シンプル・コンパクト・フレキシブルを実現。
市民に寄り添う「まちづくり」の拠点となる庁舎。
2006年に1市3町の合併により誕生した福岡県嘉麻市。福岡県のほぼ中央に位置し、北部九州最大の遠賀川の源流がある。
同市では、「シンプル・コンパクト・フレキシブル」を目指した新庁舎を2020年3月に開庁。コンパクトな建物形状の中に豊かなオフィス環境を実現した。
その建築プロセスは、地方自治体に共通する課題解決にひとつの指針を示している。

外観
外観
コンパクトな矩形デザインの新庁舎。四方の窓から自然通風を取り入れ、奥行きの深い格子状のアウトフレームで日射を制御するなど、エネルギーコストを縮減する「人と環境にやさしい庁舎」。

総合案内
総合案内
1階メインエントランスを入って右手には総合案内(さくらの窓口)を設置。相談窓口を番号で案内し、誘導サインと併せて市民の使いやすさを向上。

1階市民ロビー空間
1階市民ロビー空間
さくら通りと命名され賑わいを生み出している、 開放的な市民ロビー空間。エコボイドの最上階にはハイサイドライト(高窓)を設置し、自然換気を促進。

2階市民窓口フロア
2階市民窓口フロア
市民と打合せしやすいローカウンターの窓口ゾーン。写真左のエコボイド(吹き抜け)まわりにも丸テーブルの打合せコーナーを併設。市民の要望に応じた形態で、相談にも丁寧に対応できる。

窓口カウンター
窓口カウンター
窓口番号を切り出したフェルト素材のパーティション。カラーやデザインはフロアごとに変更。

1階待合スペース
1階待合スペース
利用者の多い市民課前の待合スペースは、市の木である桜材のフローリングで市民を温かく迎え入れる。打ち放しコンクリートと嘉麻市産材の内装が洗練された空間を演出。

1階待合のキッズスペース
1階待合のキッズスペース
杉の端材を利用して積木ブロックを制作。地域産材を遊具として子どもたちも触れることができる。

4階会議室・打合せコーナー
4階会議室・打合せコーナー
嘉麻市産杉材で包まれた議場ボリューム下の会議室や打合せコーナー。天井ルーバーには、ふるさと納税による157名分の寄附者氏名が刻印されている。庁舎を訪れ自分の名前の刻印を写真に収める方も多く、記憶に残る印象的な空間を創出している。

執務スペース
執務スペース
ユニバーサルプランの執務空間は、業務に合わせてフレキシブルに利用でき、業務効率の向上を実現している。フラットなRC直天井が外光を反射し、エネルギーコストの削減にも貢献する。

4階市長室
4階市長室
眼下には遠賀川の眺望が広がる。
User's Voice
嘉麻市
総務課長
安陪博士氏
執務空間に採用したユニバーサルプランは、フレキシブルな運用ができ、コロナ禍における感染対策として席数を減らしソーシャルディスタンスの確保にいち早く対応できました。見通しの良い空間で、職員間・部署間の連携も活発になりました。これらは、本プロジェクトの初期段階で行ったオフィス環境調査を行ったことが大きかったと思います。コミュニケーションの活性化や移動距離の短縮など、業務効率の改善に役立ちました。開庁後もイトーキは何度も足を運び状況確認をするなど、フォロー体制をつくっていただき、都度相談できるので安心しています。
Comment
「コンパクト庁舎」というニーズを具現化する為に、基本設計の初期段階に久米設計様と連携し、オフィス環境調査業務を実施致しました。設計の根拠となるデータベースを初動で構築した結果、コンパクト&豊かなオフィス環境が実現出来ました。
市民と共に「まちづくり」を強く先導する庁舎を実現する為に、地元の指物木工職人(嘉麻の匠)制作の家具や地元のガラス職人(嘉麻の匠)制作の照明を設置し、地域の力を盛り込んだ空間を構築し、地域コミュニティを形成している点も大きな特徴です。
また、嘉麻市産杉材を効果的に活用し、環境サイクルに貢献すると共に、林業や関連産業が活性化する事で、地域全体に貢献しています。私達は、嘉麻市産杉材を幕板に利用した窓口カウンターを制作させて頂きました。木の持つ風合いにフェルト素材のカラーパネルを組み合わせた事が大きな特徴です。表情の変化を作り出す事を目的とし、カラーパネルの表裏で色を変え、レーザーエッジングで課の番号を表現すると共に、相談窓口に適した吸音性も兼ね備えました。建築との調和を意識し、デザイン性と機能性を兼ね備えた窓口が実現出来ました。
Director
大浦 剛司
Takeshi Oura