05.バイオテーブル

創造的なオフィスづくりを牽引した、
活力と豊かさを生む「生命」のテーブル。

1988年発売のバイオテーブル。当時、オフィス環境に求められる機能が効率性から創造性へと変化する中でたどり着いたユニークな形状は、リデザインを重ねて今も受け継がれています。

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SR…ショールームスタッフ

…販促PR戦略企画室  石 裕二

SR:入社以来オフィスプロダクトの開発に携わり、開発企画担当としてバイオテーブルの製品開発にかかわられた石 裕二さんに、お話を伺います。

石  裕二

元開発部部長。現在、販促PR業務を担当。開発部門在籍時、バイオテーブルの企画開発に従事した。

石 裕二

バイオテーブルの開発は、どのように始まったのでしょうか。

石:『オフィスにおけるミーティング』が製品開発のテーマで、入社10年目で初めて海外のデザイン事務所「ISAO HOUSE DESIGN」と共同開発するプロジェクトに関わることになりました。

SR:面白そうなテーマですね。当時のオフィス市場や実際のオフィスはどのような様子だったのですか?

石:市場の好景気とともに、OA化の進展によりオフィス環境も変化し、オフィス改善の機運が高まっていました。それまでのオフィスは効率優先だったため、業務特性、ワーカーの個性、企業理念の違いは考慮されず、島型対向式のデスクレイアウトで画一的に埋められていました。新しいオフィスは、快適性、機能性、安全性、柔軟性を追求し、ワーカーが創造性豊かに知的生産できることや、企業活動の存在価値が表現された文化性が求められていました。現在のクリエイティブ・オフィスでもそうですが、創造性を高めるには、執務スペースだけではなく、ミーティングが有効であると当時も考えていたのです。

SR:効率性重視型から創造性を見出すオフィスづくりへの変化は、この頃から始まっていたのですね。バイオテーブルの天板形状は、創造力を掻き立てるようなすごく変わった形ですが、元となったモチーフはあるのでしょうか。

石:「バイオ(生命)」のネーミング通りに、原生生物であるアメーバのような生物学的形態を、デザイナーの細江氏はイメージしたように思います。 プロクセミクス(近接学)の考えを元に、オープンオフィスに「みだれ」の要素をもたせ、直線に支配された単調な空間に活力と豊かさを与えられるのではないかと。

SR:原生生物ですか。開発のアイディアは思いもよらないところに落ちているのですね。石さんがバイオテーブルの開発に携わることが決まった時、どんなお気持ちだったのでしょうか。

石:当時は今のようにインターネットが整備されていなかったので、海外との情報のやり取りや進め方に対する不安はありました。しかし、様々な方の協力もあり、スムーズに開発を進めることができ、その後の販促ツールの制作も含めて、問題なく進行させることができました。

SR:インターネットは、今では生活の一部のようになっていますものね。ネット環境がない分、多くの方がコミュニケーションや気遣いを大事にされていたのでしょうね。スムーズに開発が進んでいたようですが、特にこだわったことや苦労したことを教えてください。

石:納入現場で組み立てるテーブルのため、組立てしやすい設計にして、有機的なデザインを実現するために脚部はアルミ成型品を採用しました。 販促ツールとしては、今までにない曲線的な天板形状のため、通常の単品カタログ以外に考え方や組合せを提案したマニュアルや、製図用のテンプレートを作成・配布しました。 当時のレイアウト図面作成はCADではなかったため、提案のための図面作成にテンプレートが必要だったのです。

SR:製品開発に留まらず、その後の販促ツールがまた細やかですね。お客様の満足だけでなく、販売する営業のことも考えた対応ですね。
今後イトーキから、どのような製品が生まれることを期待しますか。

石:革新的で、新たな市場を生み出すような製品を期待します。 バイオテーブルは、発売後、天板折りたたみ式のバイオⅡや現在発売中のキャスター付テーブルのバイオⅢ、天板折りたたみで高さ調節式のバイオⅣへと展開しています。これからも、基本アイデアを大切にしたロングライフな製品が望まれます。

SR:最後に、石さんにとってバイオテーブルとは?

石:独創的で、デザインの可能性を実感できる製品です!

SR:ロングライフ製品の開発には、新しいものを生み出す力だけでなく、未来を見据えた先見の明が必要なのですね。石さん、ありがとうございました。

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バイオテーブルのデザイナーである細江勲夫氏が、2015年10月3日に逝去されました。生前のご功績を偲ぶとともに、心からご冥福をお祈り申し上げます。

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