2026年4月22日
品質を決める塗装技術の裏側。改善でメンバーを自走させる現場づくり
製品の最終的な品質と美しさを決める「塗装工程」。一分一秒の停滞も許されない、前線とも言える場所です。かつては「言われたことを着実にこなす」姿勢だった若き社員は、入社3年目の転機を境に、自ら塗装の前線に立つ覚悟を決めました。
生産を「止めない」という守りの姿勢から、現場起点で仕組みをアップデートする「改善」の攻めの姿勢へ。滋賀工場の品質を支える、一人の職人のプライドと挑戦のストーリーをお届けします。
生産本部
関西工場
滋賀第1製造部
製造2課
製造4係
塗装2班
班長
※2026年4月時点
中元 翔太
2018年、イトーキへ入社。一貫して、キャビネット工場の塗装工程に従事している。最初の2年間で塗装工程の基盤となる知識・技術を吸収。2020年頃から他社で経験を積んで入社した社員やグローバルな人材をはじめとした新たな仲間と共に塗装班を作り上げている。
※所属部署・役職・制度は取材当時のものとなります。現時点の情報と異なる場合があります。
Contents
塗装工程を背負い、前線に立ち続ける
中元さんの仕事を一言で言い表すことはできません。段取り、吊り込み※1、粉体塗装※2、品質管理、設備管理、人材育成、改善業務まで幅広く、塗装を担うチームのあらゆる業務が中元さんの指揮のもと行われています。
しかし、最初からすべてできたわけではありません。むしろ、はじめは言われたことを機械的にこなす方が、自分の性に合っていると考えていました。転機は、上司や仲間の休職や異動が重なった入社3年目の頃です。
「自分がやるしかない、そう思ったんです」。
その言葉に悲壮感はありません。そこにあるのは、塗装の前線に立ち続けることを選んだ“覚悟と誇り”です。自分たちで考え、試行錯誤しながら、生産を「止めない」方法をまずは模索し続けました。
- 吊り込み:塗装を行うために、製品や部品を専用の搬送ラインのフックにかける作業のこと。
- 粉体塗装:有機溶剤(シンナー等)を使わず、粉末状の塗料を静電気で付着させて焼き付ける塗装方法。
7000種類以上のパーツを見極めて、生産停滞を起こさないための工夫
塗装工程は単純な工程ではありません。段取りから今後の流れを予測しなければならず、一度吊り込んだのなら、決められた時間内で最後まで部材と伴走することが求められます。一つのミスが生産停滞につながりかねない工程です。
だからこそ、7000種類以上あるパーツを見極め、それぞれの特徴も頭に叩き込む必要がありました。闇雲に覚えるのではなく、共通項を見出しながら樹形図のように理解を進めていきます。
それでも、塗装途中で設備に不具合が起きることはあります。そのたび、他部門に助けてもらう有難さを感じる一方で、悔しさも残りました。「自分たちの工程を、自分たちだけで回せるようになりたい」。その一心で、現場に向き合ってきました。
仲間との対話で生まれた改善と、誰でもわかる「標準化」
やがて、意識は「止めない」だけでなく「改善」へと変化しました。吊り込みを素早く行うための環境づくりや、最適な塗装を考えること、設備の部品交換や調整を自ら行うこと。その一つひとつと向き合う中で、自分の気づきや工夫を、自然と仲間に伝える場面が増えていきました。
「必ず、マンツーマンで。その人の特性に合った教え方を心がけているんです」。
一人ひとりに向き合う中で、共通点も見えてきました。誰もが一度はつまずくポイントこそが、改善するべきポイントだと気づくことができたのです。誰でもわかる手順書へと落とし込んでいくことで、標準化が進んでいきました。
塗装工程の積み重ねられてきた挑戦と、失敗から得た経験は、中元さんにとって現場を強くするためのなによりの財産となっています。
現場起点で見つめ直す、塗装の価値
標準化が進むことで、誰が入っても工程が安定して回るようになってきました。「安心して任せてもらえること。それが信頼されたってことだと思います」。
仕組みが整ったことで、今度は一人ひとりの判断力や技術力が、よりはっきりと見えるようになってきました。塗装工程は、メンバー自ら設備の不具合に気づき、直すことができます。塗装ガンから塗料が噴出されないという状況であっても、「どこに原因があるか」を瞬時に見抜き、逆算できるのは設備そのものの理解が深いからです。
一部だけでなく、全体を把握することで分かることがある
現在、そうした現場の力を引き出し、束ねている中元さん。その中元さんが力を入れていることの一つが「段取り」です。製品の種類や工程を瞬時に見極め、最適な流れを組み立てることで作業時間は大幅に短縮できます。塗装工程のすべてに携わり、仲間にどんな業務を託す必要があるかまで見えている中元さんだからこそ、塗装工程全体の最適化が見えていました。
課題への挑戦が手応えに変わる。仲間と高め合う、塗装技術のさらなる深化
「ここまで来られたのは、周りの人が助けてくれたからです」。
現場で挑戦を続ける中元さんの背中を、支えてくれた仲間たち。その仲間と今後も歩み続けるため、中元さんは塗装技術のさらなる深化と周辺工程への知識拡大にも取り組んでいます。自分たちの塗装工程を深く理解するほど、外との比較が意味を持つようになってきました。
「他工程や他工場の塗装と比較することで、自分たちの強みにも改めて気づけると思うんです」。
中元さんの「自信」や「誇り」は、順調な成功体験から生まれたものではありません。
試行錯誤の連続の中で、困難から逃げずに向き合い続けてきた「時間」の積み重ね、そして多くの「経験」があるからこそ、今の中元さんが存在しています。
塗装工程を越え、工場全体へ。そのまなざしには、次の挑戦への決意が込められていました。
- 所属部署・役職・制度は取材当時のものとなります。現時点の情報と異なる場合があります。

