01.ファイリング・システム

オフィスに秩序をもたらした、
書類管理の仕組み。

あらゆる企業が競うように業務効率化を図った高度成長期、 合理的な書類管理の仕組みとして、ファイリング・システムが急速に広まりました。
今もなお必要とされ続けるその仕組みの、黎明期から現在に至る開発のみちを紐解きます。


SR…ショールームスタッフ

斉藤…ファイリング研究室室長  斉藤研祐

SR:ファイリング・システムのプロフェッショナル、
ファイリング研究室室長  斉藤研祐さんにお話を伺います。

斉藤 研祐

ファイリング研究室 室長。15年以上、ファイリング研究に携わる。

ファイリング研究室 室長 斉藤研祐

まず始めに、ファイリング・システムが普及した当時の時代背景をお聞かせいただけますか。

斉藤:そもそもファイリング・システムは、アメリカが発祥です。
今では一般的である「書類を立てて管理する」という方法が1892年にアメリカで考案されました。 翌年にシカゴで開催された万国博覧会ではフォルダーを使った書類の収納方法が発表され、注目を浴びました。
日本では戦後に持ち込まれ、昭和30年代に普及しはじめました。
イトーキでは昭和34年に事務能率センターを作り、ファイリング・システムの普及を担うことになったんです。

SR:昭和30年代と言えば、いわゆる高度経済成長期ですね。 当時の日本市場におけるファイリング・システムへのニーズはどのように高まっていったのでしょうか。

斉藤:高度経済成長期には、多くの企業が売り上げを拡大していました。そのため、業務の効率化を求め、オフィス内の情報の検索性を向上させる必要があったのです。
当時は多くの情報は紙を使用していたため、膨大な書類がオフィス内にあふれていましたから。
それらの書類を整理して検索性を高める仕組みとして、ファイリング・システムは多くの企業に求められるようになっていきました。

SR:売り上げ拡大と共に資料も増え、企業はそれをどうにかしなければならなかった、ということですね。 書類に囲まれたオフィス…想像できます(笑)。
ファイリング・システムが今も色あせず高いニーズがあるというのは、時代に応じて常に変化し続けてきたからだと思いますが、どのような工夫がありましたか?

斉藤:ファイリング・システムは導入以上に維持管理が大変と言われていました。それは何百枚ものラベルをPCの無い時代に1枚ずつ手書きで作っていたからかもしれません。私がこの仕事に就いた平成10年頃でもまだワープロが多く、ラベルを1枚ずつ印刷していましたから、ラベルを作るだけでたいへんな仕事でした。
現在では、エクセルをベースにした専用のプログラムを開発して、ラベルやファイル基準表などファイリングに必要なさまざまなアイテム作成はかなり簡単にできるようにしています。
とはいえ、オフィスにある書類の量、数、重要度などはお客様によって千差万別です。それぞれのお客様が使いやすいように、プログラムをカスタマイズするのですが、そのためにはプログラミングの知識・技術が必要です。私たちは、それを外部のシステム会社には依頼せず、お客様にファイリング・システムの指導をするスタッフである「コンサルタント」が自らカスタマイズできるようにしています。そうすることで、迅速に利用者の希望に沿ったツールを提供できるようにしているんです。
コンサルタント全員、ファイリング研究室でプログラムを組むことになるとは思ってもいなかったでしょうね(笑)。利用者の思いを実現するために、半年以上のプログラミング研修を行っています。

SR:すごいですね!人材のレベル統一は、色々なところで課題として上がるようですが、まさに「誰でも同じ質のサービスを提供できる」ということですね。
斉藤さんは長年ファイリングに携わっておられる、まさにプロフェッショナル。普段のお仕事ぶりからも、ファイリングへの熱意を感じます。

斉藤:日本でファイリング・システムが普及し始めて50年を超えて、ほとんどの企業ではファイリングなんて当たり前にできていると思っているんです。
でも「担当者が急にお休みになった時に、その方の文書を検索することができますか?」とか「いつか使うかもしれないと、何年も前の文書が入ったままになっていませんか?」といった質問をすると、多くの方が苦笑いをするんですよね。「書類を入れておく」と「ファイリング」とでは大きな差があるんですよ。
医者の不養生のようでお恥ずかしいですが、以前、社内でも、ファイリング・システムの基本であるファイルの共有化が出来ていなかったり、フォルダーがバインダー並みにパンパンに膨らんだ状態で保管してあることがありました。そんな経験もあり、ファイリングの便利さ、重要さを身をもって知っているので、自らはファイリングの手本でありたいと思うようになりました。

SR:人に教えるためにも、まず自らが実践しているということですね。
まさに手塩にかけて作り上げてきたファイリング・システム。今後どのように発展させていきたいと思われますか。

斉藤:ユーザーの負担を減らすため、手間と費用と時間を掛けずに導入できるようなプログラムを作りたいと思っています。

SR:お客様目線での製品改良ということですね。とても大事なことですね。
最後に、斉藤さんにとってのファイリング・システムとは?

斉藤:「イトーキが巡り合せてくれたライフワーク」ですね。

SR:イトーキの誇るロング製品は、斉藤さんのような諸先輩のたゆまぬ向上心によって発展を遂げ、今に至っているのですね。
斉藤さん、ありがとうございました。今後もお元気にご活躍ください! 

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