財務戦略
2026年に向けて
イトーキ史上最強の財務体質を実現していく
構造改革プロジェクト等の効果により、イトーキは2023年度に売上高から当期純利益までイトーキ史上最高の数字を更新しました。新中期経営計画の実現を通じて、財務体質の強化を目指します。
イトーキグループの資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応および財務・非財務データ集については、以下をご覧下さい。
資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応について [954KB]
振り返り
2023年度の決算は、前中期経営計画の締め括りとして、売上高から当期純利益まですべての段階で過去最高を更新し、業績予想を大幅に上回る成果を達成しました。特に、営業利益は戦略経費計上前利益で100億円の実力値に到達。人的資本投資への意識的な経費計上、人件費の増強、教育研修の充実、そして生産性とエンゲージメント向上に直結する自社オフィスのリニューアルへの集中投資が当社の業績の特徴です。特に、オフィス投資は大きな成果を挙げ、オフィスづくりの提案にも活用されています。
この業績は、3年前に開始した構造改革プロジェクトの成果が大きく寄与しています。営業、生産・供給、資産効率化、建材商品、新商品開発、人事施策、DX戦略といった分野での収益性強化が、収益基盤の充実に結びつきました。特に財務資本戦略では、非事業用資産の売却や政策保有株式の縮減を通じて、バランスシートの管理を徹底し、資産効率の最適化を実現しました。営業利益の改善において「稼ぐ力」の向上は持続的なものであり、今後も成長が期待されます。アドバンテッジアドバイザーズとのプロジェクトは成功を収め、Exit時の自己株式取得を含む財務強化にも寄与しました。
収益と財務基盤をさらに向上させるため、新中期経営計画では、グループ全体の資産効率化、決算の迅速化、予測の精度向上、キャッシュコンバージョンサイクルの改善、事業別ROICの推進、事業ポートフォリオの再構築などの取り組みを進めていきます。これらの施策により、持続可能な成長と競争力の強化を目指しています。
中期経営計画
資本コストを意識した経営、事業ポートフォリオ
資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応
新中期経営計画では、財務資本戦略をさらに推進し、資本コストと株価を意識した経営を強化しています。業界トップを目指す経営指標の達成に向け、昨年の東証からのタイムリーな方針開示要請を受け、構造改革プロジェクトを基盤にPBR改善策を着実に実行。その結果、PBRは1倍を大きく上回る水準にまで良化しました。
想定株主資本コストは9~10%として初めて開示しました。算定方法には正解がなく、さまざまな見方がありますが、自社では実質無借金であることを踏まえて、敢えて厳しめなハードルレートを設定しています。外部からは資本コストをもっと低く見ているとの指摘もありますが、エクイティスプレッドの拡大を進めるに当たって自社内部で厳しく設定しています。投資家やアナリストからの意見、株主のスチュワードシップに感謝し、今後もフォーキャストの精度向上と情報開示を通じた適正な評価獲得に注力していきます。2026年に向けた中期経営計画における7FlagsおよびESG戦略は、PBR向上のための体系的な要素であり、戦略はすべて財務的に説明できます。当中期経営計画の実現とベストプラクティスの実践を通じて、イトーキ史上最強の財務体質を目指します。
中期経営計画
キャッシュアロケーション、株主還元
中長期の観点から、成長戦略投資・社員還元・株主還元を計画的に実践
当社の業容および財務資本戦略も新たな段階に入ったと認識しており、これからの戦略投資、人的資本投資、そして株主還元にそれぞれ資金をどのくらい割り振るかの「キャッシュアロケーション」を策定しました。
創出資金として、3年間合計で650~750億円と試算し、M&Aを含む戦略投資枠250億円、R&D枠50億円、設備投資枠100億円、人的資本投資枠100億円、機動的な自社株買いを検討するとともに、配当性向40%を目指します。
設備投資については、社内では加重平均資本コスト(WACC)をハードルレートとして運用し、投資収益性をROICで評価しています。今後は会社別ROICや事業別ROICの拡充を目指します。中期経営計画数値としてはROEを15%と設定しており、ROE三分解において当期利益率の改善が特に重要です。重点戦略である7Flagsによる営業利益率の向上を推進していきます。
事業ポートフォリオとして、中期経営計画最終年度の2つの事業における売上構成比の変化はほぼフラットです。しかし、連結の7割を占めるワークプレイス事業の収益性向上を基に、当該事業の利益構成比を約7ポイント引き上げる予定です。
PLおよびBSマネジメントでは、売上高から総利益を追求する営業現場の業績評価方法により売上総利益および売上総利益率を改善し、生産・物流の改革によってコスト低減と資産圧縮を実現し、アセットの効率化による資産回転率を向上させ、自己資本比率の目標値を約40%と設定し、レバレッジを適切に管理していきます。
ワーキングキャピタルは月商の1~2か月分程度を保持する方針です。また、政策保有株式の縮減については、現在、対株主資本比率は4%以内となっており、保有の合理性を総合的に判断した上で縮減を実施し、資本効率の向上と財務体質の改善、FCFの創出に努めます。今回、人的資本投資を働く環境投資、教育投資、エンゲージメント投資として3年間で100億円の投資枠をキャッシュアロケーションに明確に位置づけました。これは、企業成長の主役は社員であり、中長期成長のためには人財の強化が欠かせないとの認識に基づいています。
特に、財務資本戦略における人的資本強化として、会計プロ人財の育成・供給、三様監査の体系的強化による内部統制の高度化、ファシリティマネジメントのプロ企業としての資産管理の向上を進めていきます。オフィスは、コストからインベストメントの対象へと変化し、エンゲージメントスコアアップに奏功します。「生産性が上がるオフィス」「健康になるオフィス」「来たくなるオフィス」に加えて、今後、「学びたくなるオフィス」によるリスキリングやプロフェッショナル化など、さらなる展望が期待されます。
株主のみなさまへの還元については、経営の重点施策として継続的かつ安定的に配当することを基本方針としています。加えて、連結業績を考慮し、配当性向40%を目指し、配当政策を実施していきます。
2023年度は、1株当たり配当金を期初予想25円に対して7円と10円の2回の増配を加え、合計42円とし、配当性向は32.2%となりました。さらに、2024年度は、1株当たり配当金予想を普通配当10円増配の52円とし、配当性向を36.1%としています。
当社は近年、当期利益が厳しい中でも普通配当を減配することなく、安定的な配当を実施してきました。引き続き、上記方針に則り、収益性の強化や財務状況を総合的に勘案し、中長期的な企業価値に資する自己株式取得などの資本政策を含め、早期に配当性向40%を目指し、株主のみなさまに資する株主還元を実施していきます。
株主還元方針
当社は、利益配分につきましては、経営の重点政策の一つとして認識し、会社の収益状況、内部留保の充実、今後の事業展開等を総合的かつ長期的に勘案したうえで、株主のみなさまに継続的かつ安定的に配当することとし、期末配当として年1回を行うことを基本方針としています。
今後の配分につきましては、さらなる株主重視の経営を志向し、従来の安定配当に加えて連結業績を考慮するとともに、配当性向40%を目指し、配当政策を実施していきます。また、内部留保につきましては、企業価値の向上を図るために、将来の成長に不可欠な研究開発や成長分野への戦略的な投資を中心に効率的に活用していきます。
株価(2018年12月末を100としたときの相対株価)
TSR(株主総利回り)
取締役
常務執行役員
管理本部長
森谷
仁昭