
近年、オフィスのセキュリティ対策は、企業経営において重要な課題となっています。デジタル化の急速な進展に伴い、セキュリティリスクは日々複雑化・多様化しています。
本コラムでは、オフィスセキュリティの基本から、安全性と利便性を両立させるゾーニング設計まで、企業価値と従業員を守るためのセキュリティ対策についてくわしく解説します。
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なぜ今、オフィスのセキュリティ対策が必要なのか
オフィスのセキュリティ対策は、情報漏洩リスクの高まりや従業員の安全確保の観点から、その重要性が年々増しています。
情報漏洩リスクへの対応
企業経営において、情報漏洩は深刻な脅威となっています。顧客情報や知的財産、事業戦略などの重要情報が流出すれば、経済的損失だけでなく、企業のブランド価値や市場からの信頼を大きく損なうことにつながります。
2022年4月に施行された改正個人情報保護法では、個人情報の漏洩時における報告義務が厳格化されました。法令違反に対する罰則も強化され、法人の場合は最大1億円の罰金が科されることとなっています。
企業を標的とするサイバー犯罪は、年々高度化しています。さらに、外部からの不正アクセスに加えて、内部からの情報漏洩リスクも増大しています。このような状況下で企業の情報資産を保護するためには、システムによる防御策とオフィス空間の物理的セキュリティを融合させた、多面的な対策が求められているのです。
従業員の安全確保
企業には、従業員が安心して働ける職場環境を整える責任があります。不審者の侵入や盗難への対策は、オフィス構築における重要な事項です。
テレワークの普及やフレックスタイムの導入などにより働き方が多様化する中、オフィスの物理的なセキュリティ対策にも新たな課題が生じています。機密情報を扱う際の不安や、セキュリティ事故への懸念は、従業員の集中力を妨げ、業務効率を低下させかねません。
オフィスのセキュリティ対策を整えることで、従業員は安心して本来の業務に専念できます。結果として、企業の生産性向上にもつながると考えられます。
オフィスのセキュリティ対策の基本
オフィスセキュリティの要となるのは、「入退室管理」と「情報資産の保護」です。それぞれのポイントをくわしくご説明しましょう。
入退室管理によるセキュリティ

オフィスを守る最も基本的な対策は、入退室管理を確実に行うことです。
多くの企業では、セキュリティドアとICカード認証を組み合わせた入退室管理を導入しています。最近では、高い安全性と利便性を兼ね備えた顔認証システムも選択肢の一つとして広がっています。
入退室管理システムは、「いつ」「誰が」「どこに」入室したかを正確に記録することができます。この仕組みは、不正侵入の防止はもちろん、内部不正の抑止にも効果的です。さらに、ICカードと顔認証など複数の認証方式を組み合わせれば、より強固なセキュリティを実現することができます。
情報資産の保護

企業の重要な情報資産を守るには、物理的な対策と運用面での対策、両方を整える必要があります。物理的な対策としては、以下のような施策があげられます。
- 施錠式の収納庫を導入し、重要書類・電子媒体を保管する
- 防犯カメラを配置して、オフィス内の死角をなくす
- セキュリティゲートやICカードを導入し、入退室管理をする
運用面では、情報資産の保護に関するルールの明確化と、徹底した社員教育が必要です。
具体的には、重要書類の持ち出し制限や電子機器の使用規定など、適正な運用規則を設けることが求められます。また、セキュリティ事故の事例を共有し、全従業員のセキュリティ意識を向上させることも重要です。
このように、物理的な側面と運用上の側面の両方から対策を講じることで、外部からの脅威および内部からの情報漏洩を防止できます。
ゾーニング設計によるセキュリティ対策
入退室管理と情報資産の保護、これらの対策をより効果的に機能させるには、オフィス空間全体の設計も重要になってきます。その一つの方法として、オフィスの「ゾーニング設計」があります。
ゾーニングとは、オフィス空間を用途や機能に応じて区分けし、各エリアに適切なセキュリティレベルを設定する手法です。来客や取引先など多くの人が出入りする企業のオフィスでは、このゾーニング設計を採用することが有効です。セキュリティレベルで分類し、エリアごとの特性に合わせた管理を行うことで、安全面を考慮しつつ、効率的に空間を活用できます。
セキュリティレベルに応じたゾーニング

オフィス空間をゾーニングする際は、各エリアの特性を考慮し、適切なセキュリティレベルを設定することが必要です。以下の表は、一般的な4段階ゾーニングの例を示しています。
【4段階ゾーニングの例】
セキュリティレベル | ゾーン区分 | 対象エリアの例 | アクセス権限 |
ZONE 1 | 公開ゾーン |
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入居者・来客など不特定多数が利用可能 |
ZONE 2 | 来訪者ゾーン |
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目的に応じて取引先も入室可能 |
ZONE 3 | 内部ゾーン |
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内部の従業員のみ入室可能 |
ZONE 4 | 特定ゾーン |
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特別な許可が必要 |
このようなゾーニング設計では、セキュリティレベルを段階的に上げていく「多層防御」の概念が重要となります。外周から内側に向かって徐々にセキュリティレベルを強化することで、万が一侵入があった場合でも、重要な情報資産や機密エリアを確実に守ることができます。
動線を意識した空間設計のポイント

多層防御の考え方を活かしながら、業務効率を維持するには、適切な動線設計が欠かせません。セキュリティレベルの高い区域をエントランスから離して配置し、来訪者と内部の従業員との動線を分けることで、自然な形で人の流れを制御できます。
具体的には、機密性の高い場所に視線を遮るパーティションを設置し、セキュリティドアによる入室管理を組み合わせます。また、各エリアには用途に応じた収納スペースを設け、重要書類や電子機器の管理を徹底します。このように、セキュリティと利便性のバランスを考慮した空間設計が重要です。
オフィスのセキュリティ対策はイトーキにご相談ください
これまでご説明してきたように、オフィスのセキュリティ対策には、物理的な対策と空間設計の両面からのアプローチが必要です。イトーキは、長年の実績とノウハウを活かし、総合的なセキュリティソリューションをご提供します。
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物理的なセキュリティ対策
入退室管理システムや監視カメラ、セキュリティ収納など、目的に応じた製品の選定・配置をご提案いたします。既存の設備を活用しながら、段階的にセキュリティレベルを高めていくといった方法も可能です。 -
空間設計によるセキュリティ対策
4段階のセキュリティレベルに基づくゾーニング設計で、公開ゾーンから特定ゾーンまで適切な空間づくりを実現します。エリアごとの機能や用途に合わせて、自然な動線を確保しながら、確実なセキュリティ管理をご提供します。
デザイン性と安全性を兼ね備えた、快適なオフィスづくりをお考えの方は、ぜひ一度イトーキにご相談ください。