10 SCENNARIOS OFFICE VISION 2020

オフィスや働き方に大きな変化を呼び起こす10の近未来シナリオ

 
01 よもやまを瞬時に掴むダイジェストインフォ
02 言外も訳すインテリジェンス翻訳
03 究極の自分に出会う高密度オフィス
04 家具の一生を共有するクラウドストック
05 先人たちの叡智に問う AI パートナー
06 雑踏にオフィスを拓くスマートソナー
07 食務も遂行する スマートミールマネジメント
08 技の真髄に触れる タシットアーカイブ
09 新たな仕事と労働力を生む タスククリッパー
10 内なる創造力を解放する デザインアズゴッド

What’s office vision?

新しいテクノロジー、世界の情勢、生活の根底にある価値観、
それぞれが互いに影響しあいながら、社会は輪郭づくられてきた。

もちろんオフィスもそうした大きな流れのうねりの影響を受けて、
少しずつ変化してきた。

そして2020年、オフィスはこれまでにない大きな変化点を迎える。

私たちはその変化を10のシナリオとして描き、
近未来のオフィス像について研究を続けている。

 
 
START
01 2015 2020

時差のある海外からの
報告確認が仕事の大半
よもやまを
瞬時に掴むダイジェストインフォ

欠席した会議でどんな議論がなされていたのか、不在にしていたオフィスで何が起きていたのかを瞬時に把握できるかたちに編集。時間や場所を共有しづらい世界各地に散らばる優秀なスタッフや専門家とのプロジェクトを円滑にする。

開発インタビュー 01

ダイジェストインフォよもやまを
瞬時に掴む

辻村 宏一

グローバル化の進んだ社会では、いろいろな国、地域の人とのプロジェクトが多くなってくるはずです。それぞれ異なる時差のメンバーが、Web会議で集まってミーティングをすると、深夜に参加しないといけないメンバーは、体力的にも掛かる負担が大きい。そういったプロジェクトが重なってくると尚更です。みんな24時間起きていることは出来ないので。
だからこそ、会議に参加できない人たちも、まるで出席していたかのように会議の内容を的確に共有できる必要があると思っています。ダラダラと書かれた議事録では読むのに時間がかかりすぎるし、結論だけの議事録ではどのような議論を経ているのか全くわからない。録画して見ればいいのかもしれませんが、会議の映像をずっと見ていたのではビジネスは止まってしまいます。時間をかけずに、議論の過程も、結果・成果も把握する必要があるというのが、ダイジェストインフォの発想の起点ですね。
参加者の興奮や不安などの感情、場の高揚感や納得感などの空気をセンシングし、議論の過程での知っておくべきところ、そしてその結果・成果についても的確にまとめる。これができれば、世界中の人々とのビジネスはもっと活性化するはずです。また、この技術を使えば、一日の活動の報告も簡単かつ的確にできるようになり、報告する方も聞く方もお互いにメリットがあると思います。ただ、実現に向けては、人の感情や場の空気感をセンシングするための技術的な問題も当然ありますが、それ以上にプライバシーに関する問題が大きいと思っています。

 
012020年の未来では ー 02言外も訳す
02 2015 2020

言葉は通じているのに
なにかが違う
言外も訳すインテリジェンス翻訳

国籍・世代・文化背景の多様化による、価値観や表現方法の違いが生み出すミスコミュニケーションをワーカーに気づかせる、あるいは人知れず補正。個々のワーカーの言外の思考や、行動のクセを認識し、多様な個性を持ったワーカー同士のコミュニケーションをアシストする。

開発インタビュー 02

インテリジェンス翻訳言外も訳す

藤田 浩彰

ダイバシティ化が進み、年齢、国籍、文化が異なるさまざまな人とのコミュニケーションがさらに必要になるはずです。その時に、それぞれバックボーンが異なる人たちの間で、今まで以上にミスコミュニケーションも増えることでしょう。例えば、簡易に言語を同時通訳するシステムが出始めてはいるものの、同じ言葉でも含まれている意味合いが違うというようなことがあります。日本人が言う「行けたら行くね(I will goif I can.)」は、「行く」と言いながらも誘いに対する断りの表現だったりしますよね。このような言葉の裏にある、あるいは言葉にはならない本当の意味を、その時々の曖昧なニュアンスや場の空気を的確につかんで相手に伝える仕組みが必要になるのではないかという考えからインテリジェンス翻訳を発想しています。もっと言えば同じ年代、国籍の人の間でも勘がいい人とそうでない人で、同じ話を聞いても考えることが異なってきますよね。
同じ場にいる人たちが、共通の認識を持つことはビジネスでは絶対に必要なことなんです。
ただ、その場の空気、ニュアンスをどうつかんで、どう伝えるかが難しいところです。ニュアンスや空気は感情に左右される部分も大きいので、感情認識の技術とそのフィードバック方法ですね。感情が全て露わになるのも好ましくないこともあるでしょうし、場の空気、ニュアンスを表現した時に、そこにいる人たちが気持ち悪く感じない、自然に受け入れられる形での表現の仕方も今後の課題ですね。

 
022020年の未来では ー 03究極の自分に出会う
03 2015 2020

多様な仕事にあたまと
身体がついてこない
究極の自分に
出会う高密度オフィス

集中作業やブレインストーミングなど、矢継ぎ早に変化するさまざまなタスクにあわせて、ワーカーの身体的、精神的コンディションをチューニング。最大限のパフォーマンスへと導き、仕事のクオリティを高める。

開発インタビュー 03

高密度オフィス究極の自分に
出会う

中山 圭以

情報インフラの発達により、働き方が多様化し、多くの人がオフィスに来なくても仕事ができるようになると思っています。だからと言ってオフィスは本当になくなるのかと考えた時に、どのようなオフィスが未来において必要なのかが発想の起点です。
もちろん、人が会う場が会社の意味なので、一つには、実際に「人と会う」ということが大切な役割だと思っていますが、それ以上にそこに行くことで仕事の効率が上がる、そこに行くと仕事のクオリティが上がる。そんな役割が未来のオフィスには必要なのではないかと考えています。
さまざまな業務を行う際に、能力を最大限に発揮できるよう身体的にも精神的にも、最適なコンディションにしてくれる空間のイメージです。例えば、ソロワークを行う時にはコンセントレーションが高まるようなコンディションに、ブレインストーミングを行う時には柔軟な発想が出てくるようなコンディションに整えてくれるようなことです。 強制的に働かせられて、会社を出る時にはくたくたになっている姿は全然違います。ちゃんと必要なタイミングで、効率の良い休憩もとれる。だらだら働いて、なんとなく休憩するのではなく、オフィスに行くことによって、効率的にメリハリをつけることができるようになる感じですね。同じ時間仕事をしていても、仕事量が全然違うという意味で「高密度オフィス」と名付けています。

032020年の未来では ー 04家具の一生を共有する
04 2015 2020

使っていない家具も
そのまま放置
家具の一生を
共有するクラウドストック

オフィスで不要になった家具の個々の使用状況や劣化度合いを社会全体で共有。家具を手放したい人と、それを必要としている人とをリアルタイムにつなぐ、「資源交換型」という新しいオフィスづくりを普及する。

開発インタビュー 04

クラウドストック家具の一生を
共有する

竹内 裕

資源枯渇は地球規模での深刻な問題です。今までのような「作って捨てる」という世の中ではなくなると考えています。正確なデータはありませんが、世の中にあるチェアの数は、働いている人の数よりかなり多いのではないかと思います。限りある資源を利用する上で、未来のオフィス家具の適正な在り方とはどのようなものだろうか。といったところから発想を広げています。プロダクトとしての寿命が来る前に廃棄されるものもたくさんあるのではないかと思っています。メーカーとしては、まだ使えるプロダクトが廃棄されるのは、嬉しいことではありません。シェアすることが、プロダクトを安全に使用できる期間、使い続けてもらうことにもつながると思っています。また、使用者側から考えると、期間限定の新規プロジェクトを立ち上げる時などにも有効な仕組みだと考えています。1年間のプロジェクトを立ち上げる時、新しい家具を用意しても1年後どうするのか、そもそも新しい家具を用意するためにスタートアップにコストがかかるなどの問題の解決にもつながるはずです。
そんな未来を実現するための課題は、あちこちに散らばっているプロダクトの情報をどのように集めるかですね。同じ期間使っていても体重80kgの人が使い続けた場合と40kgの人が使い続けた場合では、製品の劣化具合も異なるし、汚れ具合も使い方で異なります。定量的な情報と定性的な情報の両方を、同じ基準で測って、それを集める方法については、まだまだ研究を続ける必要を感じています。

042020年の未来では ー05先人たちの叡智に問う
05 2015 2020

時間だけが過ぎる
先の見えない会議
先人たちの
叡智に問うAI パートナー

AI(人工知能)が仕事の進め方に関するワーカーの迷いや悩みを敏感に察知。新しい気付きとなる情報をそれとなく提示したり、より良い発想を引き出すために勘所を押さえた助言をしてワーカーをアシストする。

開発インタビュー 05

AI パートナー先人たちの
叡智に問う

西野 哲生

停滞した会議や、閉塞感の漂うミーティングの際に、考えたことがあるんです。「今ここにジョブズがいたらどんな意見を言うだろうか?」「イトーキ創業者の伊藤喜十郎ならなんて言うだろうか?」そんな考えから発展させてAI(人工知能)パートナーを発想しています。過去の偉人や創業者に相談することができる会議は面白そうですよね。もっと言うと、過去の偉人だけでなく、その「企業らしさ」も判断の参考にできればよいと思っています。「人格」ではなく、「企業格」とでも言うようなものです。特別な個人が目立っていなくても、面白い発想をしている企業はたくさんありますから。ただ、あくまでも相談です。決めるのはその時にいる人だと思っています。AI パートナーは人の代わりに大事なことを決定したり、正解を教えてくれたりするものではなく、そこにいる人の可能性を引き上げるため、その時に必要なアドバイスをくれるものです。ここが難しいところです。答えを導き出す方が簡単かもしれないんです。データを分析して間違いの少ない方を選ぶ作業のほうがコンピューターは得意なので。その最適化が大きな課題かと思っています。

052020年の未来では ー06雑踏にオフィスを拓く
06 2015 2020

オフィスじゃないと
仕事にならない
雑踏に
オフィスを拓くスマートソナー

あらゆる場所が、周囲を気にすることなく打ち合わせや一人での集中作業に没頭できる空間へと変化。街中のいたるところを快適なオフィス環境に変えて、アクティブに活動するワーカーをサポートする。

開発インタビュー 06

スマートソナー雑踏に
オフィスを拓く

森田 良一

今後、大多数が会社に所属するというワークスタイルが変わると考えています。デザインや設計、プログラムなど、さまざまな技能・技術を持った人たちは会社に所属することなく、フリーランスで働くことが今以上に多くなるのではないでしょうか。そのような働き方をしている人たち同士がミーティングをしたり、集中してデスクワークをする場所はどこになるのだろうかというのが、発想の起点です。現在でも、ノマドワーカーと呼ばれる人たちはさまざまな場所で仕事をして、必要に応じてカフェなどで打ち合わせをしています。ただ、やはり周りの声や音などが気になります。さらに、話をしている内容が周りに聞かれてしまったり、資料の内容を見られてしまうリスクも伴っています。それらを解消して、いつでもどこでも安心して重要な打ち合わせをしたり、見せたい映像を共有できればいいですよね。例えば念じた相手とだけそんな意思疎通や情報共有ができるような。まるでテレパシーのような感じですが、そんな、超能力みたいなものでもテクノロジーで実現することができるのではないかと。今でも、特殊なマイクやスピーカーを使えば、カフェの中などでも特定の人とだけ会話をすることはできると思いますが、それは、そういった設備が整えられている場所限定の話です。それを、いつでもどこでも、思った時に実現するにはどうすればいいのか。できればウェアラブルなどの端末も身につけずに実現できる可能性を考えていきたいと思っています。それこそテレパシーになってしまいますが。

062020年の未来では ー07食務も遂行する
07 2015 2020

仕事は進んでないのに
もう昼食の時間
食務も遂行するスマートミールマネジメント

その日の体調と、しなければならない業務にあわせて、過不足のない最適な食事メニューとそれを食べるタイミングを案内。ワーカーの健康とパフォーマンスを向上させながら、日本の食料自給率にも貢献する。

開発インタビュー 07

スマートミールマネジメント食務も遂行する

高原 良

現在日本が抱えている社会課題の一つに食料自給率の低さがあります。今後、食料自給率を向上させるために、企業が自社の社員の「食」に関しても社会的な責任をもつようになるのではないかと考えています。企業が食料自給率貢献を始めだすと、オフィスにどのような変化が起こるのか、というところから考え始めました。自給率を上げるためには、オフィスの中に農園を作るといった食べ物を「作る」側からのアプローチも考えられるのですが、必要な栄養だけを摂取し、過剰に食べないとか残さないといった「食べる」側から考えると、自給率だけではなくワーカーの健康や体調管理にも同時に貢献できるのではないかと発想を広げていきました。さらに「食べる」は、ワーカーのパフォーマンスにもつながると考えています。スポーツ選手には試合前、試合当日、試合後と、その時に必要な栄養素を考えて食事をしている人がたくさんいます。もしかすると、オフィスワーカーも集中作業が続く時の食事と、ブレーンストーミングを行う前の食事は違って当然なのではないでしょうか。業務内容に合わせた食事をしかるべきタイミングで過不足なく摂ることで、ワーカーのパフォーマンスも今以上に向上し、結果として国家の食料自給率も向上するのではないかという、一見荒唐無稽な空想を本気で議論しています。

072020年の未来では ー08技の真髄に触れる
08 2015 2020

読むだけでは
わからない
技の真髄に触れるタシットアーカイブ

多くの産業で生産工程が自動化され“モノづくり”における匠の技、職人の感覚が失われつつある。匠の技、職人の感覚をデータ化し、日本独自、地方独自の“モノづくり”を次世代へ伝承していく。

開発インタビュー 08

タシットアーカイブ技の真髄に触れる

加藤 洋介

社会として地方創生、地方分権を進めるためには、地方独自の伝統や産業が発展していく必要がある。そのためには、人材育成がひとつの課題になると思います。地方独自の産業、伝統的な技術をより多くの人に興味を持ってもらい、その分野に進んでもらうためにはどうすればいいのかということから発想しています。
地方に行ってみないと体験できない、見ることができないというのが、地方独自の伝統工芸や産業の後継者問題の大きな課題だと思っています。どんなことをするのかわからず、その世界に飛び込むのって勇気がいりますからね。その解決のために独自の技術、匠の技などをデータ化して世界中のどこででも体験・体感できるようにしていきたいと思っています。例えば人間国宝の技を体感できる、熟練の職人が手取り足とり教えてくれるというようなとても贅沢な体験です。
もちろんそのためには、匠の技をセンシングしてデータ化することが必要です。「感覚的」な技を「データ化」するという相反するようなことを実現しなければなりません。
また、地方独自の技術をデータ化することで技術の流出にもつながる懸念もあります。地域の産業として守るのか、技術の伝承を目的とするのかによって公開方法などを決めていく必要がありますよね。ただ、いずれにしても、「匠の技」をデータ化しておくことの意義は大きいと考えています。

082020年の未来では ー09新たな仕事と労働力を生む
09 2015 2020

能力のあるメンバーが
タスクを受けられない
新たな仕事と
労働力を生むタスククリッパー

音声入力やジェスチャーUIの技術発展によって、これまでの「デスク上でPCと向き合ってキーボードを打つ」というワークスタイルの常識が大きく変わる。それにより、新しい仕事の請負い方が広がる。

開発インタビュー 09

タスククリッパー新たな仕事と
労働力を生む

岸田 祥子

労働力人口の減少は、今後ますます顕著になってきます。労働力の確保は、言うまでもなく企業にとって重要な課題です。どんなに専門性の高い知識や技術、経験をもっていても、ケガや病気、育児や介護のために仕事を離れなければならない状況になることは誰にでも有り得ます。そういった状況にある時も、自分の能力を発揮しながら働ける環境を、様々な技術を用いれば作れると考えています。
例えば人工知能を使えば、フルタイムで働くのは難しい、プロジェクト全体に参加することは難しいといった状況の人たちに対して、それぞれの能力や置かれている状況に合わせた最適なタスクに分解してから、仕事を割り当あてることが可能です。さらに考えると、子供を抱きながらとか、ケガで手や足を動かせない状況になっても、肉体的、環境的な条件に影響を受けずに作業できるツールがあれば、仕事を続けることもできるようになります。
ただし、実現に向けての課題はまだまだたくさんあります。人工知能といっても、実際に一気通貫したプロジェクトから、それぞれのワーカーの刻々と変わる状況に合わせて、適切にタスクを分解するシステムをつくるのはとても難しいと思います。また、そのタスクを担う人に対する評価、労務管理など、社会や企業側の制度整備も必要になってくるのではないでしょうか。

092020年の未来では ー10内なる創造力を解放する
10 2015 2020

イメージと違うけど
専門家に意見できない
内なる創造力を
解放するデザインアズゴッド

設計やデザインを取り巻く技術が大きく進化する。本来専門的なスキルとされていた、図面を書いて、モデリングして、というプロセスを飛び越して、ユーザーが感性と直感を使って自分で高度なモノづくりができる時代を迎える。

開発インタビュー 10

デザインアズゴッド内なる創造力を
解放する

星 幸佑

ビジネスのスピードはますます加速しています。そのとき、プロジェクトやビジネスユニットに合わせてオフィスレイアウトを変更する時間さえもったいないことがあります。専門家が時間をかけてデザインした上で、そこからさらに設計と工事を行い、オフィスを完成させていくのが今までのオフィスのつくり方でした。ただ、もっとスピードを優先させた新たなオフィスづくりの手法が必要になってくるのではないかと考えています。
例えば、ヒトの設計者ではなく人工知能によるオフィスデザインや、AR(拡張現実)空間、VR(仮想現実)空間でのレイアウトとインテリアの検証などがそうです。もし気に入らない場合も、専門的な指示を出さなくても、感想や要望を言うだけで、きっと何パターンも別のお勧め案が人工知能から瞬時に提示されるはずです。そのように、さまざまな技術によって、これまで専門技能だとされていたデザインや設計という領域も、オフィスユーザー自身が感性と直感を使って行える時代が来るはずです。
とは言え、建築関連法規や消防法などの必要な専門知識、さらには創造的で効率良いオフィスレイアウトとはどのようなものかを人工知能に理解させるにはまだまだ時間が掛かりそうです。

102020年の未来では ー
このエントリーをはてなブックマークに追加
TOP
MENU