01.Active Field

製品開発ではなく、
働き方の提案でした。

ソロワークはもちろん、グループワーク、プレゼンテーションなど、働き方によってさまざまな使い方ができるワークステーション「アクティブフィールド」。それは、もはや単なるオフィス家具ではなく、働き方をも変化させる提案となった。
その新たなフィールドの開発責任者、柴田慶太(商品開発統括部プロダクトデザイン室)に製品開発にまつわる話を聞いた。

Active Field(アクティブフィールド)

2014年に発売した可動性のあるワークステーション。さまざまなサイズや天板形状に加え、折りたたみテーブルもラインナップしており、オフィス全体を構成することができる。
モデュールの統一により、組織改編によるレイアウト変更やテーブルの用途変更にも対応している。

アクティブフィールド

開発担当者

柴田 慶太
商品開発統括部
プロダクトデザイン室第2チーム
チームリーダー

イトーキ商品開発統括部プロダクトデザイン室第2チームチームリーダー柴田慶太

お客様のニーズに応える製品開発

開発のきっかけは、営業部門、デザイン部門との会話の中で、オフィス内で「可動性のあるグループテーブル」のニーズが高まっているという話が聞こえ始めたことです。可動性のあるグループテーブルは以前からありましたが、PCバッテリー性能の向上や、オフィス内のスペースを多目的に使うケースが増えてきたことで、2012年以降、特に利用価値が高まっていると感じています。

そのニーズに応えるために、今の時代にあった、可動性のあるグループテーブルの製品開発に取り組みはじめました。

求められているのは
手軽にレイアウト変更できるテーブル

ニーズの背景にはプロジェクトのフェーズ、組織体制などによって、レイアウトをフレキシブルに運用するようになってきた、ということがあると思います。

オフィスは大型のベンチテーブルが全盛で、ユニバーサルプランなどでレイアウトされるのが主流だったのですが、ベンチテーブルはレイアウト変更の際に製品の組み替えをする必要があります。当然、コストも時間もかかる。そこで、手軽にレイアウト変更ができるグループテーブルが求められているんだと思います。日経ニューオフィス賞などのトレンドを見ても、グループテーブルが増加傾向にあるんじゃないかな、という感じです。

とはいえ、全体からみるとまだまだ可動性のあるグループテーブルのシェアは少ないです。ただ、今後も増加していくのではないかと考えています。

アクティブフィールドの開発について語るイトーキ商品開発統括部の柴田慶太
アクティブフィールド製品写真

企画の入口は、
オフィス全体を構築できるグループテーブル

多くの執務スペースでは、スクエアのデスクを使用していますが、ミーティングスペースだと、丸いテーブルや異形テーブルがある。それらを全て統一モジュールにすることで、レイアウト自由度の高い製品を作ろうと考えていました。テーブルが使われるところ全てで使いやすいテーブルができないかと。

レイアウト変更するというだけではなくて、今まで執務スペースで使っていたものを、ちょっと離してミーティングテーブルとしても使用する。折りたたむことができれば、ワークショップなどで広いスペースが必要になっても対応できる。セミナーなどで参加者が増えてテーブルが足りなくなったら、別のスペースからテーブルを借りてくる。というような場合でも、モジュールを統一していれば、あまり違和感がないんじゃないか、と考えていました。また、可動性のあるテーブルは、オフィスだけでなく、アクティブラーニングにも展開しやすいので、教育施設でも使いやすいテーブルになると思います。
コンセプトを作る段階で、常にフレキシブルな使い方を意識していました。

使い方を想像して、さまざまな天板形状を開発

アクティブフィールドは、オフィス全体を構築できるテーブルを目指しているので、当然一般的なスクエアな天板だけではなく、特長ある異形天板もラインナップしています。異形天板は基本的に、組み合わせて使うことを想定しました。グループディスカッションのときは組み合わせて大きなテーブルとして使えるというところから、発想を深めていったのです。企業でもワークショップなどをやられてますので、そういう時にも使用できるのでは、と考えたのです。

これらの形状を考える際、まずイラスト上で、形とモジュール感みたいなものを作って、何パターンくらい組み合わせができるか数を出します。それぞれの組み合わせで、何人くらい座れるのか、働きやすい机上面積があるのか、というようなことをイラストベースで作ってみます。そして、これはいいんじゃないかというものを絞った上で、等寸で模型を作って、いろいろな組み合わせ方で置いてみるんです。さらに座った時の人の距離感などを計ったり、自分の使っているデバイスやノートを置いて、机上スペースも確認しながら最終的に今の案に落ち着きました。

ペアー(洋梨)型は、おそらくイトーキだけの形状だと思いますが、単体での使い勝手も考えて作った形なので、さらにさまざまな場面で活用できると思っています。

ペアー型のテーブル

人と人の関わり方を考えて、空間を創る

今回、企画段階ではおにぎりのような丸みのある三角形も考えていました。組み合わせて使用する際に、直線でピタッと組み合わせられる事も大事ですが、あえて隙間ができる、点でつながる形もいいのではないかと考えていました。緩やかなつながりというか。

人と人の関わり方でも、しっかり組み合わさる事も大事ですが、適当な距離がありながらもどこかでつながっている関係性というのも大事だと思うんです。テーブルでそんな関係性を表現する事で、新たなグループワークのスタイルができないかと。カチッと固まったグルーブじゃないから、いろんな人がアバウトに集まれる。数も限定されるわけではなくて、なんとなく集まって、何となく一体感がある。そんなアバウトな関係性ができると面白いのではないかと。

今回は実現しませんでしたが、人と人の関わり方から考えるというアプローチは今後も続けたいですね。

アクティブフィールドの開発について語るイトーキ商品開発統括部の柴田慶太
アクティブフィールド
アクティブフィールドの跳ね上げ機構

テーブルの価値を高めるデザイン

可動性のあるオフィス家具は、シンプルであれば、シンプルであるほどいい。軽くなり、移動も楽ですし。悪くいえば、飾りっけのない感じになるんですが、どこに置いても違和感がない方が、オフィスに対しても馴染むと思っています。
デザインでは特に、折りたたみテーブルも他のラインナップと、脚のデザインを合わせたいというのがありました。折りたたみ用のレバーと普通のテーブルの脚の付け根部分のデザインが、なんとなくリレーションがとれてる、みたいな感じにこだわりましたね。

こだわりの跳ね上げ機構

実際の製品化においては、折りたたみテーブルに苦戦しました。 折りたたみの跳ね上げ機構が難しかったです。普通の折りたたみテーブルは、テーブルの真ん中を軸に天板の前側が下がる感じでたたむので、シーソーみたいになっているんです。これは折りたたむのが簡単なんですよ。でも、「アクティブフィールド」の場合は、天板の一番後ろ側を軸に天板を跳ね上げるんです。それを実現しようと思うと、何か跳ね上げる機構がないとできないのです。この跳ね上げる構造をどうするかで、設計メンバーはすごく苦労しました。

家具は、メカではないので、なるべく機構の部分は見せたくなかったんです。フレームと天板だけで構成して、それで、キチンと折りたたみできるというのが理想でした。

誰でも使いやすいデザイン、機能を追求

ダイバーシティなどを語る以前に、オフィスには当然男性も女性もいる。テーブルを動かすのは男性の仕事ってことは無いはずです。アクティブフィールドは「アクティブ」とつけているように、可動性を重要視しています。天板を薄くしてできるだけ軽く、移動がしやすいようデザインしています。

ただ、軽くなれば動かしやすいだろうと言うのは男性的な考え方なんです。力で動かすと言う発想は。キャスターが付いているので、実際に動かす際にそれほど力はいらないんです。女性目線で考えると、問題はキャスターの固定と解除のやり方にあるんです。

女性のパンプスではキャスターの固定と解除をうまく切り替えられない。しゃがんで、手で固定/解除を行っている場合が結構あるんです。アクティブフィールドではキャスターの固定/解除の切り替えレバーの形状を工夫して、女性のパンプスでも切り替えがしやすいようにしています。 小さな事なんですが、誰でも使いやすい製品を作るっていうことは、こういったことの積み重ねだと考えています。

女性でも使いやすいデザイン
柴田「こういう働く空間ができるといいな」を実現できる製品づくりを

働き方、働く空間を創る

「アクティブフィールド」は、とてもシンプルなデザインなので、いろんな空間に提案しやすいものに仕上がっています。さらに折りたたみテーブルや異形テーブルなどのラインナップが加わることによって、その幅が大きく広がっていると思います。今回の開発では、私自身、モノを開発しているというよりも、働き方を提案しているという方が、しっくり来る感じでした。

今後も「こういう働き方ができたらいいな」、「こんな働く空間ができるといいな」ということを実現できる製品づくりをしていきたいですね。

> Active Field(アクティブフィールド)製品ページ

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