多くのワーカーがコロナ禍により在宅ワークを余儀なくされ、働き方が大きく変わった2020年。緊急事態宣言解除後は、在宅ワークを継続する動きが見られたことで、オフィスを移転・縮小する企業も現れました。世界的にも働き方の模索がまだまだ続く中、イトーキの平井社長に、今の自身の働き方や「未来の働く場」について尋ねました。
—
取材・文 安楽由紀子
写真 中野正貴
「オフィス」とそれ以外、両方を使いこなす働き方
――コロナ禍でご自身の働き方は変わりましたか?
緊急事態宣言発令後、暫くは月の8割がたが在宅ワーク。今はその比率を3〜4割にしていますが、今回初めて経験してみて気づいたことがいろいろとあります。
――どんなことですか?
一言でいうと「結構できる」。役員のミーティングもウェブで問題なし。ただし対面に比べると、こなれてないせいもあるんでしょうが、お互いの考えをぶつけあったり、ブレストをしたりするときは、ちょっとうまくいかない。
――在宅とオフィス、それぞれ向いている場合とそうでない場合があるわけですね。
そうですね。これからは「オフィス」とそれ以外、僕たちは「ハイブリッド」と呼んでいるんですが、両方使いこなせる働き方を模索していくんでしょうね。そして個人の力を最大限発揮させるために、その選択は企業単位でなく個人単位で行うことになるでしょう。
僕は今、単身赴任中なんですが、働き方の自由度が広がったことで、例えば朝、掃除や洗濯をしてからゆったりと始業時間を迎えられるようになり、精神的にも楽になった。
一人暮らしの場合でさえそうなんだから、特に小さなお子さんがいたり共働きだったりする家庭にとっては、働き方を自らコントロールできる社会であることは、本当に重要なんだと改めて実感しましたね。
「オフィス不要論」はピンチでもありチャンスでもある
――オフィス家具メーカーとしてコロナ禍はどのような影響がありましたか。
今は、働き方やオフィスというものについて、それほど考えていなかった人たちも考えざるを得ない状況。結果として、働き方の多様化に拍車がかかりました。
オフィス不要論なんていうのも出てきていますね。オフィスがなくなり、机、椅子もいらないとなったら僕たちにとってはビジネス的なピンチ!
――そんな状況になるとは想像もできなかったですよね……。
でも言い換えれば、かつてないほど今は「働く場」が注目されている時代。オフィス不要論も、働き方が多様化していく過程のうちの一つでしょう。
実際、「オフィスのウィズコロナ対策を考えてほしい」「今後のオフィスのありかたを考えるパートナーとして、相談に乗ってほしい」というご依頼もたくさんいただいているので、中長期的に見て大きなチャンスにしていけるのではないかと思っています。
――確かに、今回のことで働き方や暮らしについて改めて見直した人が多かったと思います。
日本の会社の多くは、これまでトップダウン的に仕事を割り振って、各自にこなしてもらって成長してきました。でも今はもう、それでは成長が見込めないでしょう。答えのない状況の中で、働き方を自分で考えて選ぶように変えていくことが、日本の大きな課題ですね。
そういう意味においても、コロナ禍は人間の価値観、生き方そのものまで、大きく変える可能性をもたらした出来事だと思います。
次回は「これからの時代に求められる働く環境」についての話と、社長自身の在宅ワークの環境に迫ります!