2025年11月11日
“素材”が違っても1色に統一したい。人気チェアLevi ワントーンタイプ製造秘話
2018年発売のイトーキ人気チェアシリーズ「Levi(レヴィ)」が2024年秋にリニューアル。テーマはワントーンカラー。座面・キャスター脚・背もたれまで色を統一するという挑戦に、開発・技術・製造・資材、それぞれの立場から多くの工夫が注がれました。現場の度重なる試行錯誤とチームの力で完成した「Levi ワントーンタイプ」誕生の裏側に迫ります。
生産本部 開発設計統括部 第1開発設計部 チェア開発設計室
岡野 陽輔(開発)
生産本部 関西工場 滋賀第2製造部 生産技術課
國見 雅也(技術)
生産本部 関西工場 滋賀第2製造部 製造課
下村 仁(製造)
生産本部 関西工場 滋賀第2製造部 工務課
野村 克彦(資材)
生産本部 開発設計統括部 第1開発設計部 チェア開発設計室
網浦 愛理子(インタビュー)
1色にすることは思った以上に難しい......
網浦−−− 2024年12月に発売開始した「Levi ワントーンタイプ」。みなさんの役割とこだわりポイントを教えてください。
岡野(開発):2018年に発売を開始した『Levi』は、シンプルな色合いと快適な座り心地でお客様より高い評価をいただいていました。リニューアルでは、テーブルとチェアの色が一体となった空間をつくる社内の取り組みが始まり、座面、キャスター脚、背もたれの色を統一することになりました。デザインも一部変更となり、私は企画部門と製造部門の間に立ち、設計や工程の変更を担当しました。特にリニューアルで新調したガスシリンダーの設計には苦労しました。
野村(資材):私は資材担当として、求められる色を再現すべく、塗料の仕入れに奔走しました。その中で異なる素材の色を合わせるというのは、とても苦労したポイントです。調達先の製造パートナーには色味の細かい部分まで調整いただきましたね。
國見(技術):製造の工程で大きく変わったのはチェアの高さを調整するガスシリンダーです。チェアの外観をすっきり見せるため、キャスターの外径を10mm小さくすることに。そこでガスシリンダーの基準位置を下げ、座面の位置を調節することにしました。加工方法を変える必要があり、試行錯誤したのは良い思い出です。
下村(製造):私はチェアの肘掛けや脚の部分の着色を担当しました。 新しい色への挑戦となり、温度や湿度によって色の出方も変わるので、思い通りの色を出すのに苦労しました。何度も試して、最終的に納得できる色に仕上がったときは、本当に嬉しかったです。
網浦−−−形状が同じように見えても、開発の苦労がたくさんあったんですね……!
キャスターを小さくすることでユーザーの皆さんに「高さが違う?」と違和感を与えることにつながってしまう……。10mmの差を埋めるために試行錯誤し、ガスシリンダーの高さを調整しました!
感動の連続!短期間での開発を支えた加工機器の改良
網浦−−−短期間での開発だったと聞きました。どんな工夫がありましたか?
岡野(開発):部品の色やトーンを揃えるということ自体が初めての経験でした。冬に企画が始まり、春に問題が見つかって3ヶ月ほど悩みました。ガスシリンダーのテーパー部分は、最適解にたどり着くまで時間がかかり、後の製造担当者にはスケジュールの調整にかなり協力してもらったのを覚えています。
國見(技術):そうですね。問題が見つかってから一番悩んだ部分でした。これまで加工したことのある既存品は外径が50.2mmのものしかありません。新しいLeviは50mm。そのわずかな差が加工時にうまくいかず、50mmの外径に合わせた治具(※)を作るため奔走しました。大変な作業でしたが、なんとか仕上げたいという思いはみんな一致していましたね。設計や製造を担当してくれた仲間には感謝しています。
岡野(開発):治具ができたときは、「こんなことができるなんてすごい!」とみんなで感動しました。効率化にもつながり、チームの力を実感しましたね。
※ 治具(じぐ):製造や加工の現場で部品を固定したり位置決めを行ったりするための専用の器具や装置
新しいLevi を作るために工場も進化。ガスシリンダーの加工治具を改良し、取り外し可能でいろいろな形状に対応できるように!塗装の現場には、量産が始まると塗料がずらりと並びます。
野村(資材):塗料調達でも、塗料を仕入れているパートナーに色の調整をお願いしました。色は樹脂の素材に合わせており、その微調整に苦労しました。「もう少しだけ明るくしてほしい」「色を少しだけ薄く」 など、電話だけでなく対面でより具体的に伝えることで意思疎通がスムーズになり、細かな要望にも応じてくれるようになりました。その結果、より一丸となって実現できたと感じています。
下村(製造):新色はどんな色になるか未知数で、乾くと色がわずかに変わってしまうため調整が難しく、とても悩みました。しかし、試行錯誤を重ねるうちにコツを掴み、正確に色を調整することができるようになりました。
網浦−−−治具の開発、新しい色の追加にそんな苦労があったのですね!
ワントーンのLeviは想像以上の仕上がりに!
網浦−−−作り手側だからこそ注目してほしい、「Leviワントーン」のジマンを教えてください!
岡野(開発):ワントーンで並んだチェアを見た瞬間、「こんなに綺麗な空間になるのか」と驚きました。
下村(製造):樹脂パーツと塗装が完全に一致しているのを見て、素材は違ってもワントーンで仕上げることができるんだと、感動しました。
野村(資材):色が統一されたチェアはこんなに印象が変わるものなのか......と感動しました。そして、この色を実現できたのはパートナーも一丸となって実現してくれたからこそ。 完成した後には感謝の気持ちを伝えました。
岡野(開発):ガスシリンダーを見る人は少ないと思いますが、細部までこだわった工夫をぜひ見ていただきたいですね。デザインが洗練され、綺麗なワントーンに仕上がっています。オフィスにあると自然に溶け込み、安心感が出ると思います。
既存品と見比べてみると……居心地のいいオフィスにぴったりの4色が揃い踏み!
左画像:Levi
ワントーンタイプ(左)と既存品(右)
下村(製造):完成したチェアを見て、色を統一させることで生まれた新たな付加価値を実感しています。塗料の種類が増え、製造にひと手間加えることが「お客様に新しい可能性を提供できる」という自信になりました。
2024年12月に発売された「Levi ワントーン」。ワントーンで仕上げたデザインが、空間全体に調和と落ち着きをもたらします。座るたびに感じる安心感を、ぜひ体感してみてください。
※所属部署・役職・制度は取材当時のものとなります。現時点の情報と異なる場合があります。

