02.高耐震間仕切G

倒れない
パーティションの必要性

東日本大震災後、社会的に安心・安全への機運がより一層高まった。そんな中、オフィスの安全を支えるパーティション「高耐震間仕切G」が開発された。
可動式で、オフィスを仕切る壁という位置づけのパーティションが、どのような効果をもたらすのか、開発者である松山仙治(建材商品開発部 開発課)に話を聞いた。

高耐震間仕切G

震度6強の揺れにも耐え抜く安全設計のスチールパーティション。
しなやかな動きが、地震エネルギーを吸収する。天井や設備に関する新規定の一部を、業界で初めてスチールパーティションにも適用した。

高耐震間仕切G

開発担当者

松山 仙治
建材商品開発部
開発課

イトーキ建材商品開発部 開発課 松山 仙治

開発のきっかけは東日本大震災

企画が始まったのは、2012年の11月です。2011年3月11日の東日本大震災で、多くの建物が被害を受けました。そして、東日本大震災の後、建物の中のパーティションも倒壊していた、という報告を聞いたのです。

それまでのパーティションも十分な試験を行い、安全性に配慮して開発してきていただけに、とてもショックでした。

それからです。地震に強いパーティションが必要だろうということが、社内でも議論されはじめたのです。そこへ某設計事務所からパーティションの開発を共同でやらないか、と声がかかったんです。もちろん想いは同じなので、是非やらしてください、ということでこのプロジェクトはスタートしました。

大きな地震があっても倒壊、脱落しないものを作りましょう、ということです。

高耐震間仕切Gの開発について語るイトーキ建材商品開発部の松山仙治
高耐震間仕切Gは、スラブ天井と化粧天井が1対1で動くことを想定。

想定外の揺れに耐えるパーティションを

東日本大震災の地震波というのは、阪神淡路に比べて、揺れが強いということ、そして時間が長いという特徴を持っていました。そのため、層間変位角(上下のフロアでのズレ)がかなり大きかったのです。それまでの社内基準は、阪神淡路大震災クラスの地震での、倒壊、脱落がないことを想定しており、層間変位角は100分の1までとしていました。

しかし、東日本大震災では40分の1という最大層間変位角が確認されました。それに対応しなければならない「高耐震間仕切G」は、層間変位角40分の1まで試験で確認しています。

少し専門的な話になりますが、設計事務所から提示された揺れの条件が、スラブ天井と化粧天井が1対1で動くというもの。たとえば、スラブ高が4200ミリとすると、40分の1の層間変位角だと、105ミリ変形することになります。通常のオフィスの天井はスラブ天井の下に化粧天井が付いていて、化粧天井までの高さは2800ミリくらいなんですが、この高さで40分の1の層間変位角とすると、変形は70ミリなんです。でも、そこでもスラブ高と同じ105ミリが動く想定をするということなんです。

その厳しい基準をクリアするために、試験を重ねていきました。

倒れない仕組み

「高耐震間仕切G」自体の構造は、スゴく単純で、簡単です。層間変位したときは、パーティション自体が傾いて、せり上がるようになっています。従来のパーティションの場合は、40分の1も変形すると引っ掛けているものが外れて倒れるんですが、その引っかかりの爪を長くすることで倒れないように対応しているのです。大きなズレが発生しても壁が外れない、ということです。

こうやって説明すると、とても単純なんですが、地震の揺れは三次元なので、横だけではなく、前後に揺さぶられることがあります。さらに単調ではないさまざまな揺れがあるので、いろいろな長さや形状の爪を検討し、さまざまな揺れを再現して、対応できるか確認していくのです。

いろいろと繰り返し試していくなかで、爪はただ長くすればいいというものではない、ということがわかってきました。爪を長くすれば、それだけ動く幅が大きくなり、その分、パーティションも大きく動く。動きすぎるんです。外れにくくはなるのですが、大きく動くことで勢いがついて他に影響がでてしまうからです。

イトーキは、自社に振動実験装置を持っていて、何度もトライアンドエラーを繰り返すことができるのが強みです。この振動実験装置は、借りるとなると結構コストがかかって試せる回数に限りがでてしまうので、そこは大きいですね。

揺れるパーティション?

地震が起こったときに、揺れることで外れないという構造だったら、通常使用しているときもガタガタするんじゃないか? ということをよく聞かれます。でも、それは全く問題ありません。震度4もしくは5くらいだったら、パーティションは全く動かないですから。

地震波の質にもよりますが、たとえば阪神淡路大震災のいわゆる神戸波だった場合、パーティションにロッキングの動きが出るのは震度6強くらいからになります。だから、通常は壁にもたれても全く大丈夫ですし、遮音性も通常のパーティションと同じ性能になっています。 

また「高耐震間仕切G」には、もうひとつ、スライドタイプというものがあります。これは、パーティションをロッキングをさせずに、横に滑らせるタイプです。たとえば応接室で、高級な絵画などを壁に飾ることを想定して商品化したものです。

スライドタイプは、幅木なども通常1つしか使わないところを、二重幅木にして滑らすような構造になっていたり、柱の下にも滑らすような材料を使ったりしています。なのでロッキングタイプよりも少しコストがかかるんです。だからなのか、人気は圧倒的にロッキングタイプの方です。

アクティブフィールド製品写真
高耐震間仕切G
高耐震間仕切Gの開発について語るイトーキ建材商品開発部の松山仙治

何よりも大切にした“安全性”

パーティションは単純な壁とはいえ、建築物の一部なので、意匠性というものが重要視されます。爪を引っ掛ける構造の間仕切りの場合、どうしても上げシロが必要になります。これまで弊社で製作している間仕切りシリーズは、そこが25ミリ必要でした。それが「高耐震間仕切G」の場合は、上げシロが大きく、70ミリくらいになります。

建築の意匠設計をされる方は、誰もがそこはなくしたいと言います。意匠的にはゼロにしたいくらいだと。だから、今までの常識からいえば、70ミリの上げシロは考えられないものだったんです。

ただ、今回のものは“高耐震”ですから。「高耐震間仕切G」の高い安全性能を説明すると、ほとんどの方は納得してくれます。

護るべきポイントからの導入

私たちは、どんな空間にでも対応できるようにと意識してやってます。「高耐震間仕切G」でも、ガラスタイプや欄間の付いたタイプもラインナップしました。オフィス全体ではなく、一部だけ使用するということも多いみたいです。「高耐震間仕切G」は普通のパーティションに比べて、少しコストが高くなることもあるので、それでもいいと思っています。

私たちは、大きな地震などがあった場合、人的被害を減らすこと、事業継続を可能にすることが最重要だと考えています。だから例えば、避難経路になる場所、帰宅困難者受け入れ可能な会議室や集会室、備蓄倉庫、事業継続に必要なサーバールームなど、まず護らなければならない場所からでも導入していただければと思ってます。もちろん、オフィス全部を「高耐震間仕切G」にしていただくことが一番なんですが。

細部までこだわった、誇れるパーティションを

イトーキのパーティションは仕上げがとても綺麗だと自信をもっています。パネルの角の曲げの合わせ目やドア枠などは、より建築の仕上げに近いものがあります。そういった細かいところまでこだわって作っていますから。だから、実際にオフィスに納入したときに、間違いなく仕上がりがいいんです。

でも、なかなかそのこだわりや違いがわかってもらえないんですよ。だからと言って、そのこだわりを捨てることはできませんが。

パーティションは、どこのオフィスでも必ずといってもいいほど使われているものなので、むしろ、もっともっとこだわっていきたい。見た目のデザイン性にも、安全性や遮音性などの性能にも優れた、こだわりのパーティションを開発していきたいと思っています。

高耐震間仕切Gの開発について語るイトーキ建材商品開発部の松山仙治

> 高耐震間仕切G 製品ページ

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