06.トリノチェア

新発想は、後の基本装備に。
“浮かぶように座る”オフィスチェア。

1999年に発売された「トリノチェア」。快適メカニズム「フロート・ベンディングシート」の機能は、その後、イトーキのチェアの基本装備となりました。

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SR…ショールームスタッフ

竹内…中央研究所 所長  竹内 裕

SR:インタビューにお答えいただくのは、トリノチェアの生みの親、竹内 裕さんです。

竹内  裕

中央研究所所長。チェアの開発設計部門在籍時にトリノチェアの開発設計リーダーとして従事。

竹内 裕

まずはじめに、トリノチェアを開発するに至ったきっかけや当時の市場、時代背景を教えてください。

竹内:当時は”アンパン型”と呼ばれる分厚いクッションのチェアが全盛。お客様は、どこのチェアか見分けが付かないし、 座っても違いが分かってもらえなかった。 そこで、一目で「イトーキ製品だ」とわかるシャープなデザインのチェア、目を閉じて座っても「イトーキ製品だ」とわかる心地の良いチェアを生み出したいという開発チームの思いで開発に着手しました。 ちょうど、環境に配慮した製品づくりが求められ始めた頃でしたので、クッションを薄くして省材料化を達成するという意図もありました。

SR:目を閉じて座ってもイトーキ製品とわかる。ステキな思いから開発が始まったのですね。トリノチェアを開発する過程で、特にこだわった点、苦労したことを教えてください。

竹内:座り心地が画期的に優れ、かつ群を抜いた環境への配慮とシャープなデザインを実現する“薄いクッション”という、一見矛盾したコンセプトを両立させるために、どうしたらいいのか、アイデアを捻り出しました。それが、『インナー(=クッションを支えるプラスチックの成形品)に“しなり”をもたせる=ベンディングさせる』という発想でした。心地よくベンディングさせるための、インナーのスリットと組付け構造は手作業で試作し、強度の確保にはCAEを駆使しながら、数百回の試行錯誤を繰り返して座り心地と強度を作り込みました。作り込みの途中では、スリットが入ってるのにクッション性が足りず、お尻が痛かったり、左右にユラユラ揺れて酔いそうになったり、失敗作もたくさんありましたが、苦労の甲斐も有って理想のベンディングシートを完成させることができました。このベンディングシートは、発売後に大好評となって後のイトーキチェアの多くに採用されることになりました。
それから、チェアの一番の見せ所となるバックビューは、張り地を見せるデザイン。張り地を見せるには、高級チェアにみられるような、張り地に縫製を入れて張りぐるむ方法があるがコストがかかるため使えない、この価格帯で実現するために、背もたれを張り加工後に折り曲げて取り付けるアイデアを出し、当時導入期だった3次元CADをもがきながら活用し、設計しました。おそらく、2次元CADでは実現出来なかったと思います。

SR:手作業でベンディングシートを作られたのですか!今、私たちが日中座っている椅子の座面は皆さんのアイディアと努力の集大成だったのですね。“浮かぶように座る”というコンセプトの元にもなっているベンディングシートですが、ベンディングで行こう!という決め手はなにかあったのでしょうか。

竹内:他の候補としてはメッシュや帆布のような仕様も挙がっていたと思いますが、薄いウレタンとスリット入りインナーシェルとの組合せを選びました。スリット入りのインナーシェルならスリットのパターンや周辺の補強の入れ方で、ベンディングの具合を自在に調節できるので、坐骨の周辺はしっかりとたわませ荷重を分散させ、お尻から遠い部分はカチッと支えて安定感を出すことで、低コストで画期的な座り心地が狙えると考えたことが決め手でした。

SR:確かに、ベンディングシートのチェアとそうでないものを座り比べると、長時間座った時のお尻の疲れ具合が全然違いますよね。ベンディングシートファンが多いのも理解できます!
ロングセラーとなっている機構を生み出された竹内さんですが、今後イトーキからどのような製品が生まれることを期待しますか。

竹内:世の中に新しい価値をお届けする、業界のパイオニア的な商品を生み出し続けることを目指して、現在の研究の立場からも画期的なモノづくりのベースとなるような技術を生み出しつづけたいと思います。

SR:最後に、竹内さんにとってトリノチェアとは?

竹内:モノづくりの楽しさと苦しさを思い知ったチェアで、技術者としての私の生みの親、みたいなチェアです。

SR:竹内さん、ありがとうございました。私たちショールームスタッフも、開発された皆様の想いを少しでも多くのお客様に伝えていけるように頑張ります。

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トリノチェア

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