

株式会社村田製作所 様 音圧・CO2などオフィス内の環境データを活用した新たな分析アプローチ
「Data Trekking(データトレッキング)」は、オフィスに存在するデータを複層的に掛け合わせ新たな視点からオフィスの課題にアプローチできることが特徴です。そのため、お客様側で所有されている独自データをフレキシブルに組み込み多角的な分析視点を加えるケースもあります。
従業員増加に伴うオフィスの段階的改修時に実施した村田製作所様本社における「Data Trekking」による分析では、同社のセンサデータプラットフォームにより取得した「オフィス環境データ」を掛け合わせ、「コミュニケーション量とパフォーマンスの関係性」の探索を行い、新たにオフィス環境データを活用した定性的要素の可視化という視点を検証しました。
本プロジェクトの経緯や成果を村田製作所様のご担当者に語っていただきました。
プロジェクトの経緯 従業員の増加に伴うオフィス改修
従業員の増加に伴い、オフィス改修に段階的に取り組むことになりました。まずは在宅勤務を含めたグループアドレスという働き方にあわせた改修が進みました。従業員が働きやすい環境を検討していくにあたって、オフィス内の設備の利用状況や従業員どうしのコミュニケーションの状況、空気の状態など空間の快適性を把握するため、イトーキの「Data Trekking」に、当社のセンサデータプラットフォーム 「Pifaa(ピーファ)」により収集したオフィス環境データを組み合わせ、オフィス環境データと従業員の行動、パフォーマンスを統合的に分析することで、オフィス課題の定量化、可視化による分析を深め、よりよいオフィスを目指しました。

センサデータプラットフォーム「Pifaa(ピーファ)」のセンサー
導入動機 オフィス環境の実態を多角的に把握し科学的根拠に基づいた改善を
オフィス環境の実態を多角的に把握し、科学的根拠に基づいた改善を行うことで、従業員がより快適に働くことができる環境を整え、生産性向上を実現したいと考えています。「稼働率の低い不要な設備を検出し、買い替えや他部門への流用を考えたい」「従業員同士の活発なコミュニケーションを誘発できるような設備を導入したい」「交流スペースと執務スペースのゾーニングが適切かを把握したい」「これらが従業員のパフォーマンスにどのような影響を与えるか知りたい」という思いから、「Data Trekking」サービスがこれらの課題解決につながると判断しました。
実施内容 オフィス環境データ×パフォーマンスデータ×位置情報データ
「Pifaa」ではセンサーにより温度、湿度、CO2濃度、照度、音圧などのオフィス環境データを収集、クラウド上でデータを一元管理することができます。
「Pifaa」によるこれらのオフィス環境データ 、「Performance Trail」によるパフォーマンスや組織のコンディションに関するサーベイデータ、「Workers Trail」によるオフィス内の位置情報データを取得しました。オフィス環境データの中では、音圧、CO2濃度、湿度に着目し、他のデータと掛け合わせて関係性を分析。中でも音圧データについては、コミュニケーションに一定以上の大きさが検知された場合を「コミュニケーション(会話)が発生した」と位置づけ、その傾向などを両社で分析しました。
導入効果 音圧データによる「コミュニケーション量」の可視化の新たな手法
改修後のオフィスでは、リアルなオフィス空間でしかできない「交流」を増やしたいと思っていました。社員が多く行き来するオフィス中央の動線沿いに、歩いている人と目線が合いやすいようハイテーブルを配置したのですが、そのエリアが改修から時間が経つごとによく利用されるようになっていることが分かりました。

動線沿いに設置されたハイテーブル

通路沿いのハイテーブルの稼働率が特に高い(黄色のゾーン)
そういった「使われ方」はもちろんですが、興味深い結果が得られたのが、コミュニケーション量とパフォーマンスを示す指標の中でもストレスや組織内の人間関係に関する指標との関係です。
まず、音圧データを基にオフィス内のエリアごとの会話量から、コミュニケーションが多いエリア、少ないエリアを可視化。すると、コミュニケーション量が少ない、いくつかのエリアが浮かび上がってきました。

音圧データから「コミュニケーションが多い場所(赤)/少ない場所(青)」を可視化したヒートマップ/Pifaaによる分析
さらにここから「Data Trekking」に蓄積されているバックデータの傾向から、「コミュニケーション量の少ないエリアで業務を行っている従業員は、コンディションを示すスコアが低いのではないか」という仮説のもと、サーベイデータと位置情報、オフィス環境データを掛け合わせた分析を行いました。
結果、コミュニケーション量が少なくてもストレススコアや人間関係に関するソーシャルスコアが良好な場合がありました。たとえば従業員の年代別に分析してみた場合、ある年代はコミュニケーション量の少ないエリアで働く人のコンディションスコアが低く、別の年代ではコンディションスコアが高いなど、オフィスへのニーズや望ましいコミュニケーションスタイルの違いなど、多様な影響因子の存在が確認できました。
今後も分析を深めていく必要がありますが、これまで曖昧だった「コミュニケーション」という定性的な要素を位置データやパフォーマンスを示すサーベイデータとかけあわせることで数値化・可視化・意味づけをし、今後のオフィスの在り方や働き方に関する施策のヒントを導くことができました。
今後への期待 オフィス環境データでオフィス環境の質を高める
今回の分析で得られた知見を活かし、オフィス環境データと従業員の行動、パフォーマンスデータをさらに深く連携させることで、オフィス環境の質を高め、より効果的な働き方改革の推進につなげていきたいと考えています。環境の快適性向上だけでなく、コミュニケーション活性化やストレス軽減など、従業員の健康とパフォーマンスに直結する多様な課題に対応した具体的な改善策が得られると期待しています。