阿部 竜士株式会社シマノ バイシクルコンポーネンツ事業部
企画部 文化推進室 係長

阿部さん、自転車で通勤すると働き方は変わりますか?

自転車部品や釣具などの製造販売を行うシマノで、「自転車文化の創造」を目的に活動をする阿部竜士さん。自転車に乗ることと、体や心、そして働く意識の関係についてお話を伺ってきました。

取材・文 安楽由紀子  写真・高井正彦

話を聞いた人

株式会社イトーキ 先端研究統括部
ワークスタイル研究所

田中 勇一

自転車通勤で気分スッキリ

-- 御社は自転車部品などの製造販売をされていますが、阿部さんは「文化推進室」で、どのようなことをされているんですか?

私の主な業務のひとつは、自転車と健康に関わる研究や調査です。自転車に乗ることが体や心にどんな影響をもたらすのかを具体化することで、自転車の価値を知っていただけたらと思っています。

近年は、スポーツバイクから軽快車まで、生活の中で乗る自転車の選択の幅が広がっています。シマノでは、自転車を散歩感覚で乗って道すがらを楽しみ、爽快感を味わうことができたら、暮らしはもっと豊かになる。そんな考えを広めるため、「散走」と呼ぶスタイルを提案したり、通勤での自転車の活用を推進しています。

-- 社員の方も自転車通勤をされていますか?

本社社員の約3割が自転車通勤の登録をしています。最寄り駅まで自転車を利用している、という社員もいます。私自身も週に2~3回は自転車で通勤しています。電車だと遠回りになる経路も、自転車だとスムーズなんです。片道15キロ、1時間弱くらいですかね。

-- 自転車通勤にすると、働く意識などに変化はあるのでしょうか?

当社が行った調査によると、3ヵ月間の自転車通勤によって、多くの方から「活力が出てきた」「モヤモヤを忘れてスッキリできた」「気持ちが切り替わってメリハリがついた」などの感想を頂きました。なかには「痩せたいと思っていたのに、ご飯がおいしくなってつい食べてしまった」といったコメントも(笑)。でも以前より、生活が充実してイキイキとされているのが良くわかりました。通勤に自転車を活用する、つまり適度な運動を日常に取り入れることによって心身の調子が上がり、結果として仕事にも前向きに取り組めるのかもしれません。

ただ、会社によっては駐輪スペースの問題などから、通勤時の利用を禁止しているところもあります。その場合は、家から会社までの長距離にこだわらず、家から最寄り駅まで、あるいは2~3駅先までなど、短距離での利用をオススメしています。少しの時間ではありますが、風を感じながら走ることで爽快感が得られますし、自転車をこぐことに集中するため気分も切り替わります。

-- 短い距離でも効果があるんですね!

さらに詳しい調査もあります。都内に住む10名の方に2ヵ月間の自転車通勤をしてもらい、二次元気分尺度という方法を使って自転車通勤前後の気分状態を調べました。自宅を出発する前と会社に着いた後、会社を出る前と自宅に着いた後(1日4回)の気分状態をチェックしたのですが、自転車通勤の日は気分の「活性度」と「安定度」が電車通勤時よりも高いという結果が出ました。

帰宅後も「活性度」、わかりやすく言うと「やる気」が高いということは、余暇を充実させようという活力が残っているということでもあります。自ずとワークライフバランスの充実につながります。このような現象は、通勤の一部に自転車を取り入れた人にも見られました。

-- 確かに「仕事の効率化」「残業ゼロ」はよく議論されますが、そのために「気持ちよく働くにはどうすればいいのか」はあまり語られていません。

これはある方の受け売りなのですが、プロ野球選手は、一球一打席のために、普段から食事、睡眠に気をつけ、トレーニングを積み重ねることでコンディションを整えています。働くことも同じと捉えるなら、普段から睡眠、食事に気を遣い、コンディションを整えたほうがパフォーマンスも上がるはず。かと言って、だれもがイチローのようにストイックにはできない(笑)ので、通勤時間を活用して30分、いや10分でもいいので自転車に乗って体を動かせば、よりよく働けるのではと思っています。もちろん、通勤に自転車を使えないという人も多いので、ウォーキングなどで実践するのもひとつの方法だと思います。

働き方改革、重要なのは働く人の気持ち

-- 海外では自転車通勤は盛んですか?

例えばオランダのアムステルダムや、デンマークのコペンハーゲンなどに代表されるヨーロッパの都市は日常使いとしての「自転車文化」が進んでおり、道路には自転車レーンがあり、自転車通勤も多い。企業も自転車通勤を推進しており、オランダでは企業に対する税法上の自転車通勤優遇政策や自転車利用の保険や補償制度もあります。他のヨーロッパ諸国でも、自転車はグレードの高いものを選び、長く大切に使うというスタイルで、日常での移動に加え、週末は山間でのサイクリングに使うなど、レジャーとしても活用されています。

-- 通勤のみならず、日常でもレジャーでもうまく使われているのですね。

日本でも、自転車が健康増進に役立ち、結果として生産性も上がる、といったデータが出てくれば、さらに市民権を得られるかもしれませんね。

-- 自転車通勤によるスッキリ感を味わっている阿部さん。今後の働き方についてもご意見を聞かせてください。

最近、たまに立って仕事をしているのですが、やってみたら「いいな」と実感しています。座りっぱなしより集中力が高まるんですが、一人だとやりづらい(笑)。将来は、それぞれが希望する働き方を叶える、しくみ、ハード、雰囲気、環境が整っているといいですね。みんなが一様ではなく、さまざまなワークスタイルを受容できる世の中になるといいなと思います。

今後、ICTやAIなどさまざまな技術が発展し、働き方も変わっていき、世の中はより便利になると思います。しかし大切なのは、それらを使う人であり、その人の心と体の健康があってこそのものだと思っています。

阿部さんにとって「働く」とは?

仕事は社会との接点。自分らしさを追求し、社会や人の役に立つことで、「自分」がつくられていくと思います。当社の活動を通じて、世の中の人が生き生きと働けるようになれば嬉しいですし、私自身も楽しく仕事をしていきたいと思います。

阿部 竜士(あべ りゅうじ)
1978年大阪府生まれ。2002年川崎医療福祉大学健康体育学研究科修了。学生時代に仲間と自転車のイベントに出場したことがきっかけで、自転車に興味を持ち始める。2003年株式会社シマノ入社。入社当時から自転車と健康をテーマに、自転車の新たな価値創造、普及活動などに取り組んでいる。

撮影協力: Life Creation Space OVE(オーブ)南青山
http://www.ove-web.com/
株式会社シマノが運営するLife Creation Space OVE(オーブ)は、 Opportunity(機会)、Value(価値)、Ease(気楽さ・容易さ)の頭文字を取って名づけられた、自転車のある暮らしを提案するカフェ。自転車で散歩のように気軽に走る散走や、様々なイベントも行われています。

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