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働き方

自治体DXとは?フロントヤード・バックヤード改革の概要と庁舎事例

社会環境の変化にともない、自治体が抱える課題は年々複雑化しています。そこで全国で進められているのが、自治体DXです。これは、住民サービスの利便性向上や自治体庁舎の労働環境整備を目的としたデジタル化の取り組みです。

本コラムでは、自治体のデジタル変革の概要と、取り組みの要となるフロントヤード・バックヤード改革について解説します。庁舎事例もご紹介しながら、わかりやすくお伝えします。

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自治体DXとは

自治体DX(デジタル・トランスフォーメーション)とは、自治体がデジタル技術やデータを活用して、行政サービスや業務のやり方を根本から変革する取り組みのことです。

総務省は令和2年12月に「デジタル社会の実現に向けた改革の基本方針」を策定しました。「誰一人取り残さない、人にやさしいデジタル化」を掲げ、現代の多様な住民ニーズに即した利便性の高い行政サービスの提供を推進しています。

自治体DXの具体的施策としてまず挙げられるのが、自治体窓口の利便性向上を図る「フロントヤード改革」です。
デジタル技術を活用して窓口対応を円滑にするほか、内部業務を効率化することで、限られた人員でも質の高いサービスの提供が実現し、地域住民の満足度を向上させることができます。さらに、職員はより重要な政策立案や住民対応に集中できるようになるのです。

また、自治体が持つデータの民間企業との連携・活用により、地域の新しいサービスやビジネスの創出も期待されています。

出典:自治体DXの推進 自治体におけるDX推進の意義(総務省)

https://www.soumu.go.jp/denshijiti/index_00001.html

自治体を取り巻く現状と課題

自治体DXが重要視される背景には、以下のような状況があります。

深刻化する労働力不足

2040年頃には、1970年代初頭に生まれた団塊ジュニア世代が65歳以上の高齢者となり、定年退職の時期を迎えます。一方で、近年の急速な少子化により若者の人口は年々減少しており、公務員を志望する人の割合も低下している状況です。

同時に地方からの人口流出も加速し続けており、結果、地方公務員数は大幅に減少し、行政サービスを提供する人材の確保が今後さらに厳しくなると予想されます。

住民のライフスタイルの変化

住民のライフスタイルの変化も、自治体DXの推進に影響を与えています。

近年は共働き世帯の増加により、平日に役所に行けない人が増えています。そのため、24時間利用できるオンラインサービスや、自宅や職場の近くなど身近な場所で手続きができるサービスへのニーズが高まっているのです。

デジタル化の遅れ

DXの推進は、日本国内では経済産業省がガイドラインを公表した2018年頃から注目され始めました。

しかし、今も多くの自治体では業務プロセスの最適化やデータ連携の整備が十分に進展しておらず、個別のデジタルツール導入の段階にとどまっている状況です。

デジタル化の遅れは属人化を招きやすく、業務の多くがベテラン職員の経験や暗黙の知識頼りとなってしまう懸念があります。

住民にとって使いにくい庁舎環境

従来の自治体庁舎は、

  • 窓口の場所がわかりにくい
  • 待合スペースが不十分
  • プライバシーが確保されていない
  • 高齢者や身体が不自由な方への配慮が足りない

など、利用者目線での課題を抱えているケースが多く見られます。自治体DXは、デジタル技術によってこれらの使いづらさを解消する点においても注目されているのです。

これからの自治体に求められる3つの要素

これからの自治体に求められる要素として、とくに次の3つが重要だといわれています。

1.住民中心のサービス設計

自治体DXを進めていくにあたり、まずは住民の利便性向上を重視することが大切です。

これまでの「行政の都合に合わせてもらう」という発想から脱却し、「住民の生活に寄り添ったサービス」へと転換しなければなりません。住民の視点で課題を発見し、多様なライフスタイルに対応できる、柔軟なサービス設計が求められています。

2.執務環境の改革

職員が効率よく業務を進められる執務空間づくりも、重要な要素の一つです。
多くの自治体庁舎では、

  • 部屋割りが最適化されておらず、部署間の連携が取りにくい
  • 窓口と事務処理エリアの動線が複雑すぎる
  • 職員がリラックスできる場所がない

などが原因で、業務効率を下げているケースが少なくありません。
こうした空間上の問題を解決することで、職員の働きやすさは格段に向上します。その結果、住民サービスの質向上にもつながるでしょう。

3.地域共創の推進

人口減少や高齢化などにより、自治体だけでは複雑化する地域課題への対応が困難になりつつあります。

そこで重要となるのが「共創」のアプローチです。「共創」とは、住民・企業・NPOなどと行政が連携する取り組みを指します。
デジタル技術を活用し、これまで個別に活動していた住民や団体同士の情報共有がスムーズになれば、地域全体での課題解決が可能になります。

自治体には、こうした多様な主体が自然に連携できる仕組みづくりが今求められています。

DX推進の要となる「フロントヤード改革」とは

ここからは、DX推進の要となる「フロントヤード改革」について見ていきましょう。

フロントヤード改革とは、直接的に住民と接する窓口部分(フロントヤード)を改善する取り組みのことです。住民から見える部分の改革なので、効果を実感しやすいのが特徴です。

ワンストップ窓口の実現

窓口での書類記入や長い待ち時間は、住民にとって大きな負担です。そこで各自治体では、マイナンバーカードを活用して手続きを簡素化し、来庁者のストレスを減らす取り組みが進められています。

マイナンバーカードをかざすだけで氏名や住所が自動入力され、本人確認もその場で完了。さらに事前にオンライン申請しておけば、窓口では最終確認だけで手続きが終わるため、待ち時間を大幅に短縮できます。

とはいえ、デジタル機器をただやみくもに導入すればすべて解決するわけではありません。住民のニーズを十分に調査し、効果が見込める分野から段階的に導入することが重要です。
とくに人員や予算が限られる小規模自治体では、複数の自治体が共同でシステムを導入・運用し、コストを抑えながら効率化を図るという方法が選択肢の一つとなっています。

窓口対応フローの見直し

デジタルツールの効果を最大限に活かすには、従来の紙を前提にした窓口対応のフロー自体を見直す必要があります。
なぜなら、紙の申請書を電子化しただけでは入力や確認がデジタルとの二重で必要になり、かえって職員の負担が増えてしまうからです。

まずは現行の手続きを洗い出し、転記や押印を省略するなど、根本的な業務プロセスの見直しが不可欠です。対応フローを変更した直後は、慣れるまで一時的に負担が増えてしまうかもしれませんが、長い目で見れば住民と職員、双方にとって良い影響があります。

バックヤード側の改革については、次章でくわしく解説します。

住民の声を取り入れた改革

フロントヤード改革を進める上で、窓口を利用する地域住民のリアルな声を都度反映させていくことが重要です。
具体的には、

  • アンケートや実証テストを実施し、住民が実際に使ってみてどう感じたかを正確に把握する
  • 「職員が良いと思うサービス」と「住民が本当に求めるサービス」のギャップを埋めていく

といった地道な取り組みが必要です。行政サービスの質が上がることは、住民の生活の利便性向上にもつながり、ひいては人口増加や企業流入にも寄与するかもしれません。

出典:自治体窓口DX「書かないワンストップ窓口」(デジタル庁)

https://www.digital.go.jp/policies/cs-dx

見えない部分を支える「バックヤード改革」の重要性

「バックヤード改革」とは、住民からは見えない庁内の事務処理を効率化するための施策です。
以下の表に、バックヤード改革のおもな取り組みとその効果をまとめました。

【バックヤード改革の具体例】

改革項目

具体的な取り組み

期待される効果

データの自動連携

住民が入力したデータを、システム間で自動的に連携させる仕組みを構築する

同じ内容を何度も入力する作業がなくなり、入力ミスも防げる

審査の自動化

住所や氏名などの基本情報チェックを自動化する

形式的な審査を省略できる

処理体制の見直し

自治体の規模に合わせて、最も効率的な事務処理の体制を再構築する

少ない人数でもスムーズに業務を進められるようになる

業務フローの再設計

紙ベースの古い手順を見直し、デジタル前提の新しい業務フローを設計する

事務作業の二度手間がなくなり、職員の負担が大幅に軽減される

こうした取り組みとフロントヤード改革を一体的に推進することで、限られた予算と人員の中でも、質の高いサービスを安定的に提供することを目指します。

◇ ◇ ◇

自治体DXによりフロントヤード改革が進めば窓口対応が効率化され、バックヤードにも余裕が生まれます。結果、働き方や業務に応じた改革にも着手できるようになり、住民にとっても職員にとっても使いやすい自治体庁舎を実現することができるのです。

DX時代の新しい自治体庁舎 イトーキ納入事例 3選

自治体DXの流れを受けて、従来の画一的な窓口配置、制約のある執務空間から、住民の利便性と職員の働きやすさを両立させた、新しいコンセプトの庁舎空間が次々と誕生しています。

ここからは、イトーキが空間設計を担当した自治体庁舎の納入事例をご紹介します。

糸島市役所 新庁舎

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福岡県西部に位置する糸島市は、2010年に前原市、二丈町、志摩町が合併して誕生した人口約10万人の市です。糸島市庁舎本館は築50年を経過して建物・設備の老朽化が進行。多様化する市民ニーズに対応するために建替プロジェクトを実施しました。2024年に開庁した新庁舎は、糸島らしさをふんだんに取り入れた空間で多彩な市民サービスの発信拠点として、また、頼もしい防災拠点として、市民生活の新たな拠り所となっています。

糸島市役所 新庁舎 納入事例掲載ページはこちら

世田谷区マイナンバーカードセンター

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自治体DX「かかないワンストップ窓口」の促進のため、「世田谷区マイナンバーカードセンター」が開設されました。国の施策であるマイナンバーカードの活用シーン拡大の一方、「誰一人取り残されないデジタル社会の実現」に向け、デジタル機器やサービスに不慣れな方にきめ細かなサポートなどを行う事務所を目的としています。イトーキは、移転計画の策定からカウンター造作、施工管理業務までを請け負いました。

世田谷区マイナンバーカードセンター 納入事例掲載ページはこちら

愛媛県スマート行政推進課 執務室

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新型コロナウイルス感染症を契機に、社会全体でデジタル技術の活用が急激に進展。今後、官民のデジタル化などに対応した働き方が求められる中、愛媛県はスマート県庁への転換を目指す「新しい働き方へのチャレンジ宣言」を発表しました。これまでの働き方を大胆に変えていくために、活動に合わせて最適なスペースを選択して働けるスマートオフィスを整備し、「フリーアドレス」や「ペーパーレス」などの新しい働き方にも取り組んでいます。

愛媛県スマート行政推進課 執務室 納入事例掲載ページはこちら

自治体DXの導入はイトーキにご相談ください

イトーキでは、自治体DXをトータルでご支援しています。住民にとって使いやすく、職員にとって働きやすい庁舎環境の実現に向けて、これまでに蓄積した豊富な経験とノウハウを活かしたソリューションをご提案します。

移転・新築やリニューアルの計画作成から、現庁舎の利用状況の分析、必要な機能の調査に空間設計まで、プロジェクトをあらゆる面から万全にバックアップ。DX時代に求められる自治体庁舎づくりをお考えの方は、ぜひお気軽にお問い合わせください!理想の庁舎空間構築に向けて、イトーキは力強いパートナーとして構想段階からご支援させていただきます!

DX時代の自治体庁舎づくりに関する資料をプレゼント

DX推進に向けた理想の自治体庁舎づくりについて、庁舎設計のポイントから実際の事例まで解説した資料をご用意しました。本コラムでご紹介した内容に加えて、以下についてもくわしくご紹介しています。

  • 現状の庁舎が抱える空間上の問題点
  • 事例でわかる、窓口サービス改革における空間設計のポイント
  • 理想の庁舎空間実現に向けた具体的なステップ

資料は以下より無料でダウンロードいただけます。ぜひ一度ご覧のうえ、貴自治体の庁舎環境の改善にお役立てください。

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