品質を支える熟練技術の裏側。失敗できない高度なTIG溶接を担う製造のプロフェッショナル

2025年9月29日

品質を支える熟練技術の裏側。失敗できない高度なTIG溶接を担う製造のプロフェッショナル

イトーキ関東工場でただ一人、高度なTIG溶接を担う職人、中山幸三さん。溶接の質を守り、失敗を糧に技術を磨き、細かな積み重ねで品質を追求し続けるプロフェッショナルな仕事術に迫ります。

千葉製造部 製造課 /関東工場

中山 幸三

2005年に入社。2008年の関東工場設立に伴い京都工場から異動。パーティションやパネル、ドアの製造に従事している。ABC班として切断、曲げ、溶接を中心に自動ラインの管理にも取り組んでいる。

アルミを接ぐTIG溶接の “目と感覚”

関東工場に鳴り響く甲高い溶接音。それは中山さんが可動間仕切り「ADRED(アドレッド)」の下部フレームをTIG溶接(不活性ガスで火花と散らさずに美しく溶接する技術)している証です。イトーキの製品の中でも高級品であるアドレッドは、軽量化のためにアルミ材を採用しており、溶接には高い技術が求められます。

アルミは熱の伝わりやすさや溶け方の特性から、溶接棒が溶け込みにくいほか、穴が開きやすいなど扱いが難しい素材です。鉄と異なり一度表面が溶けると修正が困難なため、溶接には繊細な目と感覚が必要になります。関東工場でTIG溶接を行えるのは中山さんただ一人であり、その責任は大きいといいます。

「溶接棒を入れる角度には理想があり、それを見極めるのは自分の目と感覚です」そうはっきりと語る中山さん。

その日の微細な温度でも溶け具合は変わるため、慎重にアルミの膨張率を考えながら黙々とアルミを接ぎます。京都工場で触れた経験が基礎となり、本格的に取り組み始めてから約10年、技術を自分のものにしてきました。

とにかくできるまで繰り返すことが中山さんの流儀。関東工場に来たばかりの頃、とあるパネルの穴開けで上下左右を逆に開けてしまい、数十枚のパネルを作り直す事態に。関東工場だけでは納期が間に合わず、他工場の協力を仰いだ経験があります。原因はプログラム設定のミスでしたが、この苦い経験からこだわりを持って仕事をするようになったといいます。

「失敗したくない。その気持ちから、TIG溶接を始めた頃は隙間時間で毎日のように練習していましたね」。失敗を経て、ものづくりのこだわりが一層深まった中山さんは見た目にもこだわります。
アドレッドの下部は上にカバーが装着されるので、外見から中山さんの加工したプレートは見えない部分ですが、それでもものづくりに携わる職人の一人として、接ぎ目を目立たせないよう仕上げにこだわります。

ある特注オーダーでは、通常90度で溶接するところを80度での仕上げが求められ、標準の治具が使えない状況でした。中山さんはこれまでの経験を活かし、フレームのクランプ位置や合わせ面の計算を綿密に行い、図面通りに仕上げることができました。これは中山さんにとって大きな自信となった出来事です。

関東工場の溶接の“質”を守る技術

中山さんが仕事をする上で大切にしてきたことは「何事にも挑戦すること」です。京都にいた頃、少しだけ溶接に触れた経験が今に活きていると語ります。今は直接関係ないかもしれない知識や技術でも積極的に学ぶ大切さを誰よりも知っています。ゆくゆくは溶接の仕事も後輩たちに受け継ぎ、関東工場の溶接の“質”を守るため、溶接品質を維持・向上しながら継承したいと語ります。

何事にも挑戦することの大切さを背中で伝え。そんな中山さんの向上心は尽きません。溶接以外でも仕事の幅を広げるべく、今は汎用ラインでのベンダー加工技術の習得にも意欲を見せています。

「数年前に導入したパネルベンダーを取り扱えるようになりたいです。そうして工場全体の生産性を高める一助になりたい」。溶接の片手間でやるのではなく、やるならとことん向き合う。その姿勢が自信にもつながっていきます。溶接を含め、やるならとことん向き合う姿勢が中山さんの仕事の流儀です。その確かな誇りを胸に今日も黙々と仕事に励んでいます。

中山さんの愛用品

チッピングハンマーと金たわし

TIG溶接前に台の上をきれいにする金たわし、フレームの位置を調節するチッピングハンマーは溶接に携わってからずっと同じものを使い続けています。週1回は欠かさず手入れしているといい、中山さんは「僕にとってのパートナー」と大事そうに見つめます。

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