イトーキグループは、地球温暖化は干ばつや集中豪雨などの異常気象の原因となり、世界の人々の生活に大きな被害をもたらすとともに、自らの材料調達や生産活動に深刻な影響を及ぼすものであると捉えています。当社グループは、この地球温暖化の防止・緩和策として、CO2発生量を効果的に削減するカーボン・マネジメントに取り組んでいます。調達・設計・生産・輸送・販売・廃棄・リサイクルの各段階での排出量の「見える化」からカーボン・オフセットの活用まで、より多角的で、より効果的な取り組みを進めるとともに、地球温暖化による事業活動への影響を最小限にする適応策も検討・実施しています。
イトーキグループは、地球温暖化の防止・緩和に向けて、6種類の温室効果ガスのうち、排出量が最も多いCO2排出量の削減に注力し活動しております。2010年よりイトーキグループ共通の環境目標を掲げ、グループ一体となってCO2排出量削減に取り組んでまいりました。
2020年度のCO2排出量は、2013年比3.5%削減いたしました。これは、イトーキグループ全体で進めてきた生産方法の再編や照明のLED化、省エネルギー設備の更新等、計画的な設備投資による省エネルギー効果が大きく寄与しております。
今後は、新たに策定した2021~2023年度の「中期環境計画」に基づき、計画的な省エネルギー設備導入を実施するとともに、自主研活動を通じたサプライチェーンへの省エネルギー技術的指導の実施、さらに、使用する電力の再生可能エネルギー化を推進してまいります。
また、省エネ法や地球温暖化対策推進法などの基準を超えた目標の達成に向けて、省エネルギー体制整備、具体的な取り組み推進など、グループ全体で活動の活性化を図り、工場、物流センター、オフィスビルを含めたすべての拠点でCO2排出量のさらなる削減を進めてまいります。特に製造部門では、エネルギー使用量の「見える化」による課題抽出と改善活動を進めており、その成果やノウハウは製造系グループ会社にも拡大・展開しております。その他、各工場に設置された管理ボード・改善ボードを用いて、品質や人材育成などと一体的に効率よく環境活動を進めており、これについても、グループ内への展開はもちろん、サプライヤーへの普及・支援を進めていきます。
Scope1:6,715t-CO2
Scope2:8,890t-CO2
Scope3:247,858t-CO2
イトーキの事業活動を通じたCO2排出量のトータルな把握に向け、2013年から環境省の「サプライチェーンを通じた温室効果ガス排出量算定に関する基本ガイドライン」に基づく取り組みを行っております。イトーキ及び国内製造系グループ会社4社、国内非製造系グループ会社8社、海外製造系グループ会社1社の事業活動およびサプライチェーンを通じたCO2排出量の算定を実施しております。
イトーキグループにおけるCO2排出量は直接排出量(Scope1)、間接排出量(Scope2)は合計が1割弱で、サプライチェーンにおける排出量(Scope3)が一貫して9割以上を占めております。
Scope3の内訳については、Scope3-1購入した商品・サービスのCO2排出量が多く、サプライヤー先から調達する商品、部品に関わるCO2排出量となります。
イトーキグループは、Scope全体でのCO2削減に向け、再生可能エネルギーの導入、省エネルギー活動の推進、環境負荷の低い商品の開発を行ってまいります。
事業活動を通じたCO2排出量(Scope1、2、3)
温室効果ガスのうちCO2を除く5種(メタン、亜酸化窒素、ハイドロフルオロカーボン類、パーフルオロカーボン類、六フッ化硫黄)については、2007年の測定の結果、発生量が極微小のため、削減の対象としておりません。
イトーキ単体製造部門におけるエネルギー使用量は、電力が全体の約60%、都市ガスが約30%と、この2つのエネルギーで約90%を占めています。また、製造工程別に見ると、塗装工程でのエネルギー消費が最大となっています。そのためイトーキでは、工場におけるエネルギーの使用状況を把握・分析し、エネルギーの選択からきめ細かい省エネルギーに至るまで多角的な取り組みを展開しています。
生産体制の見直し等も行いましたが、イトーキ単体製造部門における2020年の排出量原単位は前年比0.5%の増加となりました。
CO2を排出しないクリーンかつ再生可能なエネルギーである太陽光発電システムを積極的に導入しています。2009年に太陽電池出力100kwの関東工場(千葉)を、2012年には関西工場(寝屋川)に太陽電池出力10kwの太陽光パネルをそれぞれ設置。2013年には関西工場(滋賀)のロジスティクスセンター屋上に太陽電池出力782kwの太陽光パネルを、また、2014年には、グループ会社の富士リビング工業(株)が、太陽電池出力30kWの太陽光パネルをそれぞれ設置しました。
さらに関西工場(滋賀)では、自家発電時に発生する熱や蒸気をエネルギーとして活用するコージェネレーションシステムを導入しており、システム内の照明電力は付属の太陽光パネル(4kw)で賄っています。各事業所で設置した太陽光発電システムでは、日々の発電量を大型モニターで監視、掲示することで社員の環境意識向上に役立てています。
関西工場(寝屋川)の太陽光パネル
関東工場(千葉)の太陽電池出力太陽光パネル
関西工場(滋賀)屋根の太陽電池出力太陽光パネルと
大型モニター
イトーキグループでは、国際的な水銀規制に関する水俣条約の規制もあり、水銀を含まない照明器具の更新とともにエネルギー使用量の少ないLED化を2016年から導入し始め、2021年での更新完了にむけて計画的に実行しております。
物流部門の滋賀ロジスティクスセンターでは、照明機器をLED化し全面リニューアルしました。物流倉庫では製品の入出庫を頻繁に行いますが、時間帯やエリアによっては、照度を抑えることができます。導入にあたっては、エリア別に照度コントロールが可能なLEDを導入し、前年比約40%の削減につながりました。
また、関東工場(千葉)では、2017年10月から段階的にLED照明への切替を行い、2019年3月に全面LED化を完了しました。ロッカー部分の照明や階段の誘導灯など使用時間が限定的な箇所は人感センサー付の照明を採り入れ、省エネルギーに努めています。
2020年にはグループ会社3社でもLED照明への切替を実施し、着実に歩みを進めています。
タブレットを使用した照度コントロール
自動調光システム
滋賀ロジスティクスセンター
関東工場(千葉)
イトーキでは、消費電力をきめ細かく把握し、エネルギーの使用状況をリアルタイムに監視できるシステムを活用しています。生産工程や設備単位の省エネルギー化を進めるため、関⻄⼯場 (寝屋川、滋賀)、関東工場(千葉)、設備機器(スチール棚)、伊藤喜オールスチール(株)に設置。これらの監視データをもとに、 設備運用の改善を行っています。エネルギー使用状況を「見える化」することで、省エネルギーのための細かな施策を打つとともに、生産ラインを動かすスタッフの意識向上も図っています。
電力監視システム
スチール棚製造課〈京都〉
寝屋川製造部
イトーキは、「より多くの社員が省エネルギーの専門知識を持って自発的に活動すべきである」という考えのもと、教育研修を積極的に実施しています。法で定められた基準を上回る人数のエネルギー管理員を育成し、一人ひとりが身に付けたエネルギー知識や省エネルギー技能・技術などを日常の管理・改善業務に活かしています。
貨物の委託輸送量が年間3,000万トンキロ以上あるイトーキは、物流業務の委託先、サプライヤー、さらにはお客様と協力し、モーダルシフト・海外コンテナ直送・ミルクランの推進や同業他社との一部地域の共同配送など、物流プロセスにおける省エネルギーに取り組んでいます。
また、輸配送の委託先に対して、各都道府県トラック協会の行うエコドライブ研修の受講を推奨しています。
工場や物流センターの基幹輸送における製品輸送手段を見直し、環境負荷低減を図っています。トラック輸送から、よりCO2排出量の少ない海上コンテナおよびJRコンテナ輸送を大阪~東京間など13経路で採用しています。
当社におけるモーダルシフトの取組は以下13経路にて実施しております。
経路1: | JRコンテナ | 大阪~東京間 |
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経路2: | フェリー | 敦賀~苫小牧間 |
経路3: | JRコンテナ | 大阪~東京間 |
経路4: | JRコンテナ | 滋賀~鳥栖間 |
経路5: | フェリー | 敦賀~苫小牧間 |
経路6: | JRコンテナ | 東京~苫小牧間 |
経路7: | フェリー | 東京~苫小牧間 |
経路8: | JRコンテナ | 東京~福岡間 |
経路9: | JRコンテナ | 京都~東京間 |
経路10: | JRコンテナ | 東京~大阪間 |
経路11: | JRコンテナ | 東京~大阪間 |
経路12: | フェリー | 東京~博多間 |
経路13: | フェリー | 大阪~那覇間 |
関西工場(滋賀)と関東工場(千葉)では、調達先からの部品納入に際し、自社でトラックを手配して各調達先を回る巡回集荷(ミルクラン)を実施してCO2削減に努めています。また、設備機器(スチール棚)では、コイルの購入方法の見直しをしています。
納品と空ケースの返却を同時に行うことをミルクランといいます。それぞれの調達先が個別に納品する場合と比較して、物流のための燃料とCO2発生量、さらには梱包材使用量の削減につながります。また、計画的なミルクランの実施により、緊急納品や多頻度納品などによる無駄削減にもつながっています。
イトーキは、木材へのCO2固定化など多様なカーボン・マネジメントを提唱する企業として、事業所敷地内を積極的に緑化し、それによるCO2削減も推進しています。特に夏場は、環境省が進めている「グリーンカーテンプロジェクト」に賛同し、「イトーキ グリーンカーテン」として、窓辺などへの植栽によって室温低下を促し、冷房使用の削減を図っています。その取り組みはイトーキ内部にとどまらず、グループ企業にも展開し、事務所玄関横や西日の影響を受ける工場の西面などに、ゴーヤやヘチマ、朝顔などの苗を植えて「緑のカーテン」として育てています。今後も、緑化によるCO2削減を推進するため、グリーンカーテンの植栽面積を増やしてまいります。
イトーキ グリーンカーテンプロジェクト
グリーンカーテン(滋賀)
グリーンカーテン(寝屋川)
グリーンカーテン(京都)
2017年1月より、「nonaチェア」のライフサイクル全体を対象にカーボン・オフセットを実施しています。
活用する排出権は、インドネシアの中部カリマンタン州カティンガン地区の泥炭湿地を保全・修復するプロジェクトで創出されたものです。この排出権の選定理由は、まずインドネシアにイトーキの事業拠点があること、そしてインドネシアは泥炭湿地の急激な開発によりCO2排出量が世界屈指であることです。泥炭湿地は落ち葉などが堆積しているため、炭素の貯蔵庫のようになっており、泥炭湿地を保全・修復することはインドネシアの環境保全、煙害改善のみならず、地球規模での温暖化防止につながります。このプロジェクトは年間で乗用車200万台分のCO2排出量を削減する大規模なものであり、REDD+のスキームで創出されています。また、泥炭湿地を保全しながらも地元コミュニティが生計を立てられるよう、持続可能な社会づくりも同時に行っており、SDGsの観点にも則した取り組みです。
nonaチェアは「やさしい」をコンセプトにして開発された製品であり、座り心地の良さやフォルムに丸みを持たせるなど随所に「やさしさ」を感じられる工夫が散りばめられていることが特徴です。部品点数を減らした設計も環境にやさしいということができます。このカーボン・オフセットの取り組みにより一層の環境貢献を図ることができるため、今後もこのプロジェクトを継続的に行っていきます。販売台数に応じてオフセット量も算出されるため、数ある製品の中からnonaチェアを選定されたお客様自身も間接的にSDGsに貢献できる取り組みとなっています。
nonaチェア
カティンガン地区に生息している
希少動物の一種「テングザル」
nona カーボン・オフセット概要
自ら排出したCO2のうち、削減努力をしてもどうしても削減できない量を地球上のほかの場所のCO2排出量を削減することで自身が削減できない排出量をオフセット(埋め合わせ)する取り組みです。自身のCO2排出量の削減を促進するだけではなく、地球レベルでの温暖化対策にもつながります。
イトーキは、「イトーキ総合カタログ2021」の原材料調達から製造時において排出するCO2を対象にカーボン・オフセットを行いました。
デジタル化が進むなかでも印刷物としてのカタログは需要があるため、SDGsの目標12に掲げられている「つくる責任」を果たしながらカタログ製作を行っています(※)。
イトーキは、第3回 [学校]施設・サービスEXPO(2020年 9月16日-18日: 幕張メッセ)に出展いたしました。その際、出展ブースで使用する電力から排出されるCO2を対象にカーボン・オフセットを実施し、イベントの出展を通じて、環境配慮を行いました(※)。
TCFDサミットは2019年から開催されています。2020年の開催は10月9日にオンラインで実施され、 TCFD提言を実務に定着、発展させていくことを目的として産業界・金融界のリーダーが更なるTCFD提言の活用に向けて議論しました。本サミットを通じて、気候関連財務情報開示の認識と知見を共有し、日本から世界に対して、TCFD賛同拡大に向けた取組を発信しました。
イトーキは、経済産業省から依頼を受けて、TCFDサミット2020の参加者(登壇者、事務局等)の国内移動、配信会場の電気使用、オンライン傍聴者のデバイス利用に伴い排出されたCO2の全量をカーボン・オフセットし、環境配慮型の会議開催に貢献しました。
森ビルが運営する「虎ノ門ヒルズフォーラム」で使用する電力を、イトーキがJ-クレジットの提供をすることで再エネ率100%を達成しました。2020年度から「虎ノ門ヒルズフォーラム」で開催されるイベントなどは、環境配慮型イベントとして実施されています。
虎ノ門ヒルズフォーラム
エプソンの環境配慮型オフィスセンターに、ハイラインとnonaチェアをご採用いただきました。オフィス内で紙の資源循環や、低消費電力での印刷環境を実現する同オフィスでは、ハイラインはグリーン購入法適合製品であること、nonaチェアはカーボン・オフセットの取組みをしていることがご採用の決め手となりました。
イトーキでは、お客様の課題を解決するお手伝いをすべく、2010年よりソリューションサービスを展開しています。2020年に発足した菅政権では、「2050年までにCO2排出量を実質ゼロ」にするという脱炭素社会構築に向けた所信表明がされました。その後、業種を問わず脱炭素社会に向けた取り組みが加速化しています。イトーキとしては、エコソリューション「Econifa(エコニファ)」「カーボン・オフセット」といったサービスを通じて、脱炭素社会構築に貢献し、「人も活き活き、地球も生き生き」した社会を実現していきます。
エプソンの環境配慮型オフィスセンター
2020年度の地球温暖化防止の取組は、従来から進めているCO2発生量を効果的に削減するカーボン・マネジメントの成果として3.5%のCO2排出量を削減いたしました。
また、新たに策定した2021~2023年度の「中期環境計画」に基づき、計画的な省エネルギー設備導入を実施するとともに、使用する電力の再生可能エネルギー化への切り替えを積極的に推進してまいります。