山梨県の南西部に位置し、南アルプスの山々に囲まれた早川町は、町の面積の96%が森林であり、人口1,067人(2016年11月現在)の "日本一小さな町"。2016年3月、築50年以上を経た旧庁舎を建て替え、新庁舎が竣工した。「新しい地域文化の核」「人々が交流する場」「地域のシンボル」としての新庁舎の完成を目指し、ワークショップ、住民インタビュー、現場見学会等、設計段階から様々な世代の町民が参加してもらい、地域の木材を活用することで、"早川町らしさ" を追求した、長年にわたり愛される「早川町らしい庁舎」となった。

ロビー
ロビー
1階風除室からロビーを見る。来訪者エリアのフローリング、天井ルーバー、壁ボーダー、巾木といった内装材、カウンター、ベンチ、パンフレット棚などの家具はすべて地域の木材を活用。一方で執務エリアでは木は用いず機能性を高め、バランスをとっている

町長室
町長室
町長室にも地域材による家具(バルベティオ)を設置

会議室
会議室
2階大会議室。フローリングや天井ルーバー、壁ボーダー、巾木など内装材に地域の木材を活用した大空間。2階は構造も木造となっている
Comment
今回の新庁舎建設に向けて、早川町のパートナーとして各担当メンバーが連携しながら携わらせて頂きました。基本計画策定のアドバイザーに始まり、町民へのインタビュー、木材を活用した内装計画・家具計画まで幅広いお手伝いをさせて頂きました。
すべての根底は、"早川町らしさ" の追求であり、町民などの利用者がどのようにしたら親しみを持ってもらえるか、ということでした。地場の木を使うことでひとつ目的を果たせますが、そこにプラスする要素が必要だと考え、身近にある "風景" や "地元の資源" を積極的に取り入れました。木材はサイズの違う部材、異なる色や樹種を組み合わせて構成し、木が元々持っている木目や色が認識できるようにシンプルにデザインし、木の良さが町民をはじめ訪れた人々に伝わるように心がけました。一方では職員の働きやすさや効率性なども重視し、お客様と密にコミュニケーションをとりながら設計し、機能的にも優れた庁舎となったと感じています。
今回のプロジェクトは、建築設計者とオフィス・家具設計者とが目指すところが共通して明確であり、コンセプトに対して一貫性を持って、お客様と共に取り組めた成果が出たと感じております。
Director
小島 勇
Isam Kojima