
オフィスの賃貸契約は、通常2~5年ごとに更新時期を迎えます。多くの企業では、特別な困りごとがない場合、「とりあえず継続」という選択をしがちですが、じつはこのタイミングこそ、オフィス環境を改善する絶好のチャンスなのです。
本コラムでは、賃貸オフィスの契約更新時にオフィス環境を見直すべき理由と3つの選択肢のメリット・注意点を詳しく解説。さらに、企業の状況に応じた判断基準もご紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。
賃貸オフィス契約更新の基礎知識
まずは、賃貸オフィス契約を更新する際に知っておきたい「賃貸契約更新の種類」と「更新手続きの一般的な流れ」について、簡単に整理しておきましょう。
契約更新の種類
賃貸オフィスの契約期間は、一般的に2年間が多く、満了時には更新手続きが必要になります。更新料の有無については、契約時の取り決めによって異なります。
更新方法としては、おもに合意更新と法定更新、自動更新の3つのタイプがあります。
1. 合意更新
合意更新は、契約期間の満了に当たり、契約者とオーナーの双方が新しい契約条件に合意して契約を更新する方法です。
賃料や契約条件などの変更を希望する場合は、通常この合意更新の形式で交渉することになります。
2. 法定更新
法定更新とは、借地借家法に基づく制度で、賃貸借契約の期間満了後に特別な手続きが行われない場合、自動的に契約が継続される仕組みです。
以下のいずれかに該当する場合、法定更新が適用されます。
- 契約期間満了の1年前から6か月前までの間に、契約者またはオーナー側から「更新しない」または「条件変更しないと更新しない」という通知がなかった場合
- オーナー側が更新を拒否したいと申し出たが「正当な理由(正当事由)」が認められない場合
このような状況では、「従前と同じ条件で、契約が自動的に更新された」とみなされます。
法定更新が適用されると、更新後の契約は「期間の定めのない契約」となり、次回以降は「契約の更新」が発生しなくなります。
3. 自動更新
自動更新は、契約書に特別な条項を設定し行う更新方法になります。典型的な自動更新条項は以下のようなものです。
「契約期間満了の○ヶ月前までに、双方から特段の申し出がない場合、本契約は同一条件でさらに○年間更新されるものとする」
この条項により契約者またはオーナー側が解約や条件変更などの申し出を行わなかった場合、契約は自動的に更新されます。法定更新と異なり、自動更新は当事者間の合意に基づいているため、法律上は「合意更新」の一種とみなされます。
更新手続きの一般的な流れ
続いて、更新手続きの流れを見ていきましょう。賃貸オフィスの契約更新では、以下のような流れが一般的です。
【賃貸オフィス更新手続きの流れ】
手続きの段階 | 内容 |
1. 更新のお知らせが届く | 契約満了日の1~3ヶ月前に、オーナーや管理会社から更新案内書が届く |
2. 契約内容の確認 | 更新契約書の内容(特に賃料や契約条件など)に変更がないか確認する |
3. 必要書類の提出 | 更新契約書や必要書類に署名・捺印して返送する |
4. 更新料などの支払い | 更新料(多くの場合、賃料の1~2ヶ月分程度)や更新手数料を支払う。火災保険の更新が必要になることも |
契約者に更新の意思がない場合は、契約書に記載された期日(多くの場合は退去予定日の1~2ヶ月前まで)までに解約の通知をしなければなりません。この期日を過ぎると、次の契約期間の賃料を請求される場合があるため注意が必要です。
契約更新時にオフィス環境を見直すべき理由

オフィスの賃貸契約更新は、単なる手続きに思えるかもしれません。しかしこのタイミングこそ、オフィス環境や働き方を見直す絶好の機会です。
契約を継続するか、新たな選択肢を考えるかにかかわらず、今後の事業計画や組織の成長に合わせて、契約内容やオフィスのあり方を見直してみることをおすすめします。
具体的な理由は以下の3つです。
契約内容の再検討、交渉が可能
賃貸オフィスの契約更新は、普段よりも契約条件の見直しや交渉がしやすいタイミングです。なぜなら、通常は話題にしづらい賃料の見直しや設備の不具合修繕についても、更新の節目であれば自然に相談できるからです。
また、周辺物件の家賃相場と比べ、自社の賃料が適正かどうかを改めて確認してみるのもおすすめです。空室リスクを避けたいオーナー側にとっても、契約を継続してもらうメリットは大きく、条件交渉に応じてもらいやすくなる場合があります。
企業の成長に合わせたオフィス環境を整備できる
企業活動は、常に変化するものです。
社員の増減や組織再編などによって、必要なオフィススペースも大きく変わることがあります。人員が増加すれば手狭なレイアウトが業務効率を下げる要因となり、逆に減少すれば広すぎるスペースがコスト負担につながります。
契約更新のタイミングはこうした変化を見据え、事業計画や組織体制、人員計画に合わせたオフィス環境を整えることも重要なポイントとなります。
働き方の変化に対応する機会
テレワークやフレックスタイム制の普及など、近年、働き方は大きく変化しています。それに伴い、オフィスにも多様な働き方を支える場としての柔軟な変化が求められるようになりました。
たとえば、出社人数に応じてフリーアドレス制を導入したり、Web会議専用スペースを整備したり、チーム協業を促すコラボレーションエリアを設けたりと、オフィスの役割そのものを再設計する動きが広がっています。
ただ、こうしたオフィスの環境づくりはレイアウト変更や設備改修を伴うため、通常の業務の中ではつい後回しになりがちです。契約更新という区切りのタイミングは、働き方やオフィス環境を見直す絶好の機会と言えるでしょう。
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賃貸オフィス契約更新時の3つの選択肢とメリット、注意点

「現オフィスで契約を更新する」「新しいオフィスへ移転する」「現オフィスを改装する」といった、複数の選択肢を検討することが可能です。
ここでは、3つの選択肢それぞれのメリットと注意点について詳しく見ていきましょう。
1. 現オフィスで契約を更新する
賃貸オフィスの契約更新にあたって、現在の設備や条件でそのまま契約を継続するのは、もっとも手間が少なく、安定した選択肢といえます。
新たなオフィスへの引っ越し作業や準備にかかる時間・コストも不要なため、業務への影響を最小限に抑えられる点も大きなメリットです。
ただし、契約条件やビル設備に対する不満や違和感を抱えたまま更新してしまうと、「現状を承諾した」とみなされる可能性があるため注意が必要です。現在のオフィスに気になる点がある場合は、更新前に管理会社やオーナーに相談し、改善の余地がないかしっかり確認しておきましょう。
2. 新しいオフィスへ移転する
契約更新時期は、新しいオフィスへの移転を考える最適なタイミングでもあります。今すぐに決める必要はなくても、数年後の更新に向けて「次はどうするか」を検討するのもひとつの選択肢です。
現在のオフィスが手狭だったり、立地が合わなくなっている場合、移転することで自社に合った環境を整えることができます。新しいオフィスに移ることで、業務効率の向上や社員のモチベーションアップに繋がり、企業イメージを向上させる効果も期待できます。
ただし、移転には初期コストがかかることも事実です。賃料が上がる可能性や、引っ越し作業、オフィス家具の新調が必要になるため、業務への影響なども考慮して、計画的に準備を進めることが重要です。
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3. 現オフィスを改装する
現在のオフィスの立地や基本的な環境に満足しているものの、内装や設備、働き方に合わない部分がある場合、現オフィスを改装する選択肢が適しているかもしれません。
改装の最大のメリットは、移転に比べてコストを抑えながら、自社のニーズに合わせた環境を整え、業務効率や社員の働きやすさを向上させることができる点です。
具体的には、
- 出社スタイルに合わせて、フリーアドレス運用に適したワークスペースへ改装する
-
エンゲージメント向上を目的にリフレッシュスペースやオフィスカフェを設ける
- 利用頻度の低い大きな会議室をWeb会議に適したスペースに作り替える
- 働き方に合わせて、全体レイアウトを再構成し、ゾーニングと設備を見直す
といった改善に適しています。
注意点としては、改装は移転よりも低コストで実施できることが多いですが、改装の規模や条件によっては、移転の方がコスト効率が良い場合もあります。そのため、改装を検討する際は慎重に判断することが重要です。
また、改装にあたってはオーナーの承認や、工事中の業務への影響なども事前に確認しておく必要があります。
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企業の状況別に見る最適な選択肢とは
契約更新のタイミングで選ぶべき選択肢は、企業の成長フェーズや経営状況によっても異なります。
ここでは、企業の状況別に最適な選択肢について詳しく見ていきましょう。
成長・拡大フェーズにある企業の場合
現在急速に成長している企業は、移転を選ぶケースが多く見られます。新しいオフィスへの移転は事業拡大の大きなチャンスとなるためです。
たとえば、企業ビジョンを体現したオフィス空間は、社員のモチベーション向上や採用力の強化につながり、成長や拡張を支える基盤となるでしょう。
また、今のオフィスが手狭になっていたり、成長スピードに対して施設面が追いつかなくなっている場合でも、自社にふさわしい広さや機能を備えた環境を整えることが可能になります。
移転を検討する際は、将来の需要を見積もり、長期的な成長戦略を踏まえて、オフィスを選ぶことが大切です。
現状を活かして環境改善を図りたい企業の場合
運用が安定しており、いまの状況をベースにオフィス環境を改善したいという場合は、現在の立地を維持しながら職場環境をブラッシュアップできる改装がおすすめです。
改装であれば、移転に比べてコストを抑えながら、働き方の変化に対応した柔軟な環境づくりに取り組むことができます。
特に、フリーアドレス導入やコラボレーションスペースの設置など、現代の働き方に合わせたレイアウト変更は、業務効率や社員満足度の向上につながります。また、Web会議に適した設備の充実など、部分的な改善でも大きな効果が期待できるでしょう。
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コスト最適化を重視する企業の場合
コスト最適化を重視する企業にとっては、まず現オフィスの契約条件を見直すことから検討を始めるのが一般的です。
周辺市場の賃料相場と比較して現在の賃料が高い場合や、空室リスクを避けたいオーナー側との交渉余地がありそうな場合は、条件交渉によってコストを抑えられる可能性があります。特に賃貸市場の閑散期は、交渉に応じてもらいやすい時期といえるでしょう。
また、オフィス面積を見直してコンパクトなスペースへ移転したり、現オフィスを省エネ型に改装して電気代などのランニングコストを削減したりと、選択肢はさまざまです。
コスト最適化を目指すなら、賃料交渉だけにとどまらず、移転や改装といった可能性も視野に入れて検討してみるのがおすすめです。
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オフィス環境は、企業の生産性や社員の満足度に直結する重要な要素です。
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