2025年9月29日

「挑戦」と「チームワーク」で時代のニーズを掴んだ個室ブース「ADDCELL」開発秘話

現場の職人たちが細部までこだわり、使う人のことを想って作った個室ブース「「ADDCELL(アドセル)」。ユニバーサルデザイン、静音性、輸送を前提にした丈夫さ―お客様が「使ってよかった」と感じる工夫が随所に詰まっています。時代のニーズを掴んだ高品質なブースは、関東工場の「挑戦」と「チームワーク」によって完成しました。

生産本部 関東工場 千葉製造部 製造課

野口 匡(塗装)

生産本部 関東工場 千葉製造部 製造課

吉田 隆也(梱包)

生産本部 商品統括部 第4開発設計部

田中 雅典(開発)

生産本部 関東工場 千葉製造部 工務課

松村 真奈(資材)

生産本部 関東工場 千葉製造部 工務課

内山 里菜(インタビュー)

時代が求めた新製品 — 使う人を第一に考えた設計と現場の挑戦

内山−−−「ADDCELL」ならではの特長と、皆さんの携わったシーンを教えてください。

田中(開発):当時、コロナ禍で個室ブースの需要が急増しました。そのため、オリジナリティ溢れるイトーキブランドならではのブース開発が求められました。大きな特長は床を無くしたこと。個室ブース入口に段差があり、入りにくいという課題がありました。床を無くし、段差がなくなれば誰でも使いやすいユニバーサルデザインになります。一方で段差を無くすと配線の収納スペースが減ってしまうため、フレームや壁の隙間を配線が収納できるよう調整する必要がありました。このように、一つの工夫が新たな難題を生み出すため、「ADDCELL」の開発にはこれまでにない挑戦がいくつもありました。

松村(資材):新しい製品を製造するためには新しい資材が必要になります。どの協力会社なら製造可能か、製造可能であっても出荷に間に合うのか、関係各所とさまざまな調整が必要でした。資材調達の時間は製造工程の圧迫に直結するからです。

野口(塗装):私たちの役割は資材が届き次第、“ミスなく”出荷日に間に合うように塗装することです。特殊な形状をしているR曲げパネルは機械の力だけではカーブの箇所を塗装できません。補正作業として、機械の塗りに合わせて人の手で塗装する必要があります。ここは、「ADDCELL」ならではの難しさですね。しかし、難しいからこそ自分たちでないと作れない自負がある。私にとってはやりがいのある製品です。

同じ色を出すためには、気温や湿度を敏感に捉え、塗料の調整や塗り方を変える“熟練の技術”が欠かせない。

塗装後は梱包作業です。私はこれまで塗装された部材の品質検査を担っていて、梱包業務に携わったことがありませんでした。はじめは段ボールの種類を覚えるところから。なかなか見分けがつきませんでした。「ADDCELL」は自分の成長のきっかけにもなった、思い入れ深い製品ですね。

部材ごとに異なる梱包を記憶し、傷つかないよう一つ一つ丁寧に。

吉田(梱包):開発担当者に「なぜこの梱包仕様なのか」を説明してもらいながら、丁寧に手順を教えてもらえたので「これは大事な役割だ、ミスできない」とモチベーションが上がりました。大勢で集まって、協力しながら梱包を進めたことは印象に残っています。

内山−−−他チームや新しい協力会社との関わりも増えた、「ADDCELL」は人と人をつなぐ製品だったんですね!

我が子の輝き。完成品から思い出す日々

内山−−−皆さんの連携あっての「ADDCELL」。完成を見たときの印象や印象深いエピソードは?

田中(開発):試作が成功した時は「これは最高の製品になる!」と愛が深まりましたね。特にガラスドアは、4回も試作を重ねました。ガラス面をより大きく見せるスリムなデザインが要求されましたが、ドアのフレームを薄くすると強度が足りなくなる。取り付け方法を何度も検討し、今の形になった際は嬉しかったですね!度重なる資材の変更では、担当の松村さんには本当に助けられました。

薄くて頑丈なガラスドア。美しさと機能性を両立させるための度重なる挑戦があった。薄さに注目!

松村(資材):調達は大変でしたが、その分、一つ一つの資材に思い入れがあるので、完成品を見た時は「こんなに立派になって……」と感動しました。たとえば、吸音パネル一つ見ても「思ったより受注が重なり、お客様の希望納期に到底間に合わないところを、何度も打ち合わせを行いながら何とか調整できて良かった」とか、R曲げパネルを見ても「製造パートナーが三人がかりの手作業で曲げてくれていたな」と思い出が蘇ります。

製造可能な業者が限られていた吸音パネルと三人がかりで製作するR曲げパネル。しっかり防音!

野口(塗装):完成品を目にした時は、製品愛がさらに深まりました。色は人の注目が真っ先に集まる箇所だと思っています。「ADDCELL」の工夫の多くは使ってみないとわからない一方、色は使っていない通りすがりの人にも伝わる。中には塗装が難しい色もあるため、綺麗な色が出ていると「これなら誰にでも伝わる」と思えて嬉しいですよ。

塗装はホワイトが一番難しい。薄いと青っぽく、厚いと黄色く見えてしまう。

吉田(梱包):完成品やオフィスへの納入写真を見ると、「やって良かったな」と「ADDCELL」の全てに愛着が湧きましたね!完成しているということは輸送時に傷がつかなかった証でもあるので、段ボールだけでなく、ビニール袋や緩衝材を使用し、丁寧な梱包を施したかいがあったなと思います。

内山−−−どの箇所にも「ADDCELL」との思い出、そして “愛情”が詰まっていますね!

見えないところにも愛情—新製品開発のこだわりポイント

内山−−−作り手側だからこそ注目してほしい、「ADDCELL」の製造過程やジマンはありますか?

田中(開発):耐震性が高いことです!地震が起こると“ロッキング”と呼ばれる左右に大きく振れる揺れ方をしてしまい、ブース内に大きなダメージを与えます。そこで、床に設置するアジャスターに滑り性能のあるカバーを取り付け、 “滑らせる”ことで揺れのダメージを軽減させる耐震技術を組み込みました。

振動試験で震度7クラスの揺れを2回乗り越えた「ADDCELL」

内山−−−開発メンバーならではのこだわりポイントですね

野口(塗装):完成品では見えない2箇所にも注目してほしいです。一つ目はR曲げパネルの裏にあるL字型のフック。これがあることでR曲げパネルはズレることなく組み立てることができます。等間隔でL字型フックを取り付ける作業も私たちの仕事です。二つ目は塗装。実は取り付けると隠れてしまう内側まで人の手で塗装しているんです。見えない部分にも愛があることを伝えたいです!

数ミリのズレや僅かな傷は許されない「ADDCELL」の部材。

吉田(梱包):梱包は製品を傷つけないようにするため、開発メンバーが使用する段ボールまで選び抜いています。従来は一層しかないシングルの段ボールを使っていましたが、「ADDCELL」では二層構造(ダブル)を使用しています。見えない工夫ですが、輸送時に傷がつかないよう調整を重ねた梱包にも注目してほしいですね!

表面・波型・中面・波型・裏面の5枚の紙で構成された段ボールで「ADDCELL」を守る。
「ADDCELL」に携わる関東工場の皆さん

「ADDCELL」は単なる“個室”ではなく、そこで働く人、学ぶ人、お客様のさまざまなシーンに寄り添うために生まれた製品です。使いやすさ(床レス設計)、静音性、耐震性、そして現場の“愛”――これらをぜひ体感してみてください。

関連製品・ソリューション

※所属部署・役職・制度は取材当時のものとなります。現時点の情報と異なる場合があります。

CONTACT

各種お問い合わせはこちらから。