2025年12月02日
“工場用”から“オフィス基準”へ。京都工場の誇りが生んだ、人に寄り添う家具の進化
京都工場で長年、工場用のスチール棚を製造してきたイトーキが、「伝統」と「挑戦」の融合によって“オフィス基準の新しい家具”を手がけました。製造のしやすさよりも「使う人の安心と快適さ」を優先したオフィス家具――それが「common
furniture」です。
今回は、設計・製造・品質保証の各部門でこの製品に携わったメンバーに、開発の裏側と現場のこだわりを聞きました。
設備機器事業本部 設備機器商品統括部 京都製造部 京都設計課
井ノ本 武(設計)
設備機器事業本部 設備機器商品統括部 京都製造部 京都設計課
塩谷 裕司(設計)
設備機器事業本部 設備機器商品統括部 京都製造部 京都製造課
西村 寛明(製造)
品質保証本部 品質保証統括部 設備機器・建材品質保証部 設備機器品質保証課
小野田 浩(品質保証)
設備機器事業本部 設備機器商品統括部 京都製造部 京都製造課
岩崎 雅也(インタビュー)
※所属部署・役職・制度は取材当時のものとなります。現時点の情報と異なる場合があります。
挑戦の連続!工場基準から“オフィス基準”へ
岩崎−−− 「common furniture」ならではの特長や新しさについて教えてください。
井ノ本(設計):「common furniture」は、「使いやすく、優しい」オフィス家具です。京都工場では今まで、工場やバックヤードでの使用を目的とした棚製品を製造していました。今回はその頑丈さはそのままに、オフィス空間に溶け込むカラーリングや、木製天板などの新たな要素を取り入れています。装飾過多ではなく、働く人が自ら場を作り、使い方の可能性を広げられる家具です。
小野田(品質保証):「common furniture」はオフィスで使われることを前提としているため、求められる基準に違いがあります。従来以上に高い品質が求められるため、棚製品としての「強度」とデスクとしての「安全性」の二つを軸に品質確認試験を行いました。
西村(製造):オフィスに置かれることは、それだけ人の手に触れる機会が増えるということです。だから、すべての端面をバリ※取りし、手触りをなめらかにする必要がありました。今まではなかった工程ですが、安全のために、きちんとバリが取れているか指先で確認しながら進めています。
※バリ……金属加工の際、端面に生じる意図しない形の突起のこと
端面をなめらかにするために使用する「バリ取りローラー」にも試行錯誤の軌跡がある。
西村(製造):また、製品の裏側にある補強の長さも10ミリ長い物へ変更しました。僅かに生まれる隙間を無くし、使用者の怪我を防ぐために安全性を高めています。従来は補強を入れ込む作業をロボットで行っていたのですが、「common furniture」では手作業で行っています。
手作業で行う分、手はかかりますが、隙間のない補強を見ると「これならオフィスでも安全に使ってもらえる」と自慢に思いますね。実際に使われる場面を設計の井ノ本さんから細かく説明していただいたおかげで、一つ一つの箇所に愛情を注いで作ることができています。
端面をなめらかにするために使用する「バリ取りローラー」にも試行錯誤の軌跡がある。
塩谷(設計):「common furniture」はスペシャルオーダー(特注)も多い製品です。既存のサイズ以外で注文が来る際は私が対応しています。変更の要望は多種多様なため調整に時間はかかりますが、多くのオフィスで使用いただけると思うと嬉しいですね。
岩崎−−− バックヤードでの使用を目的としていた今までの棚製品とは違い、オフィス基準だからこその挑戦があったんですね!
一緒に成長した「common furniture」が評価された瞬間
岩崎−−− 「common furniture」は今までにない“手のかかる子”という側面もあるかと思いますが、愛情を抱いた瞬間はどんなときですか?
小野田(品質保証):品質確認試験や環境試験を繰り返す中で、どんどん愛着が湧いていきました。不合格が出ると「ここを直せば、もっといい製品になる!」と、改善のために原因を徹底的に追求していくプロセスに、仕事としての面白さも感じていました。機械を通して出る結果だけでは原因がわからないこともあるため、たくさん手で触って改善していく。「common furniture」と自分自身が一緒になって成長していく実感がありました。
井ノ本(設計):私はショールームで「common furniture」が展示された瞬間を忘れられないですね。オフィス基準に合わせて、多くの調整を加えつつも「オフィスに合うのだろうか?」という不安がありました。でも、実際に展示されている姿をみたときは「やるじゃないか!」と。想像以上にオフィスと調和していましたね。今までバックヤードが活躍の舞台だった京都工場の製品にはない新境地を切り開いてくれるだろうな、という予感も抱いていました。
塩谷(設計):私は展示会でお客様から評価いただいた時が一番嬉しかったです。工場で働いているとお客様の喜ぶ姿までイメージがしにくいので、営業担当者から「良かったよ!」と聞けたときは誇らしい気持ちになります。
西村(製造):製品を実際に使ってくださるお客様を感じられると、ますます製品に対する愛着は増しますね。
岩崎−−− 認められることは大きなポイントですよね。誰かの役に立っていることが見えるようになることで、業務への熱の入り方も増しますね!
ここに注目!京都工場だからできる「耐久性の高さ」
岩崎−−− 作り手側だからこそ注目してほしい、「common furniture」の自慢や魅力はありますか?
西村(製造):製造としてバリ取りを隅々まで行った端面に注目してほしいですね。「日常的に触るときの安心感が違う!」と自信を持って言えます。
小野田(品質保証):私は試行錯誤を繰り返した天板です!梅雨どきでも湿気で膨らまないように、また暑い日でも接着が溶けて剥がれないように、何度も環境試験に挑みました。ぜひ注目していただきたいです。
塩谷(設計):私は一箇所ではなく、製品全体に京都工場棚製品の「力強さ」が引き継がれていることが自慢です。また、組み立て時にビスは用いず、ハンマーを使ってはめ込む面白さも知ってほしいです。オフィス基準になっても、京都工場棚製品の“耐久性の高さ”は健在。他にも、イトーキのロゴが刻印されていることもチャームポイントです。
オフィス家具に生まれ変わってもロゴの刻印は輝いている。
井ノ本(設計):実は梱包方法も変え、ダンボール包装の前にビニールで包んでいます。最初から最後まで、現場の愛がこめられた「common furniture」。多くの人に届いてほしいと思っています。
一つ一つ手作業で梱包し、送り出す。
“ひと手間増えた部分”にこそ、職人たちの誇りと製品愛が宿っている「common
furniture」。手間を惜しまず磨き上げた製品だからこそ、魅力的な存在へと進化しています。
その、唯一無二の魅力は、イトーキならではのオフィス家具として新しい価値を生み出しています。
※所属部署・役職・制度は取材当時のものとなります。現時点の情報と異なる場合があります。



