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いち早く柔軟な働き方を導入したから分かる、IT環境整備とトレーニングの重要性

いち早く柔軟な働き方を導入したから分かる、IT環境整備とトレーニングの重要性

「働き方を変える」というのは言うは易く行うは難し、テレワークや在宅勤務の導入を通じて、そのようにお感じになられている方も多いのではないでしょうか。働き方を変えるために立ちはだかる課題には複合的なものが多く、様々な施策を同時並行で進めていく必要があります。こちらの記事でもご紹介しました通り、私たちは「空間」「IT」「行動」という3つの領域で取り組みを整理しています。もちろん「空間」はその企業の「働き方」やその背景にある「ビジョン」を目に見える形で表しており、それを変えることはそこで働くワーカーにも大きな影響を及ぼしますが、残念ながら「IT」や「行動」が追いついていないと、「空間」のポテンシャルは十分に発揮されず、働き方の変革も思ったようには進みません。私たちは2018年からABW(Activity Based Working)という柔軟な働き方を、日本での先駆けとして実践し始めたことで、その事実をあらためて痛感しており、今もなおその難しさと向き合い続けています。

特に業務やコミュニケーションのデジタル化が進み、DX(デジタルトランスフォーメーション)の必要性も叫ばれるいま、IT環境は働き方とかなり密接に関連してきます。このコラムでは東京本社「ITOKI TOKYO XORK」での取り組みやサーベイの結果などをご紹介します。これから大きく働き方を変えようと検討されている方へのヒントになれば幸いです。

まずは社員を紙から解放した

新たな東京本社の構築にあたっては、本気で自己裁量をベースとしたモバイルな働き方を実践することを企業として決めていました。そのために必要なことは、紙に頼り切った業務フローを変革すること。移転前、早々に各部門には「新本社には、原則紙の書類用のキャビネットは置かない」と通達し、約6ヶ月間で業務フローの再検討や既存の紙資料の処分・スキャンを実施しました。申請書の類は電子決裁のシステムに載せました。容量無制限のクラウドストレージの使用を促し、どうしても保管が必要な書類については、大量の書類を高速でスキャンできる機械も設置し電子化を促しました。その結果、執務室内のキャビネットの本数は移転前と比較して5分の1になり、そのほとんどは書類ではなく備品の保管に使用しています。

また社員の業務用パソコンは以前から原則シンクライアント化していましたが、端末自体の重量がネックになっていました。それらを置き換え、社員が持ち運びに負担を感じないようにしました。また紙を使用しないことを前提とすれば、「資料にメモをする」という行為も紙ベースではできなくなります。希望部門・希望者にはipad・Apple pencilを配布し、資料の閲覧や書き込みがデジタルでできるような環境を整えました。自席もありませんので、スマートフォンは1人1台配布しています。率直に申しまして、ITデバイスにはかなりの投資をしました。

まずは社員を紙から解放した

移転前からこのように力を入れて取り組んだペーパーレスでの取り組みによって、現在は本社の85%のワーカーが、基本的にはデジタルベースで業務を行っています。これは移転前から比較すると十分に高いとも考えられます。しかし新型コロナウイルス流行による在宅勤務推奨があってもなお働き方を変えることが出来ないワーカーやシステム改修が追いついていない部門もあり、未だに15%のワーカーが紙ベースで働いているともいえます。
調査の結果からは、紙ベースで働くワーカーは生産的に働けていると感じられていないことも分かっており、引き続き取り組みが必要な領域の1つとなっています。

トレーニングと情報提供が重要

移転当初を振り返って、もっと力を入れるべきであったと感じているのが、ITツールの使い方のトレーニングや情報提供です。このコラムを読んでくださっている方の中にも、ITスキルが低い人にあわせているとテレワークができない、といったような事例を耳にされたことがある方もいらっしゃるのではないのでしょうか。

「ABW for New Normal」というホワイトペーパーでも少し触れていますが、日本は全体的に生産性への意識が低いという特徴があります。しかし意識だけでなく、生産性向上のための知識や情報が不足しているということも要因の1つではないか、と思い当たるところがあります。例えば、マルチディスプレイを使用することによって生産性や業務効率性が向上する、という結果は複数の調査結果から明らかになっていることです。本社オフィスの個人作業席には、原則全ての席に外部モニターを設置していますのでマルチディスプレイにできる環境は整っているにも関わらず、当初ワーカーの多くはモニターを使用せず、小さいノートPCの画面のみで業務をしていました。そこで前述の調査結果をポスターで紹介したり、実際に使ってみてデバイスを活用することのメリットを感じたりしたことで、現在は多数のワーカーが外部モニターを有効活用しています。設備投資をしたのにそのメリットが感じられない期間が生じてしまうのは非常にもったいないことです。

また新型コロナウイルス流行開始後、本社の社員は原則オフィス滞在率30~35%で業務を進めています。今でも十分、場所に縛られることなく働けている社員が多いのですが、社内調査では、より柔軟に働くために必要なこととして、多くの社員が「個人的なスキルや能力」「技術的なサポート」を挙げています。

より柔軟な働き方をするうえで障害となっているものは何か?

情報システム部門が当たり前だと感じている知識や情報、デバイスやアプリケーションの使い方、新たに追加された機能などを丁寧にアナウンスすることも必要だと感じますし、「このアプリが便利だった」「こんな機能があった」そういった情報が現場の中でもシェアされる風土づくりや場づくりも今後必要になると考えています。

コミュニケーションスタイルも根本的に変える必要がある

また社内の調査を眺めてみると、ITツールを駆使して、個人作業だけではなくチームのコミュニケーションにもうまく活用できているワーカーほど、柔軟に、オフィスの中の様々なスペースを使い分けて、モバイルに働けているということも分かりました。個人の業務の仕方や業務フローだけではなく、コミュニケーションのスタイルも変えなければいけなかったのです。

オフィス内のモビリティ別コミュニケーションツールの使い方への満足度

またオフィス内外を問わず、離れて働いている者同士のコミュニケーションでは、事前の「計画」が非常に重要になってきます。オフィスで固まって働いているときのようにコミュニケーションが自然発生するのに任せるのではなく、定期的に、意図的に、先回りしてコミュニケーションの場や機会を設定していく必要があります。社員の中には、偶発的なコミュニケーションを望むタイミングでは、オフィス出社時にあえて自分が会いたい人がいそうなエリアで働くようにしている者もいます。対面で行うか、デジタルで行うかにかかわらず、このコミュニケーションの機会を設定する習慣を身につけることは、web会議ツールの使い方をマスターすることよりも時間がかかります。

時間がかかるからこそ、一歩目を早く踏んだ方がいい

本社で勤務する社員は、新型コロナウイルス流行の兆候が見られた2020年2月末、緊急事態宣発出前から出社率を制限し在宅勤務を取り入れた働き方を行っています。このモードに速やかに移行できたのも、オフィスの中で離れて働くという働き方にチャレンジしてきた経験が1年以上あったからだと考えています。

ワーカーの意識や行動を変えることには時間がかかります。だからこそ、もし将来的に柔軟な働き方を志向するのであれば、一歩目を踏み出すのは早い方が良いと思います。また今回パンデミックをきっかけに在宅勤務を取り入れた経験を「助走」として、ぜひ自社にとってふさわしい新たな働き方を見出していただければと思います。

イトーキでも、Activity Based Workingの導入支援やオフィス勤務と在宅勤務のバランスを導き出すハイブリッドワークナビゲーションなどのサービスをご提供しております。お気軽にご相談ください。

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ABWとは、最も生産性が高く働ける場所、時間、相手をワーカー自らが選択する、自由度・柔軟度の高い働き方のこと。ABWについて考え、もっと理解できるトピックスが盛りだくさんです。