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ハイブリッドワークを難しくしている
"ハイブリッド会議"について考える

ハイブリッドワークを難しくしているハイブリッド会議について考える

前回は、グローバル製薬会社の事例をもとに、ハイブリッドワークを成功させる3つのポイントについてお話ししました。今回はVeldhoen + Companyのコンサルタントが今年3月にシンガポールの人事系専門機関IHRPと共同開催したウェビナー「Essentials for highly effective hybrid teams(非常に効果的なハイブリッドチームに不可欠なものとは?)」の内容を一部ご紹介しつつ、ハイブリッドワークについて、さらに深掘りしたいと思います。また、ウェビナーに参加されたさまざまな企業の方がハイブリッドワークの課題に対してどのような取り組みをされているかもアンケートでヒヤリングされていましたので、現場の声の中から実践できそうなものをいくつかご紹介したいと思います。

ハイブリッドワークの色々なカタチ

なぜハイブリッドワークを深掘りするのか。それは、一括りでハイブリッドワークと言っても、「出社志向」、「チーム志向」、「選択肢志向」(※1)とさまざまなパターンがあるからです。新型コロナウイルスが流行し始めてから早くも3年目ですが、イトーキでは「週に何日オフィスで働くのが良いのか、何を基準に在宅勤務日を決めるべきなのか、なかなか自分たちだけでは決められない」というご相談を受けることが非常に増えました。また、企業としてのビジョンと、個人の希望との最適なバランスを見つけるのは難しい、という困りごとも良く耳にします。

3つのハイブリッドモデルと非ハイブリッドモデルの比較

ハイブリッドワークに悩みはつきもの?

一旦、企業としての方針が決まっても、実際にハイブリッドワークを始めてみるとまた違う壁にぶつかります。たとえば、コロナ禍に入社したワーカーは採用面接だけでなく、入社後の研修やOJTもオンラインが中心だったため、コロナ前のワーカーと比べて、企業や他のワーカーとのつながりが薄く、孤独感を抱えていると言われています。また、「リモートワークで企業や人とのつながりが減った。だからオンラインでの雑談を設けるべきだ」という記事も目にします。実際、コロナによるGoogle Meetの利用者は3か月間で30倍近く増加(※2)し、Microsoft Teamsも一人当たりの会議件数が150%増えた(※3)という数字を明らかにしています。「ハイブリッドワークになって会議の数が増えてしまい、本来の業務がなかなか進まない。」と悩んでいらっしゃる方も少なくないのではないでしょうか。

ハイブリッドワークで問われるコミュニケーションスキル

こうして見ると、ハイブリッドワークの課題はコミュニケーションに関係するものが多いように思います。ハイブリッドワークでのコミュニケーションは難しい。それはなぜでしょうか。ウェビナーの中では次のように述べられています。

  • 物理的な距離が生じると(対面時には得られていた)豊富な情報が失われてしまう
  • 私たち人間は、相手が見えないと最悪の状況を想定する性質がある
  • 私たち人間は、遠くにいる人より近くにいる人を大事だと思う傾向があり、それはとても自然なことである

このように、私たちが元々生まれ持った性質が影響しているのであれば、多くの人がハイブリッドワークを難しいと感じている理由も納得できます。特にコロナ禍は先述のとおり、対面での会議を避け、オンライン会議を実施することが多く、参加者がカメラをオフにすると相手の表情やボディランゲージが見えづらく、空気を読むのが難しくなります。そもそも、日本はローコンテクスト文化であり、ダイレクトな言い回しを避ける傾向がありますので、曖昧な話し方が誤解を生むことも。また、参加者全員がリモートで参加するオンライン会議ではなく、一部のワーカーはオフィスに集まり、一部のワーカーはリモートで参加する、といった"ハイブリッド会議"ではより明確なコミュニケーションが求められます。

ハイブリッド会議の"あるある"

今後もハイブリッドワークが続く中、ハイブリッド会議を避けて通れないのであれば、効率的に行いたいもの。そこで、特別なITツールの導入をする必要はなく、今日から実践できるハイブリッド会議のコツをご紹介します。参加者のカメラをオンにしてもらう、アジェンダやプレゼン資料を事前に共有しておく、といったことはハイブリッド会議に関わらず、これまでも会議の事前準備として多くの方が行ってきたかと思いますが、ハイブリッド会議をするようになってから、気づくと会議中に一部のメンバーだけで別の会話が行われている、ということはないでしょうか。そういう場合には、放置せずに全員で行っている本来の会議の議題に集中してもらえるよう声をかけると良いでしょう。

そもそも、管理職の方は会議だけで1日が終わってしまうということもあります。招待メールを受け取ったら機械的に承諾せず、本当に参加する必要があるのか、ちょっと手を止めて考えてみてはいかがでしょうか。実は「絶対に会議が必要だ!」というものは限られています。たとえば、プロジェクトを進める上でアイデア出しが必要という場合、安直に会議を設定せず、オンラインでブレストができるツールを使ってみるのも一案です。会議の数を減らすことができないかどうか、ルーチンのように実施していた会議のあり方を見直してみましょう。

全員のEquity(平等性)を実現する

最後に挙げますが軽んじるべきではないのは、リモート参加者に先に発言してもらう、という気配りです。これは、ささいなことですが、実は大きな効果が期待できます。特にオフィスから参加しているメンバーの方が多く、リモート参加者が少ない場合は、どうしてもオフィスでの発言力が強くなってしまいがちです。こうした場合、ファシリテーターが意図的にリモート参加者に先に話題を振り、物理的にオフィスにいなくても確実に会話に参加できるようにすることをお勧めします。会議での平等性がリモート参加者へのエンゲージメントにもつながり、その後の会議の生産性も高まる可能性があります。

本当に重要なのはマインドセットを変えること

ウェビナーに参加された方の取り組みの中には、月に1回「Ask Me Anythings(遠慮せずになんでも質問してね!)」というコンセプトの会議を設定し、センシティブな質問や答えづらい質問もウェルカムな雰囲気を作っている企業があったり、個々の好きなタイミングで参加できるリモートでのコワークタイムを設け、「オフィスで一緒に働いているような感覚」を持ちながら業務ができる機会を設けている、というところもありました。

働く場所が変わった今、私たちの働き方や仕事に対するマインドセットも変えていく必要があります。「やらなければならない」と後ろ向きに考えず、企業や自身にとって成長する良い機会として捉えてみると、何かしら得るものがあるはずです。オンライン会議疲れの方もいると思いますが、このコラムを読んだ直後の会議では、ぜひ気分を一新して、より効果的なハイブリッドワークに挑戦してみてください。 Tough times bring opportunity!

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ABWとは、最も生産性が高く働ける場所、時間、相手をワーカー自らが選択する、自由度・柔軟度の高い働き方のこと。ABWについて考え、もっと理解できるトピックスが盛りだくさんです。