
目次
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BCP対策とは
BCP対策の基本
BCP対策が必要となるケース -
BCPと防災・BCM・IMP・BRPの違い
BCPと防災の違い
BCPとBCMの違い
IMPとBRPについて -
BCP対策に取り組む重要性
従業員の安全と雇用を守るため
事業を存続し、市場での優位性を確保するため -
BCP対策における5つの視点
1. 人的リソースの確保
2. 資金面の備え
3. 緊急時の組織体制づくり
4. 情報管理とバックアップ
5. オフィス環境の安全対策 -
BCP対策を意識したオフィスビル選びのポイント
耐震性のチェック
ビル管理会社の防災・セキュリティ対策
非常時におけるライフライン(電気・水)の確保
ビルの立地と周辺の環境 -
BCP対策を意識したオフィス環境づくりの具体例
家具・機器の転倒防止対策とガラス飛散対策
火災対策
安全な避難経路の確保
緊急時備蓄品の管理 - オフィスのBCP対策はイトーキにおまかせください
もし明日、日本に大地震が発生しても、企業は可能な限り事業を存続し、従業員の安全と雇用を守らなくてはいけません。災害はいつ起こるかわからないため、事業継続計画、いわゆる「BCP対策」は今すぐ始めることが重要です。
本コラムでは、BCP対策の基本や重要ポイント、具体的なオフィスビル選びやオフィス環境づくりの注意点まで、企業が取り組むべき対策を具体例とともにご紹介します。
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BCP対策とは
BCP(Business Continuity Plan)とは、自然災害や火災、サイバー攻撃といった予期せぬ緊急事態が発生した際に、企業が事業への被害を最小限に抑えながら、重要な業務を継続または迅速に復旧させるための計画のことです。日本語では「事業継続計画」とも呼ばれます。
不測の事態が起きた場合にも事業を継続するための対策として、BCP対策が重要視されているのです。
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参考:経済産業省中小企業庁 中小企業BCP策定運用指針
https://www.chusho.meti.go.jp/bcp/contents/level_c/bcpgl_01_1.html
BCP対策の基本
BCP対策の基本として、次の5つの要素が挙げられます。
- 継続すべき中核事業を明確にすること
- 各業務の目標復旧時間を設定しておくこと
- 緊急時に提供できるサービス水準について顧客に合意を取っておくこと
- 会社や設備が使用できなくなった際の代替手段を複数準備しておくこと
- 緊急時の事業継続について従業員の理解を深め共有しておくこと
「何を守るべきか」「どの水準で守るべきか」を明確にすることが、効果的なBCP対策の出発点となります。
BCP対策が必要となるケース
おもな災害リスクとして以下のようなものが挙げられます。
- 自然災害(地震、台風や豪雨など)
- 感染症(新型コロナウイルスのようなパンデミック感染など)
- その他(サイバー攻撃やシステム障害、テロなど)
日本において地震や豪雨など自然災害の発生頻度は決して低いものではなく、これまでも企業活動に大きな影響を与えてきました。こうした緊急事態に見舞われると、企業の操業率は大幅に低下してしまいます。
災害による事業規模の縮小、最悪の場合は廃業に追い込まれる危険性も考慮し、すべての企業はBCP対策に取り組む必要があるのです。
BCPと防災・BCM・IMP・BRPの違い

BCP対策と類似の概念に防災・BCM・IMP・BRPなどがあります。それぞれの違いを確認しておきましょう。
BCPと防災の違い
これまで企業が取り組んできた防災対策は、従業員の安全や建物などの資産を守ることがおもな目的で、拠点や組織がそれぞれ個別で対策する形が一般的でした。
対して、BCPは「事業を止めない」ことを最優先に考えた戦略といえます。具体的には、優先すべき業務を特定していつまでに復旧させるかの目標を設定し、事業を回し続けるための準備を行うのです。
つまり、防災が「被害を防ぐこと」に重点を置くのに対し、BCPは「事業を継続すること」を重視している点に大きな違いがあります。
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BCPとBCMの違い
BCP(事業継続計画)とBCM(Business Continuity Management:事業継続マネジメント)は、どちらも緊急事態でビジネスを止めないための仕組みですが、それぞれ果たす役割が異なります。
BCPが「計画」であるのに対し、BCMはその計画を実際に運用するための「管理システム」です。BCPで策定した対策が確実に機能するように、継続的に運用・改善していく考え方を指します。
BCMは独立した計画というよりも、BCPの運用面を担う部分として位置づけられるのです。
IMPとBRPについて
BCPを理解する上で重要な概念に、IMP(Incident Management Plan:初動対応計画)とBRP(Business Recovery Plan:事業復旧計画)があります。
IMPは、緊急事態が発生した直後の初動対応に特化した計画です。緊急時に、迅速かつ適切に対応するための手順を定めます。
一方、BRPは、被災前の事業水準まで回復させるための計画です。事業復旧計画や事業回復計画とも呼ばれ、長期的な視点で事業を元の状態に戻すことを目指します。
これらの関係を整理すると、BCPは時系列に沿って次のような3段階で構成されます。
- IMP(初動対応計画):緊急事態発生直後の初動対応
- 狭義のBCP(事業継続計画):代替手段を活用した事業の維持・継続
- BRP(事業復旧計画):元の事業水準への回復
ただし、IMPとBRPは、広義ではBCPの一部として位置づけられることもあります。
BCP対策に取り組む重要性

続いて、企業にとってBCP対策が重要な理由についてくわしく見ていきましょう。
従業員の安全と雇用を守るため
BCP対策で最も大切なのは、企業の社会的責任として従業員の命を守ることです。従業員の安全が確保されなければ、事業を継続することも復旧に取り組むこともできません。
事前に緊急時の対応手順を決めて実際の訓練を重ねておくと、いざという時に冷静で適切な判断ができるようになります。迅速な初動対応によって、事業の縮小や人員削減といった最悪の事態を避けることにつながります。
BCP対策は、従業員の生活を守るという点においても非常に重要な取り組みです。
事業を存続し、市場での優位性を確保するため
突然の緊急事態によって、準備不足の企業は深刻な打撃を受けるでしょう。とくに中小企業は、十分な対策を講じていなければ存続の危機に陥ってしまうことも。
しかし、十分なBCP対策を立てていれば、緊急時でも重要な業務だけは何とか維持し、復旧に向けて進んでいけるかもしれません。最近では、取引相手や融資先企業を選ぶ際に、BCP対策がしっかりと行われているかを判断材料にする企業も増えています。
BCP対策における5つの視点
災害時のBCP対策では、以下の5つの視点から具体的に対策を講じていく必要があります。
それぞれのポイントをくわしく見ていきましょう。
1. 人的リソースの確保
設備が復旧しても、従業員が働くことができなければ事業の早期再開は実現できません。従業員の被災状況をすぐに把握し、少ない人数でも重要な業務を続けられる仕組みを作っておくことが大切です。
事前に検討すべき項目として、
- 従業員とその家族の安全確保に必要な対策
- 緊急時の行動手順と連絡体制の整備
- 欠勤者が出た場合の対応
などが挙げられます。
2. 資金面の備え
事業が中断した場合の損失額を事前に算出し、その期間中の運転資金を確保しておけば、緊急時でも安心して対応できます。保険による補償制度や公的な融資制度についても、あらかじめ調べておくことが大切です。
3. 緊急時の組織体制づくり
災害発生直後は、企業全体が混乱に陥る可能性があります。このような状況下では経営層が復旧の優先順位を決め、迅速に判断し、リーダーシップを発揮しなくてはいけません。
さらに、トップが被災などで不在になった場合を想定し、誰が代わりに判断や指示を行うかも事前に決めておくことが重要です。
4. 情報管理とバックアップ
被災で重要な業務データを消失してしまうと、事業継続の難易度は格段に上がります。広い範囲の被害も想定して、離れた場所にデータを保存しておくことが大切です。
データやシステムの対策は後回しになりがちですが、今や会社経営においてITシステムは欠かせない存在です。災害時の具体的な対策について、経営層も含め、日頃から検討しておく必要があります。
5. オフィス環境の安全対策
企業にとって、施設や設備は事業継続の土台となるものです。オフィスの物理的な安全性を確保し、緊急時でも業務を継続できるように環境を整えておかなくてはいけません。
オフィスの具体的な安全対策については、後章でくわしく解説します。
BCP対策を意識したオフィスビル選びのポイント

BCP対策において、オフィスビルの選定は非常に重要な要素です。建物の基本性能や設備が不十分だと、後からどれだけ対策を追加しても根本的な解決にはならないためです。
ここでは、オフィスビルを選定する際に押さえておきたいポイントを4つご紹介します。
耐震性のチェック
まずは、建物が建てられた時期と耐震基準を満たしているかをチェックすることが大切です。
1981年6月以降に建設された建物は新耐震基準をクリアしており、さらに2000年以降の建物はより厳しい基準(2000年基準)に適合しています。
できれば2000年基準を満たすオフィスビルを選ぶことで、より高い安全性を確保できるでしょう。
ビル管理会社の防災・セキュリティ対策
ビルを管理している会社がどのような防災・セキュリティ体制を取っているかは、入居企業のBCP対策の土台となります。
事前に、次のような点をしっかりと確認しておきましょう。
- 常時監視体制が整っているか
- 緊急事態発生時の避難誘導体制が整備されているか
- 防火管理者が適切に配置されているか、また定期的に避難訓練・消火設備点検が行われているか
非常時におけるライフライン(電気・水)の確保
電気と水の供給体制の確認も重要ポイントです。
停電が起きると業務が完全にストップしてしまうため、複数回線の受電方式(複数の電力供給経路を持つ仕組み)やコージェネレーションシステム(ガスで発電し熱も活用する自家発電設備)を備えたオフィスビルが理想的です。
水に関しては、頑丈な貯水タンクや緊急時の飲料水確保システムがあるかを確認しましょう。大地震では水道の復旧に数日から数か月かかることもあるため、これらの設備は事業継続の生命線となります。
ビルの立地と周辺の環境
オフィスビルを選ぶ際は、その立地環境や周辺環境もよく調べておく必要があります。
まず、地域の地盤の強さやハザードマップを確認しましょう。地盤が不安定な場所は地震の揺れが大きくなりがちなので、建物にも影響が出やすいため避けた方が無難です。
周辺環境は、たとえば近くに海や川がある場合は津波や洪水の危険性があります。建物が密集している地域では、隣接するビルで火災が発生した際の延焼リスクも無視できません。
できるだけ自然災害の影響を受けにくい立地を選ぶことが理想ですが、都市部ではすべてのリスクを完全に避けることは難しいでしょう。そのため、想定される災害に対し、しっかりとした対策を講じているビルを選ぶことが現実的な解決策となります。
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BCP対策を意識したオフィス環境づくりの具体例

BCP対策は、ビル選びに加え、オフィス環境の整備も重要になります。最後に、オフィスでできる具体的な対策についてご紹介します。
家具・機器の転倒防止対策とガラス飛散対策
地震時のケガの原因として多いのが、家具や機器の転倒・落下です。重量のあるキャビネットやコピー機などが倒れると、従業員が下敷きになる危険性があります。また、サーバーなどの重要機器が転倒すると、データ消失という深刻な事態にも陥ってしまいます。
日本では地震が頻発するため、オフィス内のすべての家具・機器に転倒防止対策を施しておくことが推奨されます。最も効果的なのは床や壁への固定ですが、賃貸オフィスで穴あけができない場合は、粘着マットや伸縮棒などの転倒防止器具を活用するとよいでしょう。
さらに、オフィスの窓ガラスには飛散防止フィルムを貼っておくことで、ガラス片による負傷を防げます。
火災対策
火災対策では、早期発見が被害軽減の鍵となります。
火災報知器の設置はもちろん、地震時の電気火災を防ぐため、揺れを感知して自動的に電源を遮断する感震ブレーカーの導入も効果的です。
安全な避難経路の確保
緊急時に安全に避難できるよう、通路を確保しておきましょう。荷物や書類が通路に置かれていると、地震で散乱した際に避難経路が塞がれてしまいます。
オフィスを長期間使用していると物が増えがちですが、全従業員が避難ルートを常に意識し、通路を清潔に保つことが大切です。
緊急時備蓄品の管理
大規模災害では帰宅が困難になる従業員も想定されるため、従業員一人当たり3日分の水と食料を準備しておきましょう。備蓄品は、賞味期限の管理が重要です。定期的にチェックし、計画的に入れ替えを行いましょう。
食料・水以外にも、懐中電灯、携帯ガスコンロ、防寒具などの備品の準備も忘れずに。とくに冬季は暖房停止による体調不良を防ぐため、毛布やカイロなどの防寒用品も必須です。
また、大容量のポータブルバッテリーは非常時に貴重な電源として活躍します。単なる備蓄品というだけでなく、普段はオフィスのどこでも給電できるバッテリーとして使用できるので、活用の幅が広い点もポイントです。
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オフィスのBCP対策はイトーキにおまかせください

BCP対策は一度取り組んで終わりではなく、定期的に見直しと改善を重ねていくことが大切です。
イトーキでは、オフィス選びから社内環境の整備、防災用品の配置まで、BCP対策を意識したオフィスづくりをトータルでサポートしています。長年培ってきた専門知識と実績をもとに、お客さまの業種や規模に合わせた最適なソリューションをご提供いたします。
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オフィスのBCP対策でお悩みの際は、ぜひイトーキまでお気軽にご相談ください。