
「古いオフィスなので改善が必要だが、どこをどう改善すればよいかわからない…」
「よく使われる場所とそうでない場所に差がある。もっとオフィスの座席を効率よく運用したい」
こうした悩みを抱える企業は少なくありません。
デジタル技術の発展により、近年ではデータを活用した効率的なオフィス改善が可能になっていることをご存知でしょうか。
オフィスにデジタル技術を取り入れる「オフィスDX」を進めれば、従業員の動きや空間の使われ方などオフィス環境でデータを取得できるようになります。これらは大変有益なデータであり、オフィス改善に活かすことができるのです。
本コラムでは、デジタル技術を活用したオフィス環境の改革(オフィスDX)の概要や導入するメリット、オフィスのデータを活用する具体的な施策について詳しく解説します。
【こちらもおすすめ】
オフィスDXとは
オフィスDXとは、デジタル技術を活用してオフィス環境や働き方を見直し、業務をよりスムーズにする取り組みです。DX(デジタルトランスフォーメーション)について、経済産業省の「DX推進指標」では次のように定義しています。
【デジタルトランスフォーメーション(DX)の定義】
企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること
オフィスDXは、この考え方をオフィス環境に応用したものです。
デジタルツールを導入して業務効率を上げたり、オフィスの使われ方や従業員の状態をデータで取得・分析することで、効率的で快適なオフィス環境の実現を目指します。
ー
参考:「DX推進指標」(経済産業省)
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/dgs5/pdf/004_s04_00.pdf
オフィスDXの具体例

「デジタルツールの活用」と言っても、一般的にはどのようなものが導入されているのでしょうか。まずはオフィスDXの具体例を見ていきましょう。
会議室予約システムの導入
テレワークの普及やWeb会議の定着といった働き方の変化に伴い、会議室の効率的な運用に課題を抱える企業が増えています。
そこで注目されているのが、会議室予約システムです。このシステムを導入すれば、会議室の予約ができるとともに空き状況が一目でわかり、利用状況をリアルタイムで把握できるようになります。
さらに、予約データを分析することで、「本当に会議室が不足しているのか」「どの時間帯に需要が集中しているのか」といった実態を把握でき、客観的なデータに基づいた運用・改善が可能になります。
【こちらもおすすめ】
ペーパーレス化の推進
ペーパーレス化は、企業の業務プロセス全体を見直す重要な取り組みです。しかし、多くの企業がその必要性を感じながらも、なかなか一歩を踏み出せないでいるケースも少なくありません。
紙の書類をデジタル化するには、クラウドストレージサービスの導入や電子文書管理システムの活用が必須です。資料をデジタル化すれば共有時の印刷が不要になり、従業員同士の連携もスムーズになります。いつでも手軽にデジタルの資料を確認できるタブレット端末を支給するのも、ペーパーレス化を推進する1つの手です。
また、電子契約システムを導入することで、契約書の作成から締結までをオンラインで完結できるようになります。管理もデジタル化できるためオフィスで紙を管理する必要がなくなり、セキュリティが向上する点も大きなメリットです。
【こちらもおすすめ】
在席管理システムの導入
IoTセンサーを活用した在席管理システムも、近年急速に普及しています。このシステムは、従業員の所在や席の利用状況をリアルタイムで把握し、誰がオフィスのどこにいるかをすぐに把握することが可能です。また、どのスペースや席が使われやすいか・使われにくいかを日々記録します。
「フリーアドレス化したけれど、うまく運用できていない」といった課題を抱えている企業の場合、データに基づいた改善が可能になるためとくに効果的です。蓄積したデータを分析すれば、「特定の座席ばかりが使われている」「交流スペースが活用されていない」といった課題が見えてきます。
これにより、座席配置やスペースの変更など、具体的な改善策を講じることができます。
受付業務の自動化
従来の有人受付では、来訪したお客様の待ち時間が長くなりがちだったり、人的ミスが起きやすかったりといった問題がありました。また、受付担当者への業務集中や、担当者不在時の対応の難しさも課題でした。
こうした問題も、デジタル技術を活用して自動化することで解決できます。さらに、来訪者情報を記録することで以前の来訪履歴を閲覧したり、来客に関するデータを集計したりすることができるようになります。
たとえばショールームの機能を持っているオフィスなら、来訪者の傾向を見たり、来訪者を増やす施策を考える根拠としても活用できるでしょう。
オフィスDXに取り組むメリット

オフィスDXに取り組むことで、企業には多くのメリットがあります。
独立行政法人 中小企業基盤整備機構が2024年に実施した調査では、DX化に取り組んだ企業の半数以上が具体的な成果を実感しています。「業務の自動化、効率化」で56.3%、「コストの削減、生産性向上」で55.0%の企業が成果を実感しているという高い数値を示しました。
企業のデジタル化への関心は年々高まっており、とくに「データに基づく意思決定」の重要性が広く認識されるようになっています。ここでは、オフィスDXによって期待できる具体的な効果を見ていきましょう。
ー
参考:「中小企業の DX 推進に関する調査(2024年)」(独立行政法人 中小企業基盤整備機構)
https://www.smrj.go.jp/research_case/questionnaire/fbrion0000002pjw-att/202412_DX_report.pdf
業務効率化
オフィスDXは、企業の生産性向上に大きく貢献します。デジタル技術を活用してこれまで手作業で行っていた定型業務を自動化し、業務のスピードを大幅に向上させることができるからです。
たとえば、経理や人事などのバックオフィス業務をデジタル化すれば、請求書処理・給与計算・経費精算・入退館管理などの日常業務がスムーズに進みます。これによって生まれた時間を、より創造的な業務や顧客対応に活用することができます。
コスト削減
オフィスDXは、様々な面でコスト削減につながります。たとえば、紙文書のデジタル化により、用紙代や印刷費などの直接経費だけでなく、保管スペースも節約できます。この空いたスペースを有効活用することで、オフィス賃料の見直しも可能になるかもしれません。
電子契約を導入すれば、印紙税や送料の削減、事務作業の軽減に役立ちます。さらに、受付業務を自動化することで、人件費の最適化も図れるでしょう。
デジタルツールの導入に初期費用はかかってしまいますが、長期的に見れば大きなコストの削減につながるケースが多いのです。
データドリブン経営への転換
オフィスDXの重要なポイントは、「データドリブン経営」の実現にあります。データドリブン経営とは、様々なデータを活用し、客観的な根拠に基づき判断を行うという経営手法です。
「こうしたほうがよさそうだ」という直感的な判断ではなく、オフィスの稼働率や従業員の行動パターンなどの実測データに基づいた経営判断へと転換することで、より精度の高い意思決定が可能になります。
データドリブン経営のおもなメリットとして、
- 意思決定の迅速化と精度向上
- ビジネス変化への素早い対応
- 自社の強みや課題を発見できること
などが挙げられます。
この経営革新を実現するには、まず組織の目標を明確にし、それに合わせて必要なデータ収集・分析の仕組みづくりが求められます。
オフィスDXでデータを使用したオフィスの改善
オフィスのDX化によって得られたデータを使用すれば、精度高くオフィス空間の改善を行うこともできます。続いて、オフィス環境から得られる多様なデータの種類と具体的な活用事例、その効果について見ていきましょう。
オフィスで計測できるデータの例
オフィスでは、スペースの使い方や会議室の利用状況など、様々なデータを収集できます。これらを活用することで、効果的なオフィス改善が可能になります。
オフィスで収集できるおもなデータとその活用方法は以下の通りです。
スペースの使用状況や位置データ

従業員の所在や席・スペースの利用頻度を日々蓄積します。
フリーアドレスが狙い通りに機能しているか?といった座席の運用状況や、利用されにくいエリアの特定、スペース配置の改善に役立ちます。在席管理システムによっては詳細に取得・分析できるものもあるので、導入前に確認することがおすすめです。
会議室の予約・利用状況のデータ

会議室の予約状況と実際の利用状況を記録します。
すでに予約システムを導入しているというオフィスでは、日々蓄積されているデータです。会議室不足の実態把握や時間帯別の需要分析、運用ルールの最適化につなげられます。
従業員のサーベイデータ

従業員へのアンケート調査による個人・組織のコンディション評価を行います。
今も定期的なストレスチェックを実施していたり、エンゲージメント調査の結果をデータとして集積しているという企業も多いかもしれません。このデータは、従業員が本来持つ能力をどの程度発揮できているのかを可視化したり、組織運営の改善、公的データとの比較分析などに活用できます。
また、会社が独自に保有している人事評価や労働時間などのデータと掛け合わせれば、オフィスで働く従業員の状態を詳細まで分析することも可能です。
オフィスのレイアウトデータ

オフィス全体のレイアウトが書かれた図面などのデータは、ほかのデータと掛け合わせることで有用性が飛躍的に上がります。
たとえば「高いパフォーマンスを発揮する従業員はこのエリアをよく使用している」といった状況が浮き彫りになり、具体的な改善提案や改善ポイントの視覚化が可能になります。
◇ ◇ ◇
イトーキでは、従業員一人ひとりの状態を「見える化」するクラウド型サーベイツール「Performance
Trail(パフォーマンストレイル)」を提供しています。
従業員の状態を幅広く把握できるだけでなく、業務、働き方、ライフスタイルまでを課題として落とし込み、「組織の状態」「心の状態」「身体の状態」を見える化することで、具体的な改善ポイントを提示します。
従来の健康診断やストレスチェックでは見えなかった「パフォーマンスの状態」を把握できることが特徴で、オフィスの快適性やコミュニケーションに関する状態も見える化できるため、オフィスづくりに活用することも可能です。
【こちらもおすすめ】
データを活用するとできること
オフィスのデータを活用することによって、具体的に次のような効果が得られます。
何を変えるべきかが明確になる
データを元に分析することで、どこを改善すれば業務効率が向上し、快適なオフィス環境が実現できるのかが明確になります。
改善の根拠を示すことができる
オフィスの特定のスペースが必要な理由や、なぜその改善を重点的に行うのかについて、会社や従業員、社外に対して根拠をもって説明できるようになります。「なんとなく」ではなく、データという客観的な裏付けがあることで、理解と協力も得やすくなるでしょう。
成果を数値で確認できる
新しく整備したオフィス環境が実際に従業員のパフォーマンスやエンゲージメント向上につながっているのかを、定量的に測定できます。改善前後の変化を数値で把握することで、投資対効果を明確に評価できるようになります。
人的資本への投資を可視化できる
採用率や退職リスク、仕事に対する意欲アップに対して適切な投資を行っていることを、正しく社内外に説明できます。近年重要性が高まっている人的資本情報の開示の際にも、具体的なデータが役立ちます。
【こちらもおすすめ】
◇ ◇ ◇
オフィスDXとそこから得られるデータを活用したオフィス改善は、従業員にとって本当に働きやすいオフィスづくりにつながるだけでなく、今後ますます注目が集まるデータドリブン経営の実現においても重要な役割を担うのです。
オフィスDXとデータの活用はイトーキにおまかせください

イトーキは、「会議室予約システム」「在席管理システム」「従業員の状態を見える化するサーベイツール」などのオフィスDXに役立つさまざまなツールの提供をはじめ、オフィスで取得できるデータを活用し、企業のワークスタイルに最適な環境づくりをサポートするオフィスデータ分析コンサルティングを行っています。
オフィスデータ分析コンサルティングは、オフィスの座席や場所の利用状況、従業員のモチベーションや健康状況などをデータとして収集し解析することで、オフィスや働き方をより「ありたい姿」に導くコンサルサービスです。
データ収集から実行までを一貫してサポートし、複数の種類のオフィスデータを掛け合わせて専門家チームが分析。オフィス内の「よく使われているエリア」「あまり使われていないエリア」などを可視化することで、データに基づいた効果的な改善策を導き出します。
「オフィスをもっとDX化したい」「データに基づいて効率的にオフィス改善を進めたい」など、オフィスDXに関するお悩みがありましたら、ぜひお気軽にご相談ください。