多くのワーカーがコロナ禍により在宅ワークを余儀なくされ、働き方が大きく変わった2020年。緊急事態解除宣言後は、在宅ワークを継続する動きが見られたことで、オフィスを移転・縮小する企業も現れました。オフィス家具メーカー・イトーキの平井社長が考える「未来の働く場」の第3弾。
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取材・文 安楽由紀子
写真 中野正貴
日曜日の夜に「明日の朝、早く来ないかな」と思える世界を作りたい
――自宅で仕事をしていると運動不足になりがちです。心がけていることはありますか?
社長室には電動上下昇降デスク「toiro(トイロ)」があり、立って仕事をすることが多いのですが、自宅にはないので毎朝30分から1時間近く歩いていました。家に戻ってシャワーを浴びて「さあ、仕事だ」といってもまだ8時くらい。時間の融通もきくところがテレワークのいいところですね。
――心の健康面についてはどうですか?
ある方は「働くとは、時間とストレスの換金作業だ」とおっしゃっていました。でも本来は個人も企業も、そして社会も幸せになるために働くのだと思う。日曜日の夜に「明日の朝、早く来ないかな」と思える世界をどうやったら作れるか。まずは自社から働き方をダイナミックに変えていこうと考えているところです。青臭い話に聞こえるかもしれないけど、経営者がそういうことに正面から向き合い、真剣に語らなければならない時代が来たと思います。
イトーキ提供
働くことが楽しいと、イノベーションも起きる
――働くことを楽しい時間に。いいですね。
他者からコントロールされる仕事はしんどいですよね。でも自ら仕事をコントロールできると、責任は伴うけどやりがいももてるし、夢中になれるんじゃないでしょうか。そして、働くことを楽しめるようになれば、もっと活力ある社会になると思う。ワクワクしないと新しい発想は生まれない。「こんなことを言ったら叱られるんじゃないか」とビクビクするのではなく、新入社員でも堂々と意見を言えるような場を作ることがイノベーションを生み出す源泉になるのではないでしょうか。
――楽しんで働くことをサポートできるといいですね。
2018年にイトーキは、東京の日本橋に新本社オフィス「ITOKI TOKYO XORK(イトーキ・トウキョウ・ゾーク)」をオープンさせました。ここは「ABW(Activity Based Working=個々の活動に応じて、自律的にワークプレイスを使い分ける働き方)」を実践しています。どこで、どのように働くか、自己裁量で毎日デザインしていく働き方です。コロナ禍で働き方を自ら選択することがより求められるようになったので、この取り組みに手応えを感じています。
――働き方を自ら選択できたら、仕事も楽しめそうです。
そのためのキーワードは「自律」「主体性」です。仕事を楽しむことが人生の幸せにつながるし、そのほうがパフォーマンスは間違いなく上がるはず。働くことを楽しめる世界は、自分一人ではできません。企業や社会みんなで理解し協力しあって、時には愚痴も聞きながら励ましあって共創していく。そういう世界をイトーキはつくりたいと思います。
イトーキ提供