01

HOW FUN WORKS“楽しい”が生み出すもの

ワークスタイルに「正解」があるならば迷う必要はありません。時流に合わせて諸条件を「正解」に近づけようとすれば良い。ですが仕事をする人々が個性も可能性も価値観も千差万別である中、最適な環境を実現しようともがけばもがくほど、「正解」は空に光る星のように遠くに感じることがあります。
そんな中、迷いは迷いとしてポジティブに受けとめつつ、愉快に果敢に答えを見出そうと試行錯誤する海外の企業や企業人のユニークな取り組みは、時に感動を呼び、五感を刺激し、洞察をもたらしてくれます。このような試みをシェアしながら、皆様と共に星をたぐり寄せるような体験を求めて本企画が始動しました。
初回は、主に米国ベイエリアで活動するクリエイティビティ・カンパニーのFUNWORKSに、登場してもらいました。

よいアイデアが出てくるのはどんな時だろう? クリエイティブなひらめき、オリジナリティのある思いつきは? 稲妻に打たれて、火花が散ったように感じた瞬間? 何時間もパソコンの前で背を丸くしてねばっている時だろうか? オフィスに閉じこもって、真っ白な画面やホワイトボードを眺めている時?「いいえ、どれも違います」。創造性を研究している社会学者や脳科学者もハッキリそう言っている。

新しいアイデアを思いつくのは、きまって仕事やパソコンから解放されてリラックスしている時だ。スーツという鎧を脱ぎ、一日中、肩にのしかかっていたストレスから解放された時だ。たとえば、シャワーを浴びて心地よい時や、冷えたビールを飲んだ時だ。

FUNWORKSは「心地よいシャワーを浴びて冷たいビールを飲んだ」状態を感じられるようにと設立され、その目的に向けて一連のプロセスを開発してきた。そのプロセスとは、FUNWORKSのクライアントが、プレッシャーを感じない自由な気分になって、いつもなら控えるような分野に敢えて足を踏み入れたり、チームのメンバーと共にこれまでにない方法でひらめきを起こして、かつてない結果を生み出せるようなプロセスのことだ。実はクライアント自身も、よりクリエイティブでありたい、より創造的になりたいと熱望していたのだ。

だからこそ、FUNWORKSは広告代理店(Advertising Agency)と呼ばれることを好まず、自らを「クリエイティビティ・カンパニー(Creativity Company)」と称している。彼らの最大のミッションは、本来なら企業という土壌では活用されないものの、実は既に存在している沢山のクリエイティブ・ツールを活用して、これまでの仕事のやり方を変えることにあるのだ。

それでは、Fun=楽しいはどのように役立つのか?
前述した通り、社会学者も脳科学者も、真のオリジナルなひらめきが浮かぶのはリラックスした時だ、という本質的な事実を認めている。FUNWORKSはそこから一歩進め、リラックスしながらさらに楽しい気持ちで臨んだら、よりピンとくるオリジナルな発想ができるのではないかと考えた。もちろん仕事をしているのだけれど、そのプロセスは仕事のように感じられない。アイデアを生み出すことが苦しいことではなく、愉快な体験であったなら? 共に仕事することを心から楽しめるとしたら? そういう時だ。

このようにして、FUNWORKSの共同創業者であるポール・チャーニー(Paul Charney)の探求が始まった。チャーニーは広告業界において20年のキャリアを持ちながら、同時に「スケッチ・アンド・インプロ(sketch and improv)」と呼ばれる即興コメディーのグループでも活動していた。

KILLING MY LOBSTER
作業中のポール・チャーニー
作業中のポール・チャーニー

両方の経験を通じて、チャーニーは即興コメディのプロセスを適用すると従来の広告プロセスよりも遥かに短い時間でオリジナルな発想が生み出せることを発見した。ともすると孤立感を感じたり、ともすると、孤立が起きたり、内輪での判断をしてしまいがちな古典的なクリエイティブ・プロセスに対して、即興コメディを活用したアプローチを採用し、コラボレーションの原則に則った「イエス・アンド(そうだね、そして...)」方式で話を進める。

もちろん、即興コメディにとって重要な要素である笑いも大いに活用する。深刻になり過ぎたり、批判的になり過ぎなければ、新たなアイデアに対して心が開かれる。FUNWORKSのクライアントは誰もがそれを望んでいた。チームとして前進するための拠り所となり、世界とシェアできるような新しいアイデアを生み出せる時空の創造である。

FUNWORKSの当初の目標は、クライアントに即興コメディと同様の体験を提供できる環境をつくることであった。そのために、Funworkshopという独自の手法が生まれた。大きな部屋に(多部署からなる)クライアント・チーム全員を招き入れ、そこに即興コメディアンにも加わってもらう。同時に紡ぎ出されたばかりの素晴らしいひらめきをキャッチするためのグラフィック・レコーダーも準備する。

その場に即興コメディアンが加わることで、通常の「ブレインストーミング」モードとはまるで異なるダイナミクスが生じる。よく見られるブレストの現実、そして失敗の原因はシンプルである。それはブレストの参加者はブレストを行うトレーニングがなされていないからだ。それでは複数でブレストしようとしても、関係者の気持ちが落ち着くわけがない。

一方、即興コメディアンは瞬時にクリエイティブ・モードに入るように訓練されている。彼らは即座に発想し、自分はもちろん、他人も判断することをしない。自由に発言してアイデアを披露することを恐れない。なぜならコメディアン達は、それが素晴らしいアイデアでなければ、ただ次に進めばいいということを身を持って知っているからだ。彼らは自分のアイデアにこだわったりしない。そのようなこだわりや守りの姿勢は、時には新たな、そしてオリジナルなひらめきを生み出す邪魔になることすらある。

言い換えれば、即興コメディアンたちは、クライアント・チームにとっての「社会的な潤滑剤」のような役割を果たしている、と言ってもよい。クライアントはコメディアンのコメントに笑いながら、自分のどんなアイデアもシェアしてよいのだと、ホッとした気持ちになる。どのアイデアがもともと誰の発案であったかなんて関係ない。

このように進めていくことで、引き算的ではなく足し算的にアイデアがどんどん加わり重なるという、ポジティブな環境ができあがる。FUNWORKSの独自プロセスでは、このポジティブで、かつ伝播する高いエネルギーを取り込んでいるのである。

このプロセスの開発に着手した頃、部屋にいろいろな人々がいればいるほどよいだろうとFUNWORKSでは考えていた。しかし、いろいろな人がいるのは、一見して楽しそうに聞こえるが、実は混沌している状態は楽しくはない。大きな声だけが聴こえて、小さな声はかき消えてしまう従来のブレストのようになってしまうのを避けて共同セッションを実施するには、ある種のストラクチャーが必要となる。

そのため、FUNWORKSにはクリエイティビティ・アーキテクトのエリカ・フォルテスキュー(Ms.Erica Fortescue)がいる。フォルテスキューは、広告やマーケティング業界の出身ではなく、子供のクリエイティビティ開発を仕事としてきた。カリフォルニア州ソーサリト町にあるディスカバリー博物館(Discovery Museum)子供クリエイティビティセンター(the Centerfor Childhood Creativity)の創設者である彼女は、FUNWORKSと共にユニークなプロセスを開発した。異なるグループの大勢の人々を迎え入れ、彼らが協働してオリジナルなひらめきを生み出せるような進め方である。

例えばスピードストーミング(Speedstorming、※注1),フォアポイント・プラッシング(Four-Point Plussing、※注2),そしてシンク-ペア-シェア(Think-Pair-Share ペアで協力して案を出した後に全員とシェアする方法)といったツールを活用し、クライアントが新しいアイデアに対して「ノー」と即答してしまうパターンから抜け出せるようにサポートする。その実現のため、Funworkshopはクライアントの状況に応じ、フォルテスキューとクリエイティブ・コラボレーション責任者のケニー・ホワイト(Mr.Kenny White)によって細かなところまで心を配ってつくりあげられる。戦略的な準備が必要なのだ。

どのようなエクササイズがクライアントとコメディアンから最も多くのレスポンスが得られるそうか? どうしたら最終的にクライアントが望む結果<それがコマーシャルでも、ソーシャルメディアのポスティングでも、あるいは大きなブランドのローンチであっても>を導き出すことができるか?

このようなFUNWORKSのユニークなプロセスから、次のような具体的な成果が得られている。初期段階からクライントのチームを招き入れた場合、従来、広告代理店で行っているプロセスと比較して、仕事が3倍早く進む。誤解を生みがちな人から人への連想ゲームや、クライアントを圧倒するためだけに準備されるものの、しばしばクライアントの目論見とは違ってしまうような一大発表イベントはない。それらがないからこそ、本当の意味で楽しいと感じられる共同的な創造プロセスが実現でき、FUNWORKSでは広告をもう一度、本当にFun=楽しいものにできたのだ。

Speedstorming
注1 : Speedstorming
スピードデート(いろんな人と短い時間で次々に話をする回転ずし風のデート)とブレストを合わせたようなツール。パートナーを次々に変えながら共通の課題について語り合うことでアイデアに思わぬ発展がある。短時間で良い発想が生まれやすい。
Four-Point Plussing
注2 : Four-Point Plussing
生れたばかりのアイデアをさらに絞り込み凝縮させるため、そのアイデアに対する検討基準を4項目、設定する。各アイデアが基準を満たすかどうかについて、1(あまり満たさない)-10(完全に満たしている)の数値でグラフに表示。足りない部分については改善案を追加する。
FUNWORKS

こちらもご覧ください

お問い合わせ・サポート

ご質問やお問い合わせはお問い合わせフォームかお電話でお願いいたします。

お問い合わせ・サポート

ショールーム一覧

お近くのショールームへお越しいただき、イトーキの考える新しい提案を是非ご体感ください。

ショールーム一覧

↑