認知され、オフィス市場が活性化していることを受けて、しっかりと提供価値の向上が図れていることと、構造改革の効果によるものと認識しています。

結果、ROEは13.8%に向上し、PBRも1倍を大きく上回ることができました。加えて、もうひとつの重要な経営指標である従業員エンゲージメントスコア(会社に対する誇り)もさまざまな取り組みの結果、82.5%まで上昇し、世界のエクセレントカンパニーと肩を並べられる水準に達するなど、非財務的な企業価値も着実に高まってきました。

2025年度も増収増益を見込んでおり、本中期経営計画の最終目標である営業利益140億円、ROE15%は確実に達成したいと考えています。引き続き、資本コストと株価を意識した経営を実践し、少数株主保護の観点も踏まえた企業価値の向上を目指していきます。

オフィス市場はブルーオーシャン

人口減少の加速や在宅勤務の定着により、オフィスビジネスは市場のピークアウトが懸念されていました。確かに、家具販売の領域はコモディティ化が進み、差別化が難しいレッドオーシャンです。私が社長に就任する前は、イトーキもそこから抜け出せず苦しめられていました。しかし、それはもはや過去の話です。

コロナの収束に伴い、在宅勤務に慣れた社員が再び出社したくなるオフィスのあり方を経営者が真剣に考えるようになり、直近では、オフィスは生産性を上げるための設備機能として、コストではなく「人的資本への投資」と捉える流れが一気にきています。

また、少子高齢化で人手不足が深刻化していますが、一番頭を抱えているのは大都市より地方、大企業より中小企業です。こうした企業の経営者も、採用や離職の問題解決にオフィスが重要な役割を果たすことに気づき始めています。その結果、従来はコスト削減の対象であったオフィス構築が、違った角度で注目を集めるようになってきました。

また、経営者が求めているのは、単に居心地が良いオフィスではなく、社員のやる気や生産性を高めるオフィスです。オフィス投資を人的資本投資と捉えるならば、感覚ではなく、デジタルデータなど科学的根拠の活用によって、空間と働き方や生産性の因果関係を明らかにし、企業ごとの特性に応じた空間の改善を継続的に行う必要があります。つまり、「オフィスを作って終わり」ではなくなり、ここにも広大なブルーオーシャンが出現しつつあるということです。もはや余ったお金でオフィスを贅沢にする、というような話ではなく、企業理念や企業文化、さらには社員を大切にしている企業かどうかが、「オフィス」のあり方で評価される時代へと変わってきているのです。
オフィス市場の動向 [1082KB]
イトーキの未来設計(パーパス)[656KB] 

ワークプレイス事業の高収益化が加速

img_05.jpg主力のワークプレイス事業の粗利率はV字回復を経て一段と良化しています。その理由の一つは2024年7月に実施した価格改定の効果が挙げられます。私がイトーキに来て問題だと感じたのは、売上至上主義による安売りによって自らの価値を毀損していることでした。そういった考え方とは決別し、本来の提供価値を高め、それを正しく訴求する方針へ転換したことが功を奏しています。しかし、私はもっとファンダメンタルの部分での変化に目を向けています。

私たちは、オフィス家具を売る領域を「Office1.0」と定義しており、現在のワークプレイス事業の売上の6割を占めています。数字からは依然として家具売りがメインのように見えますが、空間デザインや内装工事を含む領域である「Office2.0」の割合が高まって現在の姿になっています。

「Of fice2.0」の領域では、お客さまを交えたディスカッションを経て導き出した最適な働き方を実現するオフィスレイアウトや、スペックインする什器を空間デザイナーが提案し、内装工事まで当社で請け負うスタイルがスタンダードになっています。つまり、家具を売るモデルから、上流から入ってオフィスを提供する、もっと言えば働き方そのものを売るモデルに進化していることが、ワークプレイス事業の高収益化をもたらしています。この領域において欠かせないのが、空間デザイナーの存在です。機能やテクノロジーは、ロジカルが優先する無機質な世界ですが、お客さまの感性に訴えるデザインの世界は別物です。価格競争と決別するうえでも、デザイン力を磨き、ロジカルにプラスしてデザインで選ばれるようにしたいと思っています。そのため、この3年間で社長直轄部門にしたほか、デザイナーを120名から180名へと大幅に増員してきています。あわせて、製品のブランド戦略を推進するため元ソニーの田幸宏崇氏をスカウトし、2025年6月に新たなプロダクトブランド「NII」をローンチしました。

もう一つのポイントは、リニューアル案件が売上の8割強を占めている点です。入札段階で価格競争に巻き込まれやすい新築に対し、リニューアルは元請けとなって付加価値を創出しやすいため、案件単位の粗利率が新築よりも圧倒的に高くなっています。しかも、このところ増えている地方の中小企業案件ほど、上流工程から入ってすべてを任せていただけることが少なくありません。加えて、資材価格の高騰によって、新築からリニューアルに切り替えるお客さまが増えてきている傾向にあります。

粗利率の良化は、短期的には価格改定の効果が大きいものの、中長期的には「Office2.0」の比率上昇や、地方・中小企業のリニューアル案件の拡大が主因になってくると考えています。そのため、新たな課題として、大都市圏に軸足を置いてリソース配分していたことがボトルネックとならないよう、柔軟かつ効率よく全国をカバーする体制を検討しているところです。

「オフィスは作ってからが勝負」の時代に

img_07.jpgこれまでのオフィスは、過去からのデータや経験に基づいて設計されてきました。しかし、これからは仮説によってつくられたオフィスが実際はどのように利用されているのかを検証し、改善を図っていくことが重要になる、と考えています。当社ではこの領域を「Office3.0」と定義し、モニタリングで得たデータを分析し、見える化したオフィスの課題に対応するオフィス改善施策を提言、実行するためのソリューション「Data Trekking」をリリースしました。昨年度の受注目標を40件としていましたが、予想を上回る60件を受注しており、お客さまからの期待の高さを感じています。

「Office3.0」の領域は、単に新たな商材が増えたという次元ではありません。「Office2.0」までは引き渡したら終わり、というフロービジネスですが、お客さまに伴走してオフィス改善のPDCAを回す「Office3.0」までやれるようになると、フローからストック型のビジネスに変わり、稼ぐ力も安定的なものになります。また、オフィスを利用するのは人間ですから使い方も絶えず変化します。その変化をデータで見える化できれば、むしろオフィスを作ってからが勝負の時代になる、と見ており、2025年度以降は、このビジネスモデルの転換を本格化させていきます。


設備機器・パブリック事業も成長途上

2024年度の業績で少し元気がなかったのが設備機器・パブリック事業です。納入先の工事進行が人手不足や資材高騰の影響により遅延していることが原因で、計画を下回りました。

もっとも、倉庫の無人化・省人化のトレンドに変化はなく、SAS(シャトル台車式自動倉庫システム)等の引き合いも増えているため、先延ばしになっている案件が集中する2026年度の営業利益は計画の30億円を十分に狙える状況にあります。

キーになるのは、連結子会社で研究施設向け実験用設備などを提供しているダルトンの収益構造改革です。同社は設備機器・パブリック事業の売上の過半を占めており、ここに上流から入る付加価値モデルを適用するとともに、イトーキとの人材交流によって改革を支援しています。もともとポテンシャルのある会社ですから、その効果が既に表れ、案件が増えはじめており、これからの展開に大いに期待しています。

なお、設備機器・パブリック事業の課題である開発およびエンジニアリング人材の確保については、ベトナムのハノイ工科大学出身の優秀な学生のリクルートが順調に進捗しています。

女性が出る杭に

2024年度は、社員一人ひとりの成長と挑戦を支える環境をつくるため、「Professional」「Pay for Performance」「Retention」をキーワードとする新たな人事制度を導入しました。「平等一律、前例踏襲、指示待ち」という課題に対し、プロフェッショナルな人材を育て、成果を上げた社員にはしっかりと報い、多様な人材が活き活きと働き続けることができるようにするという宣言です。これを実践するため、本中期経営計画においては100億円の人的資本投資枠を設けています。

2024年度は中期経営計画の発表後に、「それぞれの『働く』が、ここにある」というキャッチコピーで、約1000名の社員が参加する全社イベント「OUR ITOKI OUR STORY」を開催しました。自分にとっての「働く」について、舞台に登壇して思い思いに発表をしてもらい、頑張っている人、いい仕事をしている人を全社に周知させることを狙ったイベントで、大いに盛り上がりました。ただし、私の真の意図は、会社が何を提供できるかではなく、社員自身が会社のために何ができるかを考え、挑戦し、成長していく風土を醸成することにあります。そういう人材を育てることが企業価値を高めるドライバーになると考えているからです。

こうした取り組みを続けている中で、女性活躍推進の成果が明確になってきたと感じています。一般職から管理職への昇格希望者を募集したところ、応募者の女性比率が大幅に上昇したうえ、合格者においては40%を女性が占めるという結果になりました。当然ながら、管理者登用において性別における忖度は一切していません。先日も新任課長研修に顔を出しましたが、明らかに女性社員の目の輝きが変わっているのを感じ、素晴らしい変化だと思いました。
経営戦略と融合した人材戦略 [1253KB]


サクセッションプランにも着手

img_05.jpgガバナンスについても抜本的に変えていきます。企業が持続的に成長していくためには、取締役会には正しい緊張感があり、仮に権力を振りかざし会社を私物化する経営者が現れたら、排除される仕組みになっていなければなりません。そこで、まずは2025年度から社内取締役と社外取締役を同数にしました。また、取締役会の実効性を高めるため、今のイトーキに必要なスキルベースで社外取締役のメンバーも見直しを行いました。コンプライアンスを徹底するために元警視庁副総監の田中俊恵氏を迎えたことに加えて、三井住友フィナンシャルグループで要職に就かれていた川嵜靖之氏を招聘しました。川嵜氏には資本コストと株価を意識した経営のドライバーになっていただくことを期待しています。

さらに、社長就任4年目に入り、後継者の育成を考える時ではないかと思い、執行役員一歩手前の40代の管理職層から16名を選出し、「次世代経営者アカデミー」を開設しました。2025年度はサクセッションプランにも着手し、いきあたりばったりにならないよう、経営人材のパイプラインをしっかり築いていきます。
経営戦略と融合した人材戦略 [1078KB]

2025年度の重点課題は
デジタル・デザイン・グループ・コンプライアンス

ここで2025年度の重点課題をまとめます。一言でいうと「デジタル・デザイン・グループ・コンプライアンス」です。1つ目の「デジタル」は、「Office3.0」の領域で成果を上げることと、6月に基幹システムをクラウド化しましたのでオペレーショナル・エクセレンスの追求に取り掛かります。2つ目の「デザイン」は、「デザインのイトーキ」と言われる取り組みを強化します。3つ目の「グループ」は、本体で実践した成功モデルをグループ会社に展開し、連結での収益力を高めます。特に、ダルトンやイトーキマーケットスペースなど連結業績に一定の影響のある会社の変革は、スピード感をもってやり遂げ、事業ポートフォリオを強化します。4つ目の「コンプライアンス」は冒頭でお伝えしたとおりです。

社員エンゲージメントの先に目指すゴールがある

最後に、今後の抱負を語らせていただきます。『明日の「働く」を、デザインする。』というミッションを、すべての社員が理解し、体現しているという状態にすることが、私に課された究極的なテーマであると認識しています。この点については、エンゲージメントスコアの会社に対する「誇り」だけでなく、会社への魅力、仕事へのやりがい、未来への希望、すべての項目が劇的に上がっていることからも、順調に進んでいると認識しています。引き続き社員エンゲージメントを最大限に高めるために、変革の流れを止めないように手綱を締め、高みを目指していきます。
経営戦略と融合した人材戦略 [1084KB]

代表取締役社長

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