目次
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J-クレジット制度とは
J-クレジット制度の基盤「カーボン・オフセット」の仕組み
J-クレジット制度の概要
J-クレジット制度の進化 - J-クレジットの3つの種類
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J-クレジットを購入するメリット
今後の規制強化への備え
企業価値の向上とブランディング
地域経済への貢献 - J-クレジットの購入方法
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J-クレジットの企業活用事例
製品・サービスへの環境付加価値
リース・レンタルサービスでの活用
大型施設・イベントでの活用
金融商品への組み込み - イトーキのJ-クレジット・プロバイダーサービス
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J-クレジット活用はイトーキにおまかせください
オフィス空間からの脱炭素アプローチ
カーボン・フットプリントで環境価値を見える化
ワンストップでの脱炭素ご支援
温室効果ガスの排出量と吸収・除去量を均衡させる「カーボンニュートラル」への取り組みは、今や企業の経営戦略として欠かせないものになっています。その実現手段の一つとして注目されているのが、「J-クレジット制度」です。この制度を活用することで、削減目標の達成に加え、ブランド価値の向上やESG評価の改善といった効果も期待できます。
本コラムでは、J-クレジット制度の基本的な仕組みから購入方法・メリット、活用例まで、わかりやすく解説します。
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J-クレジット制度とは
自社の努力だけでは削減しきれない、温室効果ガスの排出にどう向き合うかは、多くの企業が直面している問題です。こうした課題への対応策として、J-クレジット制度が2013年度に導入されました。
はじめに、この制度の基盤となるカーボン・オフセットの仕組みと、J-クレジット制度の概要、今後の展望について解説します。
J-クレジット制度の基盤「カーボン・オフセット」の仕組み
J-クレジットは、「カーボン・オフセット」という考え方に基づいて活用されます。カーボン・オフセットとは、企業活動で削減しきれない温室効果ガスを、クレジット購入などを通じて埋め合わせる取り組みです。
「知って(算定)、減らして(削減努力)、オフセット(埋め合わせ)」の3ステップで進め、最後のオフセット段階でクレジットを購入・活用します。
オフセットに使えるクレジットにはいくつかの種類がありますが、
国内でおもに流通しているのは日本政府が認証する「J-クレジット」です。
また、クレジットの利用にあたっては、信頼性を保つため、二重使用(ダブルカウント)を防ぎ適切に管理する必要があります。
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出典:「カーボン・オフセットガイドラインVer.3.0」(環境省)
J-クレジット制度の概要
J-クレジット制度は、省エネ設備の導入や再生可能エネルギーの活用、森林管理などで実現した温室効果ガスの削減量・吸収量を、国が「クレジット」として認証する仕組みです。
認証されたクレジットは売買が可能で、削減目標達成のために購入したり、余剰分を他の企業に売却して収入を得ることもできます。
この売買により、企業同士の削減活動が活発になり、国全体の脱炭素化が進みます。中小企業などの環境投資を促進し、国内で資金が循環することで、経済と環境の好循環を生み出している点も特徴です。
J-クレジットは国が認証していることから、地球温暖化対策の推進に関する法律への対応や国内企業間の取引で使いやすく実務的という理由で、現在多くの企業が活用しています。
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参考:「J-クレジット制度について」(関東経済産業局)
https://www.kanto.meti.go.jp/seisaku/sho_energy/data/r4_shoene_seminar20.pdf
J-クレジット制度の進化
国はこの制度を積極的に推進しており、プロジェクト登録や認証の手続きも整備され、多くの企業が参加しやすい環境が整ってきました。
近年では、デジタル技術の活用も進んでいます。経済産業省は2024年度にJ-クレジットのデジタル資産化(トークン化)に関する法的論点を整理したほか、環境省はブロックチェーンを用いた温室効果ガス排出量の測定、報告及び検証に対する支援を行うシステム(MRV支援システム)の実運用を開始しています。
デジタル化によって取引の透明性が高まり、小口での売買や効率的な流通が進むことで、クレジット市場はより身近で使いやすいものへと変化しています。
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参考:「カーボン・クレジット取引に関する金融インフラのあり方等に係る検討会 報告書」(金融庁)
https://www.fsa.go.jp/singi/carbon_credit/siryou/20250620/01.pdf
J-クレジットの3つの種類
J-クレジットは大きく分けて以下の3つに分類されます。企業がオフセットしたい排出量や、重視したい価値、目的によって、選ぶべきクレジットの種類は変わります。迷わないためにも、それぞれの特徴をおさえておきましょう。
【実務で使われるJ-クレジットの3タイプ】
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種類 |
詳細 |
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再生可能エネルギー由来 |
太陽光発電やバイオマスなどの再生可能エネルギー設備を導入することで生まれるクレジットです。国際的な環境イニシアチブ(企業の気候変動対策を評価・推進する枠組み。CDP・SBT・RE100など)への報告が求められる場合や、クリーンエネルギーの活用を対外的に訴求したい場合に向いています。 |
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省エネルギー設備由来 |
高効率ボイラー、LED照明、空調設備などの更新によって生まれるクレジットです。国際的な報告義務がなく、自社の環境活動実績を作りたい企業に選ばれています。 |
| 森林整備・管理由来 | 適切な森林管理によって、森林のCO2吸収量を維持・向上させることで生まれるクレジットです。生物多様性保全への貢献や、地域との連携を重視する企業、環境活動のストーリーを伝えたい企業に選ばれています。 |
なお、クレジットの価格は、需要と供給のバランスや規制の変更、国際報告への使用可否などの要件によって変動します。
J-クレジットを購入するメリット
J-クレジットの購入は、企業にとってどのようなメリットがあるのでしょうか。2026年度からの排出量取引制度の義務化を見据え、今から準備を始めることが重要になっています。
ここでは、規制対応だけでなく、実務面と戦略面の両方から、おもなメリットを3つご紹介します。
今後の規制強化への備え
2025年5月に改正GX推進法が成立し、CO2の直接排出量が年間10万トン以上(前年度までの3カ年度平均)の事業者には、2026年度から排出量取引制度への参加が義務化されます。対象企業には排出枠の保有が求められ、不足分はJ-クレジットなどで補うことが可能です。
J-クレジットの活用方法やノウハウを早めに知っておくことで、制度変更時もスムーズに対応できるようになります。
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参考:「排出量取引制度の詳細設計に向けた検討方針」(経済産業省)
https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/sangyo_gijutsu/emissions_trading/pdf/001_03_00.pdf
企業価値の向上とブランディング
J-クレジットを購入して環境への取り組みを進めることで、ESG(環境・社会・ガバナンス)対応の強化につながります。
環境貢献企業としてのPR効果だけでなく、取引先や顧客からの信頼構築、投資家などによるESG投資の選定でも有利になるという側面もあります。
地域経済への貢献
J-クレジットの購入代金は、クレジットを創出した企業や団体、自治体に還元されます。
全国各地で排出削減や環境保全に取り組む中小企業や地域プロジェクトに資金が流れることで、地域経済の活性化や新たなビジネスの創出に貢献します。
J-クレジットの購入方法
J-クレジットの購入方法は、おもに「相対取引(直接売買)」と「市場取引」があります。
【代表的なJ-クレジットの購入方法】
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購入方法 |
詳細 |
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相対取引 |
売り手と買い手が直接やり取りし、価格や数量、種類を交渉して決定する方式です。クレジットの創出者から直接購入する場合や、J-クレジットプロバイダー(専門事業者)を介して購入する場合も含まれます。企業の希望に合わせた柔軟な調整がしやすい点が魅力です。 |
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市場取引 |
売り手と買い手が市場を介して取引する方法です。2023年から東京証券取引所がカーボン・オフセット市場を開設しており、J-クレジットの売買が可能になりました。また、マーケットプレイスでも、J-クレジットの売買が可能です。 |
プロバイダーを活用すれば、目的・用途に合ったクレジットの選定から、購入手続き、各種報告の代行まで、幅広いサポートを受けられます。取引経験がない企業や初めてJ-クレジットに取り組む中小企業を中心に、プロバイダーを選ぶ企業が増えています。
また、市場取引では目的に合わせてさまざまなマーケットプレイスから調達することができます。企業の規模などに合わせて、最適な方法を選択することが重要です。
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参考:「J-クレジット制度パンフレット」(J-クレジット制度ホームページ)
J-クレジットの企業活用事例
J-クレジットは、企業の事業活動や製品・サービスなど、さまざまな場面で活用されています。ここでは、実際にどのような形でクレジットが使われているのか、代表的な事例を紹介します。
製品・サービスへの環境付加価値
企業は、自社が提供する製品やサービスにJ-クレジットを活用し、環境配慮型商品としての付加価値を高めることができます。
これは「製品・サービスオフセット」と呼ばれる取り組みで、製品の製造から輸送、使用、廃棄までの各段階で排出される温室効果ガスをクレジットで埋め合わせる仕組みです。
リース・レンタルサービスでの活用
リースやレンタルサービスにおいても、J-クレジットを組み込む動きが広がっています。
具体的には、リース事業者がノートパソコンなどの電子機器をリースする際、エンドユーザーが使用期間中に排出するCO2をクレジットで相殺する「環境配慮型リースサービス」などが提供されています。
大型施設・イベントでの活用
展示会場やビジネスセミナー会場などの大型施設において、使用電力を再エネ化することで、その会場を利用する出展者や参加企業にとっても環境配慮のアピールにつながります。会場全体での環境対策が、利用者の価値向上にも貢献する事例です。
金融商品への組み込み
投資信託の中には、運用報酬の一部でJ-クレジット(とくに森林由来のクレジット)を購入し、森林保全や気候変動対策に貢献する金融商品も登場しています。環境意識の高い投資家層に向けた、差別化商品として注目されています。
イトーキのJ-クレジット・プロバイダーサービス
イトーキは、J-クレジット制度の認定プロバイダーとして、企業の脱炭素経営を支援しています。オフィス家具・空間づくりで培ったノウハウを活かし、クレジット調達から活用までをワンストップでサポートしています。
【イトーキが提供するおもなサービス】
- 最適なカーボン・オフセットの企画立案
- 排出権の買い取り(すでに保有されているクレジットをイトーキが購入)
- 環境価値の提供(J-クレジットのほかにも、国内クレジットやJ-ver、非化石証書に対応)
- クレジット無効化処理の代行業務
- J-クレジットを活用した商品の開発ご支援
まずは、お客さまが削減を希望したい数量や、活用目的をヒアリングし、最適なクレジットの種類や量を提案します。その後、具体的なクレジットの選定と見積もりを行います。
また、価格変動への対応を含めた長期的なフォローが可能です。
【こちらもおすすめ】
J-クレジット活用はイトーキにおまかせください
カーボンニュートラルへの取り組みは一過性のものではなく、経営上の継続的な戦略として位置づける必要があります。
イトーキは、J-クレジットプロバイダーとしてのご支援はもちろんのこと、オフィス空間やオフィス家具からのアプローチも含めた、企業の脱炭素を総合的に支援します。
オフィス空間からの脱炭素アプローチ
イトーキは、環境に配慮したオフィスづくりを長年実践してきました。省エネルギー設備の導入提案から再生可能エネルギーの活用、働き方改革を通じた環境負荷の低減まで、オフィス空間全体での環境配慮を実現します。
自社でのCO2削減活動とJ-クレジット活用を組み合わせることで、より実効性の高い脱炭素戦略を構築できます。
カーボン・フットプリントで環境価値を見える化
イトーキでは、製品の原料調達から製造、輸送、使用、廃棄・リサイクルまでのライフサイクル全体で排出される温室効果ガスを「カーボン・フットプリント」として算定しています。
自社製品の算定で培ったノウハウを活かし、お客さまの製品やサービスにおけるカーボン・フットプリント算定からオフセット、カーボンニュートラル製品としての訴求まで対応します。
ワンストップでの脱炭素ご支援
J-クレジットの調達、カーボン・フットプリントの算定、環境配慮型オフィスの構築を、イトーキはワンストップで提供します。お客さまの事業特性や目標に合わせて、最適な脱炭素戦略を構築します。
J-クレジット制度の活用や環境に配慮したオフィスづくりをお考えの方は、ぜひお気軽にご相談ください!