Phillip Seiji VincentPlug and Play Japan株式会社代表取締役

ヴィンセントさん、シリコンバレーと日本の働き方はどう違いますか?

生産性向上ばかりが取り上げられる日本。一方でスピードを武器に、世界を席巻するシリコンバレーのベンチャー企業。働き方の決定的な違いはどこにあるのでしょうか? シリコンバレーに本社をもつイノベーション支援企業「Plug and Play」の日本法人代表、Phillip Seiji Vincentさんに聞きました。

取材・文 安楽由紀子  写真・高井正彦

話を聞いた人

株式会社イトーキ 商品開発本部
先端技術研究所 基礎研究企画室 室長

福山 春夫

日本でベンチャー企業が育たないワケ

-- 「Plug and Play」はシリコンバレーに本社があるとのこと。どんな仕事をしていますか?

アメリカではUber、Airbnb、Facebookなど世界を席巻するベンチャーが続々と生まれていますが、日本は極めて少ないですよね。ベンチャーが育つ環境や風土に乏しいことが理由です。私は日本にベンチャー企業が育つ「エコシステム」をつくるため、つまり「次のユニコーンを生み出す」ためにシリコンバレーからやってきました。

-- 具体的には、どんな内容ですか?

IoT、Fintech(金融)、InsurTech(保険)、モビリティの4テーマで、ベンチャーを育てる「アクセラレーションプログラム」を行っています。グローバルで約300社、日本で13社ある大企業のパートナーとマッチングしたり、当社が出資をしたりすることもあります。ただ日本では、それだけでエコシステムは成り立たない。

-- と、言いますと?

「日本企業あるある」なんですが、新しいベンチャー企業やプロジェクトを紹介しても「受け入れ体制がない」と断られるのです。もともと私はシリコンバレーで育ち、日本企業にベンチャーを紹介する仕事をしていたのですが、日本側はうまくキャッチしてくれない。日本の大企業には、イノベーションや新規事業は社内から生まれるものだという認識があり、心からベンチャーを必要としていないんです。

だからいまは、ベンチャーの育成に加えて大企業向けのサポートも行っています。ワークショップで「なぜイノベーションが必要か」を説明したり、どんなベンチャーと組めばいいかアドバイスしたり......。

失敗に対する文化の違いが大きな障壁 !?

-- 働き方、仕事の進め方の違いも大きいでしょうか。

そうですね。日本企業はひとつ判断するだけでもいろいろなステップが必要で、スピードが遅い。一方、アメリカには現場に予算と決定権を与えている企業が多いので、判断が速い。ベンチャーは「3か月後に生きるか死ぬか分からない」世界ですから、彼らと連携する大企業側にもスピードが求められます。

-- 失敗が許されないことが日本企業の判断の遅さの原因?

シリコンバレーと日本の大きな違いはそこです。シリコンバレーでは「失敗した経験がないと成功できない」と捉えています。でも日本企業は違う。大企業は「ベンチャーとの提携」を「失敗のリスク」と捉えていますし、学生も優秀な人は大企業に就職しがちです。アメリカでは優秀な人ほど起業しますから、大きな違いです。

いま、世界を変えているのはベンチャー企業です。彼らの失敗を含めたチャレンジや新しいテクノロジーを取り入れない企業は取り残されるし、経済全体も成長しづらい。日本企業にベンチャーの考え方を浸透させたいのですが、なかなか難しいので、日本にあったイノベーション手法を模索しているところです。

なぜ日本企業は変革できないのか

-- 「働き方改革」では、生産性向上が叫ばれています。ヴィンセントさんは、日本人の生産性をどう見ていますか?

低いと思います。まず、資料づくりにかけている時間が長い。言いかえると、会社の成長につながらない仕事に時間をかけすぎです。少なくとも当社のように小さな企業は、必要なレポートをまとめている間に死んでしまうかもしれない(笑)。会社やチームが育つために必要なことに集中すべきです。

また、日本人は完璧主義ですよね。仕事をするからには常に100%を目指す。それが評価されることもありますが、アメリカ人のように「80%やったら次」の姿勢でも十分なケースはあると思います。

-- 夜の「飲みニケーション」も不要ですか?

なくてもいいと思います。当社の勤務時間は8時半から17時半で、忙しいときは19時~20時くらいまで残ることもありますが、それ以降を仕事に充てることはほぼありません。

日本人はとても几帳面で、勤務中は仕事の話、プライベートの話は飲み会の席で、と分けているようです。そして、飲み会の席で信頼関係を築くのだ、と。でもアメリカ人は勤務中や休憩時間にいろんな話をするので、飲みに行く必要がないんです。日ごろのコミュニケーションが信頼関係やチームの結束を生みます。

-- 日常のコミュニケーションの密度がイノベーションにつながりますか?

コミュニケーションは業務を円滑に進めるだけでなく、創発性も高めると思います。

-- 日本企業・日本人の働き方変革の鍵はどこにあるでしょう?

もっと失敗が許され、チャレンジすることが評価されるといいですね。日本では「失敗=悪いこと」と捉えられますが、失敗の数だけ気づきがあり、イノベーションの種になる。「働き方改革」を「生産性向上」と捉える日本人もいますが、働き方やその姿勢を変えることが、イノベーションにつながると私は考えています。

また、このような働き方の変革は、ベンチャー企業がリードしてくれるはずです。日本でももっとたくさんのベンチャー企業が生まれ、時代をリードしてほしい。よく「アメリカンドリーム」と言いますが、日本に来れば成功できる「ジャパンドリーム」が起こってほしいと思います!

ヴィンセントさんにとって「働く」とは?

「世界」を変える機会、です。「世界」とは、国や地球といった大きなものに限りません。自分の世界でもいいし、他の人の世界でもいい。いろいろな意味での「世界」を変えるきっかけになると思っています。

Phillip Seiji Vincent(フィリップ・誠慈・ヴィンセント)
1989年に、アメリカ・カリフォルニアでアメリカ人の父と日本人の母との間に生まれる。生後まもなく日本へ。インターナショナルスクールを経てアメリカの大学に進学。大学卒業後、日本の商社に就職したのち、2014年Plug and Playに転職。2017年、東京・渋谷区にPlug and Play Japanを設立し、代表として来日。

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