
現代のオフィスでは、OA機器の増加により配線が複雑化し、見た目の悪化や安全面が問題となっています。この課題の解決策として近年のオフィスに導入されているのが、配線を床下に収納し、美しく安全なオフィス環境を実現する「OAフロア」という技術です。
本コラムでは、OAフロアの仕組み・構造からオフィスに導入するメリット、選び方のポイント、注意点までわかりやすく解説します。
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OAフロアとは
OAフロアとは、オフィスにおいて床下にケーブルやコンセントを収納できるスペースを設けた、二重構造の床です。
はじめに、OAフロアの基本構造について見ていきましょう。
OAフロアの仕組みと構造
OAフロアの構造は非常にシンプルです。元の床の上にパネルを敷き詰め、床を二重構造にします。その元の床とパネルの間に生まれる空洞部分に、LANケーブルや電源コード、コンセントなどOA機器の配線を収納するという仕組みです。
OAフロアの種類とそれぞれの特徴、そして用いられる材質や選び方については、後の章でくわしく解説します。
OAフロアとフリーアクセスフロアの違い
フリーアクセスフロアは、床面と下地構造(躯体)の間に配線などの収納スペースを設置するための二重床システムを指します。オフィス環境に導入される場合に「OAフロア」と呼ばれることが多く、基本的にこの2つは同じものを指します。
近年、フリーアクセスフロアは一般的なオフィス以外にも、コンピューター室やデータセンター、工場のクリーンルーム、医療施設や官公庁施設など、多くの場所に導入されています。
OAフロアを導入する3つのメリット

現代のオフィスでは、デジタル化の進展とともにOAフロアの重要性が高まっています。利便性向上はもちろん、多様な働き方への対応や機能的なオフィス環境づくりに欠かせない存在です。近年のテナントビルにおいては、すでに施工されているというケースも多くなっています。
ここでは、OAフロアが注目される理由と、導入で得られる3つのメリットを解説します。
オフィスの美観向上
OAフロア導入の最もわかりやすいメリットは、オフィスの見た目が改善されることです。
配線をすべて床下に収納できるため、オフィス空間がすっきりと整理された印象になります。クライアントや求職者が訪問した際の印象がアップし、企業イメージ向上が期待できるでしょう。
もちろん、オフィスで働く社員にとっても、仕事中に視界がすっきりすることで快適性の実感につながります。
さらに、OAフロアを導入すると床面の凹凸がなくなるため、日々のオフィス清掃がしやすくなるのもメリットの一つです。
安全性・働きやすさの向上
従来の床上配線では、
- 歩行中に配線につまずいて怪我をする
- 配線に足を引っかけて機器が落下し、重要なデータが損失する
- 機器自体が破損する
といったリスクがありました。
OAフロアの導入によって、こうしたリスクを回避することができます。とくに人の往来が多いオフィスや頻繁に席を移動するような職場では、OAフロアは従業員の働きやすさに直結するでしょう。
レイアウト変更の柔軟性アップ
企業として、現代社会の多様な働き方へ柔軟に対応していくには、人事異動や組織改編、ハイブリッドワークの導入などでオフィスレイアウトを変更する必要があります。
床上配線だとデスクやOA機器の配置が配線の位置に制約されることが多く、配線工事を必要とする場合には時間とコストがかかってしまいます。
しかし、レイアウト変更も考慮したOAフロアを導入すれば柔軟性が上がり、業務特性や組織編成に合ったオフィスづくりが可能になるでしょう。
OAフロアのおもな種類と特徴
一般的なOAフロアの種類として、次の2タイプがあります。
置敷タイプ

置敷タイプは、支柱が一体化したフロアパネルを床面に直接敷き詰めていく方式です。施工工程が少なく、比較的短期間で設置できる点がメリットです。置敷タイプは配線の収納方法により、さらに2種類に分類されます。
- 置敷式簡易OAフロア:床とパネルの間にできる空間に配線を収納する方式
- 置敷式溝配線OAフロア:パネル内の溝に配線を通し、上からカバーをかぶせる形で収納する方式
支柱タイプ(床高調整式)

支柱タイプは高さ調整ができる支柱の上にパネルを設置していく方式で、レベル調整式のタイプになります。支柱のサイズが豊富で、床面の高さを自由に調整することが可能です。
置敷タイプよりも収納スペースが大きくとれるため、大規模オフィスやサーバールームなどで多く採用されています。
OAフロアのおもな材質と特徴
OAフロアで用いられる材質は、樹脂製・コンクリート製・金属製が一般的です。それぞれの特徴は以下の通りです。
材質 | メリット | デメリット |
樹脂製 |
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コンクリート製 |
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金属(スチール)製 |
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金属(アルミ)製 |
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OAフロア選びのポイント

OAフロアを導入する際は、オフィスの状況や用途に合ったタイプを選択することが重要です。ここでは、選定時に考慮すべき主要なポイントを4つの観点から解説します。
オフィス規模に合わせて選ぶ
小規模なオフィスでは配線量が比較的少ないため、低床タイプのOAフロアで対応できるケースが多いでしょう。一方、中規模から大規模なオフィスでは、必要量の配線を収納できるよう、ある程度高さのあるOAフロアを選ぶようにしましょう。
将来的な組織拡大や機器増設の可能性も考慮すると、現在の必要容量よりもやや余裕のある仕様を選択するのがおすすめです。
耐荷重性能に合わせて選ぶ
OAフロアの耐荷重性能は、設置する什器や機器の重量によって選ぶ必要があります。
一般的なオフィス家具や複合機程度であれば標準的な耐荷重で十分ですが、大型の書庫や書棚、サーバー機器などの重量物を設置する場合は注意が必要です。
サーバールームやデータセンターなど、重量のある電子機器を多数設置する環境では、とくに耐荷重性能を重視すべきでしょう。
材質で選ぶ
前章の表で示した通り、OAフロアは材質によってメリットとデメリットが異なります。導入前に、オフィスの使用環境や優先したい性能を明確にしておきましょう。
たとえば、来客の多いエントランスや会議室などでは、自然な歩行感が得られる材質が最適です。一方、バックオフィスや倉庫など機能性を重視する場所では、歩行感よりもコストパフォーマンスや施工性を優先することも可能です。
静寂性が求められるオフィスでは、空洞音の少ない材質を選び、音が響きやすい環境では防音性に優れた材質を検討しましょう
さらに、将来的なメンテナンス性も考慮する必要があります。頻繁に配線変更が予想される環境では、パネルの取り外しが容易で繰り返しの使用に耐える材質を選ぶことで、長期的な運用コストを抑制できます。
コストとスケジュールで選ぶ
置敷タイプは接着剤を使用せず、パネルを並べるだけの簡単な施工で済むため、比較的短期間かつ低コストで導入できます。また、賃貸オフィスなど建物に大きな改修を加えられない環境では、置敷タイプが適しているケースが多いでしょう。
支柱タイプは支柱の高さ調整や接着作業が必要なこともあり、比較的施工期間が長く費用も高額になります。ただし、配線容量や耐荷重性能は置敷タイプより優れているため、長期的な運用を考慮すると投資効果が高い場合もあります。
導入スケジュールや予算の制約、オフィスの使用条件を総合的に検討し、最適なタイプを選択することが重要です。
OAフロア導入時の注意点
OAフロアの導入に際して、事前準備の不足や見落としがあると、後々大きなトラブルにつながる可能性があります。ここでは、導入前にチェックすべきポイントを3つご紹介します。
施工前の環境確認
賃貸オフィスでは、ビル管理会社が定める工事ルールを事前によく確認しておきましょう。接着剤の使用制限や施工の時間指定が設けられている賃貸契約も少なくありません。
また、OAフロアを高くすると天井が低くなり、圧迫感を与えてしまう場合があるため、適切な高さのOAフロアを選ぶことが重要です。天井が低いことが多い古い物件は、とくに注意しましょう。
オフィスのリニューアル・改修でOAフロアを導入する場合、出入り口の開閉に支障がないよう、スロープを設置するなどの対策も必要です。
品質保証の確認
OAフロアは長期間使用するものなので、安全性と信頼性が確保された製品を選ぶことが重要です。
製品選定の際は、「JAFA性能評価認証制度」や「公共建築協会品質性能評価」といった認証制度を参考にしましょう。
これらの認証を取得した製品は、第三者機関による客観的な審査を経ており、長期使用における安全性と品質が保証されているため、製品選定時の重要な判断基準となります。
運用面での配慮
OAフロア施工後は定期的にメンテナンスを行い、パネルのガタつきや損傷がないかをチェックする必要があります。
日々の使用では、
- OAフロアの一か所に過度な重量をかけない(とくに耐荷重性能が低い材質の場合)
- 湿気がたまりにくいように換気を行う
- 床掃除の際や水回りなどでは水漏れに注意する
といった点に配慮することで、より長く安全に使用できます。
OAフロアの導入はイトーキにお任せください

今回は、配線を収納するための二重床「OAフロア」の機能と重要性、選び方のポイントをご紹介しました。
OAフロアを導入すれば配線がすっきりと床下に収まり、オフィスの美観向上により企業と社員双方にメリットをもたらします。
「配線がごちゃごちゃして見た目が悪い…」
「レイアウト変更をしたくても、配線の位置に制限されて思うようにいかない」
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