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「日本のワークプレイスカルチャーや変革の複雑性を理解する」Veldhoen + CompanyのPodcastに弊社社員が出演しました

「日本のワークプレイスカルチャーや変革の複雑性を理解する」Veldhoen + CompanyのPodcastに弊社社員が出演しました

当社のパートナーであるVeldhoen + Companyが公開しているPodcast 「A Better World of Work」に、当社社員の酒井が出演しました。酒井はActivity Based Working(ABW)の社内浸透、社外へのプロモーションを担当しており、
"Understanding the intricacies of the Japan workplace culture and change(日本のワークプレイスカルチャーや変革の複雑性を理解する)"と題して、日本におけるテレワークやハイブリッドワークの現状やその背景にある日本の企業文化、当社の取り組み等を紹介いたしました。今回は全編英語のPodcastの内容を再編集し、日本語でポイントをご紹介いたします。

パンデミックが日本の働き方に与えた影響とは

他の多くの先進国と同様、パンデミックをきっかけとして在宅勤務が広く行われるようになったのはとても大きな変化でした。日本において在宅勤務とは、もともとはオフィスに出社して終日働くことが難しい方、例えば子育てや介護と仕事を両立しなければならない方や、障がいがある方など多様な人材の雇用促進、また災害などで交通機関がマヒした際のBCPの観点から、2000年頃から政府が推進していました。しかし一部の先進企業を除いてあまり一般的にはなっていなかったのです。

当社が実施した、従業員数300名以上の企業に勤務するワーカーに行った調査の結果をご紹介します。2020年3月時点では半数以上のワーカーが「在宅勤務のできる環境が整っていない」と回答していましたが、2021年3月の調査では36%に減少していました。2022年3月の調査では、「在宅勤務を実施している」ワーカーが約50%、「在宅勤務ができる環境は整備されているが実施していない」ワーカーが約15%という比率になっています。

柔軟な働き方に向けて準備を進めていたイトーキ

当社では2013年から在宅勤務のトライアルを実施し、主にペーパーレスやIT面での課題抽出を行うなど準備を進めてきました。2018年には「テレワーク勤務規程」ができ、東京都が呼びかける「テレワーク・デイズ」というプログラムに参加し、東京で勤務する社員の多くが年に1回はテレワークにチャレンジしていました。パンデミックが起こる前にも、例えば足を骨折してしまったり、自分や家族が感染症になってしまったりしたときにテレワーク勤務が利用されていましたが、あくまでテレワークは「特殊な働き方」という認識であったと思います。

しかしそういった準備を行っていたことで、2018年の本社でのABW(Activity Based Working) 導入や、2020年から始まった新型コロナ流行による在宅勤務推奨にもスムーズに対応することができました。ハイブリッドワークを本格的に実践し始めたと言えるのは2021年からでしょうか。テレワーク勤務規程が変わり、育児や介護、ケガなど特殊な事情がなくても人事部へ申請を行えば週4日までテレワークが実施できるようになりました。

日本でのハイブリッドワークの二極化と深化

先ほど、弊社の調査では従業員300名以上の企業に勤めるワーカーの半分が在宅勤務を実施しているとお伝えしました。しかしながら中小企業では在宅勤務の実施比率が少なくなるというのは他の調査でも明らかになっています。また東京など大都市で勤務するワーカーには在宅勤務は広がっていますが、地方のワーカーは異なります。

一方弊社の調査によれば、2021年と比較して2022年にはワーカーの働き方に関する裁量が広がっていることが分かっています。例えば、「オフィスに出社する日を会社に指定されるのではなく自分で決められる」「働く場所を選ぶのに上司の承認が必要ない」と回答するワーカーが増えていました。このことから、パンデミックによる強制的な在宅勤務から、自分の意志で働く場所を選べる、本当の意味でのハイブリッドワークに転換してきていると言えると思います。

またオフィス回帰の流れも強くなっており、理由としては社員同士のコミュニケーションやイノベーションの観点を挙げる企業が多いと感じます。弊社の調査でも、コミュニケーションに関して、業務を進めるのに必要な会話ではないカジュアルなコミュニケーション、例えばニュースや天気、社員のプライベートも含めた会話が少ないと感じているワーカーが年々増えています。

危機感の欠如と言語の壁が日本企業の働き方の変化を遅らせた

日本企業は変化が遅い、と一般的に言われています。働き方の変化に限っていえば、労働市場の流動性が低く、人材獲得競争が他の先進国と比較してあまり激しくないことが最大の理由として考えられるでしょう。社員に柔軟なワークスタイルやワークプレイスの選択肢を提供しなければ、社員が辞めてしまうかもしれない、という危機感が今まではなかったのです。しかし「在宅勤務やテレワークを認めない企業から離職する意向のある社員が多い」という調査結果や報道も出ており、パンデミックをきっかけとして今後は企業の考え方が変わっていくのではないかと想像しています。

また日本企業が変わろうとしないもう1つの理由として「言語の壁のせいで日本国外の企業の状況を知っている、知ろうとする人が少ないから」ことも挙げられるのではないかと感じます。例えば「ダイバーシティ&インクルージョン」や「サステナビリティ」といった、いま企業が重視すべきコンセプトなども、いつも遅れて日本に"輸入"されます。またそれがなぜ必要なのか、海外の企業がどれだけ熱心にそれらに取り組んでいるのか、腹落ちしていない人が多いのではないでしょうか。

日本企業が変化するために必要なこととは

さまざまなお客様の事例を見る中で感じることは、ワークスタイル変革を目指す企業が設定した「こうありたい」というビジョンやスローガンが曖昧なことが多く、ワークプレイスやITに関する具体的な施策としっかりと結び付けられていないことが多いように感じます。また日本ではチェンジマネジメントの手法もあまり一般的ではないため、プロジェクトの中でワーカーの行動変容について軽視されていることも多くあります。実際にイトーキの取り組みについてお客様にご紹介すると、アスピレーション(ありたい姿)とABWの「10の活動」*、そしてオフィスデザインがしっかりとつながっている点を評価いただくことが多いです。

またプロジェクトの成功/失敗をすぐに判断しないというスタンスも重要です。これは当社もVeldhoen + Companyのコンサルティングを受けて気づかせてもらったことです。ワークスタイルや社員の行動の変化には時間がかかるので、しばらく静観する必要があるのですが、こういった感覚はおそらく多くの日本企業にはなかったのではないかと思います。変革を起こした直後のネガティブな意見に一喜一憂しないためにも、あらかじめ効果測定や今後の進め方についてプロジェクトメンバーで握っておくことが大事だと感じました。

A Better World of Work(より良い「働く」の未来)とは

私にとってのA Better World of Workとは「身体的にも、精神的にも、社会的にもWell-beingに(満たされた状態で)働けること」です。日本は雇用や働き方についてとても多くの問題を抱えている国です。「Karoshi(過労死)」という言葉をご存じの方もいるかもしれませんが、違法な残業によって健康を損なう人も大勢いますし、男女の性別役割分業意識やジェンダーギャップもまだ強く残っています。もちろん若い世代の考え方は変わってきていますが、経営や管理職を担う年齢層の人の考え方が変わらないことで、希望するような働き方やライフスタイルを実現できない人が多くおり、そのせいで働くことがWell-beingを損なうことにつながっていると感じます。

私はそういった日本の雇用のあり方に課題を感じて、大学でも労働社会学を専攻しました。テレワークがジェンダーギャップや健康課題の解決策にならないかと考え、先進企業にインタビューなどを行ったこともあります。しかしその結果、一般的な企業のワーカーが実施することは「上司の視界に入る座席で、長い時間働くことが評価される」日本の労働文化がでは難しい、と当時は結論づけていました。まさか"ハイブリッドワーク"なる言葉が生まれたり、こんなにテレワークが広まったりするとは思いもしませんでした。柔軟な働き方が広まることで、ワーカー1人ひとりが、自分が望むような健康的な働き方や生活ができるようになって欲しいですし、そういった姿にここ数年で着実に近づいていると思います。

こちらのPodcastの本編、また他のエピソードをお聞きになりたい方は、ぜひ下記のリンクからアクセスし購読してください。

またVeldhoen + Companyと当社が提供するABWコンサルティングサービスでは、オフィス環境・IT環境の見直しと行動変容を三位一体となって進めることができます。ご関心を持たれた方は、ぜひ下記の資料をダウンロードしてください。

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ABWとは、最も生産性が高く働ける場所、時間、相手をワーカー自らが選択する、自由度・柔軟度の高い働き方のこと。ABWについて考え、もっと理解できるトピックスが盛りだくさんです。