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イトーキと松尾研究所、854名の行動データをAIで分析し、「データ駆動型生産性推定モデル」を構築
70種類の行動データと「心身のコンディション」「社内の人間関係」の因果関係を探索し、難易度が高かった「生産性向上」のボトルネックを明らかに
株式会社イトーキ(本社:東京都中央区、代表取締役社長:湊 宏司、以下「当社」)は、株式会社松尾研究所(本社:東京都文京区、代表取締役:川上 登福、以下「松尾研究所」)との生産性に関する共同研究の最新成果を発表します。
本研究ではAIを活用し、854名の日々の仕事から生まれる会議、メール・チャット、オフィス内の移動など70種類の行動データをセンサーにより抽出し、生産性向上の因果関係を探索する「データ駆動型生産性推定モデル」を構築しました。また、モデルの有用性につながる最新の分析結果では、会議は「長さ」より「数」が翌日の心のコンディションに影響することを確認。一方、会議などに中断されず60分以上集中して作業できた日は、全職種で88%の従業員において翌日の心のコンディション向上が確認されました。また、メール・チャットでは「発信量」より「受信量」が組織内の人間関係に影響するなど、働き方を改善するための新たな知見を得ました。
データ駆動型生産性推定モデル(簡易表示)
背景:「生産性が低い」ことは分かっても、「何を変えればよいか」が分からない
人的資本への投資が進む一方、その投資対効果を可視化し、従業員の生産性をどのように測り、改善するかは企業にとって大きな課題です。仕事の成果は、生産量や売上金額など、企業や職種によって指標が異なります。また、生産性には人事制度や業務ツール、心身の状態、組織内の人間関係など、多くの要素が影響します。
これまで当社では、オフィスワーカーを対象としたサーベイを中心に、働く人の状態やオフィス環境を捉えてきました。しかし、「状態が良いのか、悪いか」は把握できても、「何を変えれば改善できるか」という因果関係まで特定することは困難でした。また、近年の研究では、生産性を売上や生産量などのアウトプットと、労働時間や業務ツールなどのインプットだけで捉えるのではなく、その間にある熱意、集中、コミュニケーションなどの中間指標を捉える重要性も示されています。
そこで当社と松尾研究所は2025年、オフィスワーカーの日々の行動データを活用し、心身の状態や組織内の人間関係を中間指標と捉え、その因果関係を明らかにする生産性の共同研究を開始しました。主観的なサーベイに頼らず、会議、メール・チャット、カレンダー、オフィス内の稼働データなど主に客観データを活用し、生産性に影響する因果関係を探索。「生産性とは何か」「何を変えることで向上するのか」を明らかにすることを目指しています。
実施内容と新規性:AIで会議、メール、移動など70種類の「行動データ」を分析し、時系列や職種による違いも検証
今回の研究では、当社の本社オフィスで働く854名を対象に、2025年12月1日から12月31日までデータを取得しました。そこからオフィス内での移動回数、会議の時間や数、メール・チャットの頻度など、日々の働き方因子となる行動データ70種類を抽出しました。

行動データ70種類の内訳(位置情報21、予定情報4、オンラインコミュニケーション情報45)が分析対象
また、この「70種類の行動データ」と心身の健康や社内の人間関係などの「コンディション」、それらが「アウトプット」(今回は従業員一人ひとりの能力発揮度を設定)に与える影響について因果探索を行いました。その日の行動データと当日・翌日の状態を時系列で捉えるとともに、「設計・開発・企画」「営業・サービス」「管理」の3種類の職種に分けて比較し、職種ごとの違いも検証しました。
これらの分析結果をもとに、コンディションやアウトプットに影響を与える行動要因を特定可能にする「データ駆動型生産性推定モデル」を構築しました。本研究では、854名を対象とした大規模な行動データを分析し、働き方と生産性の因果関係を特定しました。従来の生産性分析が実態把握にとどまることが多い中、データに基づいて因果関係を明らかにした点が、本研究の大きな特徴です。

分析手法
本モデルの中核は、時系列の因果探索手法「VAR-LiNGAM(※)」です。
この手法を従業員一人ひとりの日次の行動データに適用し、職種ごとに集約する形でモデルを構築しました。従来の相関分析では、例えば「会議が多い日は調子が悪い」という同時の関係までしか分からず、「会議が多いから調子が悪いのか、調子が悪いから(生産性が低く)会議が多くなるのか」どちらが原因かも、翌日への影響も特定できませんでした。本モデルは、従業員一人ひとりの1日ごとのデータから「今日の行動→翌日の状態」という向きと時間差を推定し、職種ごとに重ね合わせることで、多くの従業員で同じ向きに現れる関係だけを抽出。これにより「効く行動」と「効かない行動」を同じ基準で判定できるようになりました。
※VAR-LiNGAM:データの分布の偏りを手がかりに因果の向きを推定する手法「LiNGAM」を時系列に拡張したもの(Hyvärinen, Zhang, Shimizu & Hoyer, 2010, Journal of Machine Learning Research)
分析結果
分析結果① 会議は「長さ」より「数」が翌日に影響
本モデルの有用性を示す、最新の分析結果では、「設計・開発・企画」「営業・サービス」「管理」3職種すべてに共通して確認されたのが、会議の数が翌日の心のコンディションに及ぼす影響です。会議の数が多かった日は、翌日の心のコンディション低下が確認されました。3 職種で同じ傾向が見られ、今回の分析では、会議の総時間より「会議がいくつ入っているか」の影響が強く表れました。
会議を見直す際には、そもそも会議を必要としない仕事の進め方を考えて数を減らす視点も重要であることを示しています。
分析結果② 60分以上集中できた日は、全職種で88%が翌日のコンディション向上
一方、会議などに中断されず、60分以上まとまって作業できた日には逆の結果が見られました。「設計・開発・企画」「営業・サービス」「管理」全職種のうち88%の従業員に翌日の心のコンディションの向上が確認されました。会議を単純に短くするだけでなく、中断されずに仕事を進められる時間を確保することが、働く人のコンディションを整える上で重要であることを示す結果です。
分析結果③ メール・チャットは「発信量」より「受信量」が影響
デジタルコミュニケーションでは、発信と受信で異なる影響が確認されました。特に「営業・サービス」職では、メール・チャットの受信が多い日に、組織内の人間関係や体のコンディションなど複数のコンディション低下が見られました。
一方、自分からオンラインで発信する行動は、組織内の人間関係のコンディション向上に影響していました。メール・チャットは、単に利用量が多いことで負担になるのではなく、「自ら発信すること」と「継続的に情報を受け取ること」で、働く人に与える影響が異なることを示しています。
分析結果④ 一見関係しそうでも、一律には影響しない働き方も
今回のモデルでは、組織全体では「アウトプット」に一貫した因果が見られない以下の行動も捉えました。
- オフィスにいる時間の長さ
- 休憩エリアを利用する回数
- メール・チャットへの返信の速さ
-
デジタルにつながっている時間の長さ
単純に「長時間オフィスにいるからコンディションが良い/悪い」「返信が速いほど生産性が高い」とは言い切れないことを示します。この結果は、働いた時間や行動量だけでなく、どの行動が、どのコンディションに影響するのかをデータで捉える必要性を示しています。

因果モデルの構築により、生産性向上につながる具体的な施策の検討へ
これまで、働く人の状態を把握するには、本人が回答するサーベイが重要な手段でした。一方、回答には一定の負担があり、分析の客観性の担保と継続性にも限界があります。
今回、客観的な行動データを中心にサーベイ結果を組み合わせて因果を探索する「データ駆動型生産性推定モデル」を構築したことで、将来的には日々の客観的な行動データのみを活用し、生産性に関係する状態とその要因を継続的に捉えられる可能性が広がりました。
これにより、「会議を減らす」といった一律の施策ではなく、組織や職種ごとに何がコンディションを下げている原因なのか、上げている原因なのかを特定し、会議の数や集中時間の確保など、具体的な改善策につなげるための基盤が整いました。
今後について
今後は、本研究で構築したモデルを異なる職種、拠点、企業へ展開し、顧客ごとに生産性へ影響する因果を捉えられるよう、精度と適用範囲を高めます。さらに、当社が培ってきたオフィスづくり・運用のノウハウを組み合わせ、各社の働き方の目標や特性に応じた空間構築や運用施策を提案します。
当社は、データとAIによる因果探索を通じて、生産性の実態把握だけでなく、その背景にある行動・環境要因の解明に取り組んでいます。「なぜその状態が生まれるのか」「どの行動を変えればよいのか」を科学的に明らかにし、従業員のウェルビーイングに配慮した生産性向上の実現を目指します。
共同研究概要
| 研究名称 | オフィスにおけるマルチモーダルデータ活用による生産性評価研究 |
|---|---|
| 研究担当 | 株式会社イトーキ、株式会社松尾研究所 |
| 研究分担 |
イトーキ:データ・従来モデル提供 松尾研究所:データ分析・新モデル構築 |
| 分析対象 | 本社オフィス勤務者854名 |
| 分析期間 | 2025年12月1日~31日 |
| データ | オフィス稼働データ、カレンダー、メール、チャット、サーベイなど |
| 分析項目 | 会議、集中時間、移動・滞在場所、オンラインコミュニケーションなど70種類 |
| 分析方法 | 時系列の因果探索(VAR-LiNGAM)、職種別分析など |
| 研究目的 |
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| 備考 |
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関連情報
・生産性をAIで可視化、イトーキ×松尾研究所が生産性の共同研究を開始
https://www.itoki.jp/company/news/2025/0729_ai/
・イトーキと松尾研究所、ABWオフィスにおける移動の目的と生産性の関係を職種別に分析
https://www.itoki.jp/company/news/2026/0701_jsai/
・ITOKI
OFFICE
AI
AGENTS
イトーキ、3つのAIエージェント群「ITOKI
OFFICE
AI
AGENTS」を発表。業界初となる“AI経営モデル”へ転換
https://www.itoki.jp/company/news/2026/0220_ai/
・ITOKI
STORY
「働く」をもっと快適に、もっと自分らしく。AIが導く育てるオフィス
https://www.itoki.jp/company/itokistory/column/2026021.html
イトーキのワークプレイス事業について
株式会社イトーキは1890年創業。ミッションステートメントに『明日の「働く」を、デザインする。』を掲げ、オフィス家具の製造販売、オフィス空間デザイン、働き方コンサルティング、オフィスデータ分析サービスのほか、在宅ワークや家庭学習用家具、公共施設や物流施設向け機器など、”AI×Design based on PEOPLE”を強みに、さまざまな「空間」「環境」「場」づくりをサポートしています。
ハイブリッドワークが普及し働く場所や働き方の多様化が進むなか、生産性や創造性を高める空間DX、最適なオフィス運用を伴走型で支援するコンサルティングサービスなども展開。外部デザイナーやパートナー企業との協業も積極的に行い、これからの新しいワークスタイルとワークプレイスを提案しています。
株式会社松尾研究所について
株式会社松尾研究所は国立大学法人 東京大学大学院 工学系研究科 松尾・岩澤研究室に伴走し、大学を中心としたイノベーションを生み出す「エコシステム」を作り、大きく発展させることを目的に設立された研究所です。松尾研究所は、アカデミアから生み出される研究成果・技術の「開発・実装」を行い、広く社会に普及を目指し、日本の産業競争力の向上に貢献しています。
報道関係者
お問い合わせ先
株式会社イトーキ
コーポレートコミュニケーション本部
広報課
TEL:03-6910-3910
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