
「オフィス移転の担当になったけれど、必要な手続きや期限が把握できず不安…」そんな悩みを抱える方は多いのではないでしょうか。移転を成功させる鍵は、何といってもスケジュール管理です。必要な手続きを期限内にきちんと行えば、様々なトラブルを防ぐことができます。
本コラムでは、オフィス移転・事務所移転に関連する手続きや届出を一覧形式でご紹介。あわせて、担当者が行うべき業務や注意点なども詳しく解説します。
オフィス移転・事務所移転の担当者が知っておくべきこと
オフィス・事務所の移転業務は多岐にわたるため、担当者の役割は非常に重要です。公的手続きから取引先への連絡まで、幅広い業務を担当します。
担当者はおもに以下のような業務を行います。
- 移転に関する各種手続きや届出の把握と実行
- 社内外の関係者との連絡や調整
- 移転に伴う備品や設備の管理
- 新しいオフィスの運用ルールの策定
これらの手続きや届出には期限があるものも多く、見落としや遅延は企業活動に支障をきたす可能性があります。移転プロジェクトの初期段階で、必要な手続きや届出のリストを作成し、それぞれの期限を確認しておくことが大切です。
オフィス移転・事務所移転の全体的な流れやスケジュールについては、以下の記事で詳しく解説していますのでぜひ参考にしてください。
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オフィス移転・事務所移転に伴う手続きや届出一覧
オフィス移転や事務所移転に伴う手続き・届出は、スケジュールに沿って計画的に進めていくことが大切です。
ここでは、移転前から移転後までの必要な手続き・届出を、時系列順に整理してご紹介します。
1. 移転計画初期に準備が必要な手続き
移転が決まったら、まず優先して取り組むべき手続きとして以下のようなものがあります。
手続きの種類 |
内容 | |
移転に伴う各種入居工事内容の検討・手配 |
移転先判明後、速やかに内装や通信・電気工事を含む工事内容を検討し、各工事会社と打ち合わせを行いましょう。 |
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防火対象物工事等計画届出書の提出 |
工事着工7日前までに新所轄消防署へ提出します。 |
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防火対象物使用開始届出書の提出 | 使用を開始する日の7日前までに新所轄消防署へ提出します。 | |
道路使用許可申請書の提出 | 作業着手前に新所轄警察署へ提出が必要です。 |
これらの手続きは、オフィス移転プロジェクトの土台となる重要な部分です。特に工事関連の手続きは、許認可の取得に時間がかかる場合もあるため、早めに着手しましょう。
2. 移転6カ月前~3カ月前の手続き
移転の半年前頃は、具体的な準備を始める時期です。おもな手続きは以下の通りです。
手続きの種類 |
内容 | |
駐車場の選定・契約 |
新オフィス周辺の駐車場を確保するため、移転6カ月前~3カ月前目処に管理会社と早めに契約交渉を始めましょう。 |
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現入居ビルの解約通知 |
移転6カ月前にビルオーナーまたはビル管理会社に解約通知を出しましょう。 |
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設置看板・サイン等の撤去 | 移転6カ月前~3カ月前目処にビルオーナーと現オフィスの看板やサインの撤去について相談しておく必要があります。 | |
電話移転の申し込み | 移転先で電話工事が必要な場合もあるので、移転6カ月前~3カ月前目処にNTT(ダイヤル116)に申し込みをしましょう。 |
賃貸物件の入居者からの解約予告期間は、事務所の場合3~6カ月前が一般的です。賃貸借契約書の解約条件を事前に確認しておきましょう。また、電話回線の移転申し込みは、混雑時期には予約が取りにくくなるため、早めの対応が肝心です。
3. 移転2カ月前~1カ月前の手続き
いよいよ移転まで残り2カ月を切ると、社内外への周知や各種契約の見直しなど、対外的な手続きが増えてきます。このタイミングで手続きが遅れると、移転後にトラブルが発生する可能性があるため、計画的に進めましょう。
手続きの種類 |
内容 | |
原状復旧工事の手配 |
移転2カ月前~1カ月前に施工会社と打ち合わせを行い、現オフィスの原状回復工事の日程を調整しましょう。 |
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移転または社名変更等に伴う挨拶状作成・送付 |
移転2カ月前~1カ月前までに印刷会社に発注し、取引先や関係者に移転の挨拶状を送付する準備をしましょう。 |
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社内印刷物各種の作成 | 移転2カ月前~1カ月前までに印刷会社に依頼し、名刺、パンフレット、カタログなど、住所変更が必要な印刷物を新たに作成します。 | |
オフィス清掃会社の解約・手配 | 移転2カ月前~1カ月前までに契約先またはビル管理会社と連絡を取り、現オフィスの清掃会社との契約解約と、新オフィスの清掃会社との契約を行います。 |
原状復旧工事の手配は、賃貸契約の条件によって工事の範囲や費用が異なります。早めに確認と調整を行うことが大切です。
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4. 移転1カ月前の手続き
移転まであと1カ月。業務に関連する手続きは細部まで確認し、漏れのないように注意して行いましょう。
手続きの種類 |
内容 | |
各種保険の社名・住所変更手続き |
移転1カ月前までに各担当保険会社に火災保険・地震保険等の変更手続きを申請します。 |
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取引先銀行への社名・住所変更手続き |
移転1カ月前までに取引先銀行に口座情報や住所変更の手続きをを忘れずに行いましょう。 |
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新聞販売店への社名・住所変更手続き | 移転1カ月前までに担当の新聞販売店に購読している新聞の配達先変更を依頼します。 | |
定期購読書籍等に関する社名・住所変更手続き | 移転1カ月前までに購読先会社に雑誌や専門誌などの配送先変更も忘れずに依頼しましょう。 | |
宅急便・メール便等に関する社名・住所変更手続き | 移転1カ月前までに各依頼先に定期的に利用しているサービスの住所変更を依頼します。 | |
広報・ホームページ等の掲載・更新 | 移転1カ月前目安で社内広報・IR担当部門と連携し、ウェブサイトや社内報の情報更新を行います。 | |
各種リース品・定期保守メンテナンス製品等の手続き | 移転1カ月前~1週間前目処に各契約会社に観葉植物、水槽、玄関マットなどのリース品の移設手続きを行います。 | |
複合機等の移設手配 | 移転1カ月前~1週間前目処にリース・保守会社に依頼します。コピー機やプリンターなどの移設には専門業者の手配が必要です。 |
リース品や複合機の移設は専門業者のスケジュール確保が必要なので、余裕を持った手配を心がけましょう。
5. 移転直前の手続き
移転直前の手続きは、新オフィスでの業務をスムーズに開始するための最終調整でもあります。おもな手続きは以下の通りです。
手続きの種類 |
内容 | |
転居届(郵便物配送依頼)の提出 |
移転2週間前までに移転前の受け持ち郵便局へ提出します。 |
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社内印刷物等差替えに伴う文書廃棄処理 |
移転1週間前目処に廃棄業者に依頼し、古い住所の印刷物は適切に廃棄処理を行いましょう。 |
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自動販売機・給茶機等の手配 | 原状復旧工事着手前までにリース・保守会社と調整し、撤去の手続きを行います。 |
郵便物の転送手続きは特に重要です。転居届を出してから登録までに3~7営業日かかるため、早めに提出しましょう。郵便転送サービスは転送届出日から1年間有効なので、取引先への周知が行き届かない場合でも安心です。
6. 移転後の手続き
移転完了後も、様々な届出が必要になります。特に官公庁への届出は法的な期限が設けられているものが多いため、計画的に進めましょう。
手続きの種類 |
内容 | |
社会保険の適用事業所名称/所在地変更(訂正)届の提出 |
移転後5日以内に、移転前の管轄年金事務所へ提出します。協会けんぽ以外の健保組合に加入している場合は、個別に変更届が必要です。 |
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労働保険名称、所在地等変更届の提出 |
変更のあった日の翌日から起算して10日以内に、移転後の管轄労働基準監督署または公共職業安定所へ提出します。 |
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雇用保険事業主事業所名称変更届の提出 | 変更のあった日の翌日から起算して10日以内に、移転後の管轄公共職業安定所へ提出します。 | |
車庫証明(自動車保管場所証明書)の申請手続き | 変更のあった日から15日以内に移転後の所轄警察署へ申請します。自動車検査証の住所変更手続きに必要なので、早めに手続きしましょう。 | |
自動車検査証、変更登録申請書等の提出 | 変更のあった日から15日以内に移転後の管轄運輸支局へ提出します。 | |
本店移転登記申請 | 移転後2週間以内に、移転前と移転後の管轄法務局へ本店移転の登記申請を行います。 | |
支店移転登記申請 | 支店移転の場合は、移転後2週間以内に本店所在地の管轄法務局へ登記申請を行います。 | |
安全衛生法に関するものの届出 | 移転後遅滞なく移転後の管轄労働基準監督署へ提出します。 | |
防火・防災管 理者選任(解任)届の提出 | 従業員が50名以上いる事業所では、防火・防災管理者の選任と旧オフィスに関する解任届出が必要です。移転後遅滞なく新旧所轄消防署へ提出します。 | |
消防計画作成(変更)届出書 の提出 | 防火管理者選任後遅滞なく新所轄消防署へ提出します。 | |
消防用設備等(特殊消防用設備等)設置届出書の提出 | 建物に消防用設備等を設置した際は、設置後4日以内に新所轄消防署へ提出します。届出後、原則として消防署の検査を受ける必要があります。 | |
異動届出書(法人の住所変更届)の提出 | 移転後速やかに旧税務署、新旧都道府県税事務所、および新旧市区町村へ提出します。 | |
知的財産権等に関する本社所在地変更手続き | 本店移転の場合、移転後速やかに特許庁へ移転登録申請書を提出します。 | |
給与支払事務所等の移転届出書の提出 | 移転後1カ月以内に旧税務署へ提出します。 | |
諸官庁への業者登録の変更 | 住所変更時に変更届が必要となる許認可(建設業許可、古物商許可など)がないかを確認し、所轄の官庁へ届け出ましょう。 |
法的義務を伴う手続きは、期限を過ぎると罰則が科される場合があります。例えば、本店移転の場合、移転後2週間以内に登記を変更しないと、登記懈怠(とうきけたい)とみなされ100万円以下の罰金を科せられる可能性があります。
このような重要な手続きを見落とさないよう、特に期限が短いものから優先的に対応し、漏れがないように細心の注意を払いましょう。
担当者が押さえておきたいその他の業務

オフィス移転や事務所移転では、法的な手続きや届出だけでなく、円滑な業務移行のために担当者が調整すべき重要な業務があります。
ここでは、前章で紹介した手続き・届出以外に必要な業務について解説します。
関係者への挨拶や行事の手配
オフィス移転に際しては、様々な関係者への挨拶や報告が必要になってきます。新しいオフィスのビルオーナーや近隣の方々へは、移転の2週間前から1週間前を目処に挨拶を行いましょう。この業務は総務部や広報部と連携して進めるとよいでしょう。
移転を機に開所式(事務所開き)などの祝い事を行う場合は、移転1カ月前から2週間前を目処にイベント会社や寺社などに手配を依頼しましょう。新しい環境でのスタートを祝う機会であると同時に、取引先や関係者との絆を深めるきっかけにもなります。
こうした行事の企画・運営は総務部や経営企画部と協力して行うことが一般的です。
経理関連の見直し
移転に伴い、経理部門でも様々な見直しや調整が必要になります。移転担当者は経理部と密に連携し、必要な情報提供や調整を行いましょう。
特に通勤経路や交通費の変更は従業員全員に関わる問題です。通勤定期券や交通費精算システムなどの見直しは、移転2カ月前から2週間前を目安に、経理部と総務部、情報システム部が連携して実施することが重要です。移転担当者はこれらの部門間の橋渡し役として、スケジュール管理や進捗確認を担当しましょう。
オフィスの運用ルール策定と周知
新しいオフィス環境では、これまでとは異なる運用ルールが必要になることがあります。入退室方法や警備設定、宅急便の利用に加えて、座席や会議室の利用ルールが必要になることもあります。こうしたルールの策定と周知は、移転2カ月前から2週間前を目安に行いましょう。
これらのルール作りは総務部やファシリティマネジメント部門が協力して進め、社員や派遣関連会社などにも漏れなく周知することが大切です。
セキュリティ対策の整備
セキュリティ対策は、業務の安全性を確保するために必須です。入退室管理における登録データ移行・権限再設定などについては、移転1カ月前から2週間前を目安に、情報システム部門やセキュリティ契約先と連携して進めましょう。
移転担当者は全体のスケジュールを把握し、各部署の作業に遅れが生じないよう調整する役割を担います。
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オフィスセキュリティの基本。入退室管理とゾーニング設計とは防災対策の更新
移転を機に、消防計画・BCPマニュアルなどの見直しも必要です。新しいオフィスレイアウトに合わせた避難経路の設定や、災害時の対応手順の見直しなどを行います。
これらの業務は、総務部や安全衛生委員会と連携して進めること効果的です。移転担当者は関係部署に適切なタイミングで依頼し、進捗を管理しましょう。
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本コラムでは、移転前後に必要な手続き・届出について、担当者の重要業務を中心にご紹介しました。移転プロジェクトは多くの手続きと入念な計画が必要ですが、準備を計画的に進めていけば、トラブルを防ぎ、新しいオフィスでの業務をスムーズにスタートさせることができます。
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