「工事区分」という言葉をご存知ですか?A工事・B工事・C工事はなんとなく聞いたことがあっても、それぞれどう違うのか、テナントはどこまで負担するのかなど、詳しく知りたい方も多いのではないでしょうか。
本コラムでは、オフィス移転や改修の際に発生する工事の区分について、それぞれの特徴や注意点などをわかりやすく解説していきます。
工事区分とは(発注・費用負担・業者指定の対象による分類)
工事区分とは、工事の発注者、施工者、費用負担者を明確にするための取り決めのことです。
「誰が工事を発注するのか」「誰が工事費用を負担するのか」「誰が工事業者を指定するのか」という3つの観点から、一般的には以下のように分類されます。
【A工事・B工事・C工事の区分表】
発注者 |
費用負担者 |
工事業者指定 |
対象工事例 | |
A工事 |
オーナー |
オーナー |
オーナー |
ビルの外壁、エレベーター、共用トイレなど |
B工事 |
テナント |
テナント |
オーナー |
間仕切り、内装仕上げ、空調設備、電源工事、給排水工事など |
C工事 | テナント | テナント | テナント | 家具の設置、LANの配線など |
この工事区分については、賃貸契約書または特約の「工事区分表」というものに明記されています。契約によっては上記の通りでないこともあるため、オフィス移転や改修を検討する際には、必ず確認しておくべき重要な情報です。
各工事区分の詳細と工事対象の違い
それでは、各工事区分について詳しく見ていきましょう。
A工事:ビルオーナーが費用負担する、建物全体に関わる工事
A工事は、建物の外装やエレベーターなど、おもに建物の共用部分や躯体(くたい:基礎や柱などの建物全体を支える構造上重要な部分)に関わる工事です。貸主であるオーナーが指定の工事業者へ発注をして、費用を負担します。
【A工事の主な対象】
- ビルの外壁、内壁や屋上の工事
- エレベーター工事
- 共用トイレ工事
- 階段や共用通路の工事
- 共用部分や建物全体に関わる消防設備工事
- 共用部分や建物全体に関わる給排水設備工事
◇ ◇ ◇
テナントとして入居する際は、基本的に借主側が直接A工事に関わるケースは少ないでしょう。
入居前に要望や懸念事項がある際は、契約締結前にオーナーに相談して必要な工事をお願いすることが可能な場合もあります。ただし、上記の対象でもテナントの要望で行わなれる工事については、テナント側が費用負担するB工事になるケースが多いので、契約時の相談と確認が必須です。
B工事:テナントが費用負担しオーナーが業者指定する、建物全体に関わる工事
B工事はおもにテナント専有部分の中で、建物全体に影響を与える可能性のある工事です。
【B工事の主な対象】
- 空調設備工事
- 電気設備工事(分電盤、配線、照明など)
- 主にテナント内の防災設備工事
- 主にテナント内の給排水設備工事
- 間仕切り壁工事
- 内装仕上げ工事(クロス、カーペット、塗装など)
◇ ◇ ◇
B工事では、費用についてはテナントが負担しますが、工事業者の選定や価格交渉に関してはオーナー側との調整が必要となる場合がほとんどです。コスト管理をするには、事前に十分な情報収集と計画を立てることが重要です。
共用部分の工事であってもテナント側が要望する場合はB工事に含まれたり、移転前のビルとは各工事の定義が異なる場合があります。事前によく確認しましょう。
C工事:テナントが主体となって行う内装工事
C工事は、テナントが主体となって行う専有部分の工事のうち、建物全体に影響を及ぼさない内装工事やオフィス家具・設備の設置工事になります。
【C工事の主な対象】
- 造作家具工事
- オフィス家具の設置
- OA機器の設置
- 照明器具の設置(配線、ビル標準の照明を除く)
- LANなどの通信設備工事
◇ ◇ ◇
C工事ではテナントが工事業者を選択できるため、コストコントロールがしやすく、テナントの意向を最大限に反映させたオフィスづくりが可能です。ただし、工事を実施する際はビルの工事条件を守り、事前にオーナーの承認を得た上で開始する必要があります。
各工事区分における注意点とトラブル回避策
工事区分の特徴を理解したところで、次はオフィス移転や改修を実際に進める際の注意点やトラブルを回避するためのポイントについて、各工事区分別に見ていきましょう。
A工事の注意点
A工事は主にビルオーナーが責任を持つ工事ですが、テナントとしても以下の点に注意が必要です。
専有部分の設備確認
テナント専有部分であっても、入居開始時点で既に設置されている設備(空調設備や照明器具など)がA工事の対象となる場合があります。これらの設備の修繕や更新についても、オーナー負担となる可能性があるため、事前に確認しておきましょう。
契約書の精査
賃貸借契約書の内容を詳細に確認し、A工事の範囲や条件について明確に理解しておきましょう。不明点や疑問点があれば、必ずオーナーに直接問い合わせて確認することが大切です。
共用部分の工事への配慮
エレベーターや共用トイレなどの共用部分のA工事は、テナントの事業活動に影響を与える可能性があります。これらの工事予定についても把握し、必要に応じて従業員や来客への案内を行いましょう。
B工事の注意点
B工事はテナントが費用を負担しますが、オーナー指定の業者が行うため、以下の点に特に注意が必要です。
工期の管理
B工事における見積もりの取得には思った以上の時間がかかるため、当初設定していたスケジュールよりも着工が後ろ倒しになってしまうことも。余裕を持たせたスケジュール設定が大切です。
オーナー指定の業者が施工する都合上、同じビルで同じタイミングにB工事が発生する際には工期に影響が出ることもあります。
また、給排水設備工事などは、予期せぬ問題が発生し、工期が延長してしまう可能性があります。スケジュールにはあらかじめ十分な余裕を持たせ、遅延による影響を最小限に抑えられるように準備をしておきましょう。
予算管理の難しさ
業者選定の自由がないため、コスト管理が難しくなります。オーナーとの事前協議を十分に行い、工事の詳細や費用、スケジュールについて明確な合意を得ておくようにしましょう。
仕様の確認
オーナー指定の業者が行う工事だからこそ、テナントの要望や必要性を明確に伝えることが重要です。使用する材料や設備の品質、デザインなどについても、事前に確認しておきましょう。
変更・追加工事への対応
工事開始後に変更や追加が必要になった場合の手続きや費用負担について、事前にオーナーと話し合っておきましょう。
近隣テナントへの配慮
B工事が他のテナントに影響を与える可能性がある場合(騒音や振動など)、事前の告知や工事時間の調整など、オーナーと協力して適切な対策を講じる必要があります。
原状回復費用の確認
退去時の原状回復費用はテナント負担になる可能性が高いため、事前に確認し、予算を見積もっておくことが重要です。特に、特殊な内装や設備を導入する場合は、将来の原状回復コストを考慮に入れて計画を立てましょう。
C工事の注意点
テナント主導のC工事を行う際は、以下の点に注意しましょう。
スケジュール管理
C工事のスケジュールが他の工事(A工事やB工事)と重複しないよう、全体の工程を把握し、適切に管理しましょう。
他の工事も含めたスケジュール設定は専門的な知識が必要な場面もあるため、自社での管理が難しい場合はプロジェクトマネジメントを外注するのも一案です。
【こちらもおすすめ】
ビルの規定遵守
テナントの意向で工事を進められますが、ビルの規定や承認手続きには必ず従う必要があります。工事開始前に、ビルの管理規約や工事に関する制限事項を十分に確認しましょう。
品質管理
C工事は自社で業者を選定できるため、適切な品質管理が求められます。信頼できる業者の選定や、工事中の定期的な確認、完了後の検収など、品質を確保するための施策が必要です。
近隣テナントへの配慮
B工事と同じく、事前の告知や工事時間の調整など、近隣テナントに配慮し適切な対策を講じましょう。
オフィス移転や改修のスムーズな進行なら、イトーキにお任せください!
オフィスの移転や改修をスムーズに進めるには、3つの工事区分を正しく理解し、適切な計画を立てることが重要です。ただし、経験が少ない方にとっては、やや複雑で難しく感じられることもあるでしょう。
イトーキでは、長年の経験と豊富な実績を活かし、オフィス移転や改修のプロジェクトを総合的にサポートいたします。移転先の選定から計画、各種申請、ビル側との交渉、工事、引っ越し、原状回復工事まで、プロジェクト全体をワンストップでご支援します。
プロジェクトの進行に不安があっても大丈夫です。詳しくは、プロジェクトマネジメントのページをご覧ください。先を見据えた進行管理を行い、プロジェクトのスタートからゴールまでを万全に先導。業務負荷を劇的に軽減いたします!