
2021年に入り、アフターコロナに向けてのワークスタイルやワークプレイスを再検討される企業の方からの御相談を非常に多くいただくようになりました。もちろん現在も新型コロナウイルスの感染の勢いは衰えるどころかさらに増しており、見通しがつきにくい状況ではありますが、数年後に向けて今から準備をしておく、という動きが活発になっております。
本日はそういった検討をこれから始められる方にとって有益な記事をご紹介いたします。ワークスタイル変革を30年以上手掛けてきたVeldhoen
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Companyは、Webサイトの記事「Workplace
Strategy:
moving
from
a
'building
first'
towards
a
'behaviours
first'
approach」(※公開終了)の中で、ワークプレイスを検討するためのポイントを下記のように挙げています。
(以下、斜線で示した記事内の英語の翻訳は本コラムの執筆者によるものです)
- 包括的なワークプレイス戦略は、建物環境(「レンガ」の積み重ね)、デジタルプラットフォーム(「byte」の積み重ね)、企業文化の変化(「ふるまい」の積み重ね)という相互依存性の高い要素で構成されている。
- ワークプレイスの変革は、建物環境を期限内に作り上げることに重きが置かれ、チェンジマネジメントに注力する必要性が過小評価される傾向にあった。=「建物ファースト」というアプローチ
- ハイブリッド型のワークプレイス変革では、建物環境はもはや従業員にとって働く意義や帰属意識を感じる主な要因ではない。そのため、成功を収めるためには「行動ファースト」のアプローチが必要になる。
つまり、アフターコロナのワークプレイス戦略を検討するうえでは、根本的にアプローチの仕方を変える必要性があるということです。
「行動ファースト」アプローチとは
「行動ファースト」のアプローチとはどのようなものか、記事中では下記のように説明されています。
"まず「組織としてどこへ向かって行きたいのか、そしてそれを達成するために働き方はどのように役立つのか」と問いかけることから始まる。この問いに対しての答えを得てから、建物環境やデジタルプラットフォーム関する問いに取り組むのだ。"
すなわち、企業や組織としてのビジョンやあるべき姿を定め、それを実現するための働き方を人々の「行動」や「ふるまい」のレベルまで落とし込んで考え、それにあわせて空間やIT環境を設計するべきである、ということです。
余談にはなりますが、会社、企業を表す単語である"Company"の語源は、ラテン語で「一緒にパンを食べる仲間」という言葉から来ているそうです。 私たちは、勤務先のビルに行くことを「会社に行く」「出社する」と表現している通り、「会社」というと建物のイメージが真っ先に浮かんでしまいがちです。しかし本来は、共通の目的のために集まった仲間が「会社」だとすれば、ビジョンと働き方、働き方と環境をしっかりとリンクさせるというアプローチは理にかなっています。
もちろん、働き方というのは一朝一夕に変わるものではありません。オフィス環境やIT環境が変わる前に、働き方をどう変えたいのか、どういったふるまいをして欲しいのか、という意志を社内に伝えたとしても、その変化を受け入れるスピードには個人差もあります。実際に当社の事例でも、2018年本社移転後のワーカーの生産性実感は年を追うごとに伸びていますが、裏を返せばすぐに働き方の変化に適応できたワーカーばかりではない、ということが言えます。そういった方が適応していく過程で、「ビジョン」や「ありたい姿」を明確にしておくということが必要になるのではないでしょうか。

「行動ファースト」アプローチの重要性が今まさに高まっている
翻って現在の状況を考えてみると、新型コロナウイルスの流行によって半強制的に働き方が変わっている、という方も多くいると思います。現在は「感染リスクの低減」というグローバル共通のビジョンがあり、それを実現させる働き方は例えば「テレワーク」「在宅勤務」だ、というロジックになっています。しかしこの「ビジョン」がなくなってしまったらどうでしょうか?おそらく少なくない企業が、従来の働き方に戻ってしまうのではないでしょうか。
もし企業として、組織として、理由がなんであれ「これからも在宅勤務やテレワークを組み込んだ働き方にしたい」「元の働き方には戻したくない」と考えるのであれば、それは企業のビジョンやありたい姿と、働き方の関連性をあらためて見つめ直し、どういったふるまいを社員に求めているのか、ということをあらためて認識してもらうことが必要でしょう。
もしここで「建物ファースト」のアプローチをとってしまうと何が起こるでしょうか。例えば在宅勤務でオフィスへの出社率が減ることありきで先にオフィス面積を減らしてしまっても、ワーカーの行動が変わらなければオフィスに戻ってきてしまうでしょう。そうなると、オフィスに使える座席がないという不満が増大したり、やむなく在宅勤務をしているが生産性が担保できず、ワーカーのエンゲージメントが低下したりする、という事態も起こり得ます。会社側の意図はどうあれそれは伝わることはなく、ワーカーから見れば「自分たちをないがしろにしたコスト削減だ」と感じられてしまうのではないでしょうか。
「行動ファースト」のアプローチとは、何から始めればいいのか?
Veldhoen + Companyは下記のような本質的な問いをまず組織に投げかけ、それを実現するための戦略的なアプローチを行うことを記事内で提言しています。
- 私たちの戦略的な目標は何なのか?
- 現在の仕事のやり方は、その目標達成をサポートしてくれているか、むしろ阻害しているか?
- 新しい働き方(そして新しいリーダーシップスタイル)は、どのように私たちをサポートできるのか?
- そして、この新しい働き方をサポートするオフィスデザインとは?
このような問いかけを、ぜひ働き方や働く場を再検討する立場にある方はぜひ自身に、そして可能であれば、経営層や従業員にもぜひ行ってみてください。そうすれは検討の過程で議論が迷走してしまったり、対立が起こったりするような場合でもきっとブレない判断の軸になると思います。
「行動ファースト」アプローチは同社とイトーキが提供するABWコンサルティングサービスの進め方でも採用されています。ご関心のある方はぜひこちらの資料もご覧ください。