数千ケース以上の検証で実現! 物流自動化「SAS-R」 業界トップクラスのスピードへの挑戦

数千パターン以上の検証で実現!物流自動化「SAS-R」業界トップクラスのスピードへの挑戦

開発・発売から40年以上の歴史を持つイトーキのシャトル式立体自動倉庫システム「システマストリーマー」は、物流センターや工場などの「倉庫」で使われる自動化設備。さらなる高速化・小型化を実現し、「SAS-R」として2020年に発売されました。

開発・製造・ソフトウェア・資材、それぞれの役割担当が一体となり、流通現場のニーズに応えるために挑んだ試作と改善。その裏側にあるこだわりと連携力に迫ります。

渡部 弘毅(開発)

設備機器事業本部 電子機器商品部 商品開発課

渡部 弘毅(開発)

松宮 淳(製造)

設備機器事業本部 電子機器商品部 電子機器製造課

松宮 淳(製造)

上林 紺(ソフトウェア)

設備機器事業本部 電子機器商品部 ソフトウェア設計課

上林 紺(ソフトウェア)

山根 知子(資材)

設備機器事業本部 電子機器商品部 電子機器工務課

山根 知子(資材)

伊藤 俊介

設備機器事業本部 電子機器商品部 ソフトウェア設計課

伊藤 俊介

※所属部署・役職・制度は取材当時のものとなります。現時点の情報と異なる場合があります。

連携力が形に。流通現場のニーズに応える先進技術

伊藤−−−イトーキが開発・販売している「SAS-R」の特長と皆さんの携わったシーンを教えてください。

渡部(開発):SASはもともとイトーキ製品として1985年(昭和60年)からありました。仕分けやピッキング※1、出庫など、物流現場において「人の手」が必要な場面を自動で行う画期的なシステムです。しかし、競合の製品が増え、更なる高処理能力化、コンパクト化に取り組む必要が出てきました。しかし、当時の技術ではクリアしなければならない機構※2 としてのハードルがいくつもあり、製造と共に試作に挑戦し始めました。

  1. ピッキング:出荷指示(オーダー)に基づいて、指定された商品を、指定された数だけ在庫から取り出す作業。
  2. 機構:機械の内部にある「動く仕組み」や「仕掛け」に関わるハードウェアのこと。

松宮(製造):机上だけでは組み立ての際に工具が入らない、組み立てが複雑すぎる箇所などは分からないため、渡部さんとは毎日のように話し合いを行いました。開発からいただいた組立図をもとに試作をつくり、製造上の懸念がある箇所を一覧表にまとめていきます。これはできる、これはできない、ここは実現しにくい、といった形です。
たとえば、作業台も高すぎず低すぎない物に調整し、組み立てる際にさまざまなサイズ感に対応できる広さを確保しました。

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スペースに余裕があり、作業しやすい高さに調整するなど、製造の力をフルで発揮できる環境整備も怠らない。

渡部(開発):小型化がとにかく大変でしたね。部品をなるべくスペースを空けずに詰めていく必要があるのですが、そうすると手が入らず、組み立てが困難になってしまうんです。図面上では問題なくても、手が届かない箇所にビスを留めることはできませんから。そのギリギリのラインを探すために製造の方とは何度もやり取りを行いました。イトーキ製品の中でも指折りのパーツ点数だと思います。

上林(ソフトウェア):昔からあるソフトを熟知したうえでソフトウェアを構築し直す必要があるため、1年近く時間を要しました。30年ほど前に作られたプログラムを今後も使用できるように汎用性のある物へ。水平走行台車(ドーリー)と垂直昇降機(リザーバー)などそれぞれマイコン基板※1 からPLC※2 へ変更しました。そのため、それぞれに担当者がつき、三人がかりでソフトウェアを組んだんです。多くの装置が複雑に協調動作しているため、一つの動作が他の動作にも大きく影響します。パターンとしては何千通りと試しましたね。

  1. マイコン基板:小型のコンピュータを搭載し、機器の動作を制御する電子基板。比較的シンプルな制御に用いられる。
  2. PLC(Programmable Logic Controller):産業機械の制御に特化したコントローラ。高い信頼性と拡張性を持ち、複雑な制御や長時間稼働に適している。

山根(資材):試作の段階から設計や開発から部品リストをいただき、どこで購入するか、いつまでに提供可能かを常に考えていました。開発が完了するまで部品は変更されるため、日々さまざまな協力会社さんと交渉をしていました。

伊藤−−−試作の最初の段階から、部門を横断して連携していたんですね!

こだわりの数々は繰り返した試作の結晶

伊藤−−−部品点数も多く複雑な「SAS-R」ならではのポイントを教えてください。

渡部(開発):垂直昇降機部分(リザーバー)については苦労しましたね。高処理能力化のため、昇降トップ速度※1 を従来機の2倍、昇降加減速度※2 にいたっては3倍にアップする必要がありました。当然機械的な負荷が高くなるので、部品の損傷や昇降機自体の振動が大きくなるといった問題が発生しました。それらを一つ一つ解決し、業界トップクラスのスピードを誇る昇降機を完成させることができました。

  1. 昇降トップ速度:昇降装置が到達可能な最大移動速度
  2. 昇降加減速度:昇降時にどの程度の速さで加速・減速するかを示す値(加速度・減速度)

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目にも止まらぬ速さで上下に垂直移動する昇降機。

松宮(製造):部品点数が多いということは、その分工程も増えるということ。作業も複雑かつ多様な技能が必要になってきます。それらに伴って決まっていく数ミリの誤差も許されない細かい仕様の数々……。しかし、技術に差があると製品を安定して供給しつづけることができません。そのため、製造工程を細かく見直し、工程ごとの役割を整理しました。経験の差にかかわらず対応できる部分を明確にしながら、安定した品質で製造できる体制を整えました。

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細かな調整力が求められる製造工程。決められた値が出るまで何度も調整します。

上林(ソフトウェア):水平走行台車や、垂直昇降機の移動スピードを速くするのも開発目的の一つです。そのため、ただスピードを上げるだけではなく、機械にプログラミングする一つ一つの指示におけるラグ※を少なくすることにも注力しました。また、本来は一動作が終了してから次の動作の指示を出すのですが、よりスムーズに動かすため、リザーバーがある位置まで移動したら次のマシンへ指示を出すように調整しました。

  • ラグ:センサーが反応してから、実際に機械がアクション(停止や加速)を起こすまでの「ため(溜め)」の時間。

伊藤−−−リレーでバトンをもらう前から走り出すようなイメージでしょうか。ダイナミックなスピードにはそんな秘密が隠されていたんですね!

山根(資材):電気制御部品※の部材を集めるのにも苦労しました。「SAS-R」には電気制御部品と、それらを支える機構部分、二つの分野の資材を集める必要がありましたから。

  • 電気制御部品:機械を「思い通りに動かす」ために電気の通り道を操作したり、信号を送ったりする部品の総称。

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こだわりが詰まった、設備の監視・制御を行うLCU(ローカル・コントロール・ユニット)

専門知識でさまざまなオーダーに挑戦!個性が光る「SAS-R」

伊藤−−−作り手側だからこそ注目してほしい、「SAS-R」の自慢ポイントを教えてください!

松宮(製造):精密な製品ですから、なるべく移動回数は減らしたい……。そこで活躍するのが、やはり作業台なんです。施工現場まで一つの台に乗せたまま運べるのは大きな自慢ですね!

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完成品が並ぶ。そこにはオレンジの作業台がズラリ。

山根(資材):イトーキといえばオフィス家具のイメージが強いですよね。だからこそ、「SAS-R」をイトーキでつくっていることを一人でも多くの人に知っていただきたいですね。開発から製造まで、すべてイトーキ製。納入された倉庫にずらりと並ぶ「SAS-R」は圧巻です。また、スペシャルオーダー対応でカバーをコーポレートカラー仕様にできる点も自慢です。どんなオーダーにも応えられる懐の広さが「SAS-R」にはあります。

渡部(開発):同じく「SAS-R」の魅力はユーザーに合わせたスペシャルオーダーの部分に宿っていると思います。たとえば、暗い中でも光るLEDの照明を付けた物も中にはあります。どこか近未来的でカッコいいですよね。

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スペシャルオーダーで青白く光るLEDはまるでSFのよう。

上林(ソフトウェア):こればかりは一箇所ではなく実際に動いている様子を見てほしいと思います。乱れることなくスムーズに仕分け、ピッキング、出庫されていく様はこだわり抜いたソフトウェア設計あってこその動作ですから!

伊藤−−−まさに、あのスピード感は実際の動きでこそ伝わりますよね。ぜひご覧いただきたいです。

\実際の超高速入出庫能力を動画で体感!/

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  • 本記事は、社内報(2024年9月掲載)の内容を、2026年3月に再編集し公開しています。
  • 所属部署・役職・制度は取材当時のものとなります。現時点の情報と異なる場合があります。

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