遠山正道株式会社スマイルズ 代表取締役社長

遠山さん、なぜトップ自ら複業を始めたんですか?

「Soup Stock Tokyo」で知られる株式会社スマイルズが「業務外業務」という新サービスを始めました。様々なスペシャリストが本業以外のサービスを提供する、つまり「複業(副業)」をするもの。このような「複業」の動き、今後は一般の会社員にも広がっていくのでしょうか。

取材・文 安楽由紀子 写真・高井正彦

話を聞いた人

株式会社イトーキ 商品開発本部
先端研究統括部 先端技術研究所

凌 嘉良(りょう かりょう)

30年ほど前にも「複業」でおでん屋をやっていました

-- 2017年4月に、複業人による商品を販売するオンラインショップ「業務外業務」を始めました。これはそもそも、どんなサービスですか?

様々なスペシャリストが、本業以外のサービスを提供するものです。建築家や書店店主などが登録しています。実は私も登録していまして、本業は社長業ですが、「ナレーション」「茶話会」「手品」「服のコーディネート」などを商品として販売しています。

こんなことを始めたのは、2016年のエイプリルフールがきっかけです。スマイルズとして『4月1日の贈り物』と題し、私が「一日社員をやります」とか「100本のスプーンにご招待~遠山の手品付き」など、本当なのか嘘なのかわからない贈り物をご用意して応募を募ったところ、結構な数の応募がありまして......。その時に手品をしたり、タイルアートを描いたり、日本フィンランドデザイン協会の一日社員をしたりしたんです。それが皆さんに喜んで頂けて、私も嬉しくて。

最近は「人生100年時代」と言われますが、ずっと一つの会社、一つのコミュニティにいると生き方や視点が固定化してしまうリスクもあります。若いうちから、様々なことに興味を持ち、「人生の試し打ち」ができる場があればいいと思っていて、「業務外業務」はその場として捉えています。

-- 「これからは複業(副業)の時代である」と言われています。一般の会社員にも広がると思いますか。

思います。というか、思えば私も会社員時代に複業をしたことがあります。三菱商事に在籍していた30年ほど前に、屋台のおでん屋さんをやったことがあります。

-- おでん屋さんですか?!

はい。また絵の個展も開きました。プライベートの時間を使ってそのようなことをやるということは、それ以上に本業もきちんとやらなければ示しがつきませんので、どちらも真剣に取り組みました。大変でしたけど、上司に頼まれて個展をやったわけではなく、やりたくてやったことなので、つらいと思ったことはないですね。

当社の社員にも、様々なチャレンジをしてもらいたいと思っています。例えば、時短制度を使い、心理学の勉強をしたいと学校に通っている社員や、仕事をしながらゲーム作家を目指している社員もいます。会社というコミュニティ以外にも、自分の居場所をつくったりやりたいことにチャレンジすることは、まさにわれわれが考える"複業"の第一歩だと思っています。本人が望めば、将来独立しスマイルズと一緒に会社をつくるのも、一つの選択肢として持ってもらえればと思います。

-- 社員の複業が、貴社のビジネスを広げる可能性を秘めているのですね。

そうですね。新宿一丁目の看板のないバー「Toilet」、西早稲田のラム肉専門店「羊のロッヂ」は、当社の社員がスマイルズに在籍したままで会社をつくりスタートしています。最長2年間は給与を出す予定で、その間にお店がうまく回るようになれば独立、どうしてもうまくいかなければ戻ってきてもいい、としています。ファッションブランドの「my panda」も、当社が手がけるネクタイ専門店「giraffe」のデザイナーが、ファッションブランドをやりたいという夢を叶えるために立ち上げました。ネクタイのデザインと並行しながら、「my panda」ではデザインから製造、社長業まで行っています。

自分から生まれたものに "失敗"はない

-- チャレンジする姿勢が、会社全体に根付いているのですね。

もともと当社は、スープ以外にもネクタイブランド、リサイクルショップ、ホテルといろいろ行っていて、ジャンル分けがしづらい企業です。20~30年かけて一つの技を極める職人さんもいますが、うちはそうではなくて職人の技が必要なら職人さんと協業をする、という考え方です。

私自身も、一つのことに集中するというより、いろいろなことを掛け算のように行いながら新しいことを思いつくタイプ。「業務外業務」や「複業」を通じて興味の幅が広がるほど、ユニークなビジネスが生まれると思っています。

-- それにしても、業態は本当にバラバラですね。

でも、思想は共通しています。どのビジネスもマーケティングの発想から生まれたものはない。つまり「これが流行っているから」「売れそうだから」という考えで始めたものはないんです。
こう考えるようになったのは、かつて開いた個展がきっかけです。アーティストは「何の絵を描いたらいいですか」などとアンケートをとったりしませんよね。自分が描きたいものを描く。なかには売れない絵もあるだろうけど、すべて描きたいものだから 「失敗作」ではない。むしろ「こんな絵が売れるよ」と言われて描いて、売れなかった時の方が 失敗とも言えるかもしれません。

それと同じで、"自分に降りてきた"ものを事業にすることを大切にしています。自ら好きでやっていることに、失敗はありませんから。

-- アイデアが浮かびやすい場所はありますか。

会社では店舗で流しているBGMをいつも流しています。何かしら刺激があった方が集中できるタイプですね。勉強する時、カフェに行ったりラジオを聴いたりする人がいますが、同じです。ちなみに当社がプロデュースして2017年11月にオープンした「RETHINK CAFE SHIBUYA」は、1階にはDONBURIカフェ、ワークスペースの2階にはなぜかマンガがあります(笑)。これは、マンガを読んでリラックスしている時間も仕事をしている時間もどちらも大事で、時にそのマンガから企画のヒントを得たり学びを得ることだってあると思っています。なので、マンガを置いているんですね。

また当社には社長室をつくっていません。その方が、社員のことがよく見え、理解できるからです。日頃の雑談からいろんなアイデアが広がったりすることも多々ありますね。

-- そうなんですね。今後も複業を進めていかれますか?

ええ。独立や転職という"ゼロイチ"の大きなジャンプって、簡単にはできないと思うんです。だったら、今の会社にいながら、グラデーションのなかでやりたいことを試し打ちができるといい。それによって会社側にも筋肉がつき、スマイルズの価値を高めていけると考えています。

遠山さんにとって「働く」とは?

「仕事も人生もプロジェクトの積み重ね!」 仕事も人生も、自分から一歩踏み出さないと始まりません。夢という大げさなものではなく、プロジェクトだと思えば始めやすいのではないでしょうか。

遠山正道(とおやま まさみち)
1962年東京都生まれ。慶應義塾大学商学部卒業後、85年に三菱商事入社。2000年に三菱商事出資のもとスマイルズを設立、代表取締役社長に就任。2008年にMBOにより100%の株式を取得し独立。2016年「Soup Stock Tokyo」を分社化。現在、「giraffe」、セレクトリサイクルショップ「PASS THE BATON」、ファミリーレストラン「100本のスプーン」、海苔弁専門店「刷毛じょうゆ 海苔弁山登り」、「檸檬ホテル」などを展開する。著書に『成功することを決めた』(新潮文庫)、『やりたいことをやるというビジネスモデル』(弘文堂)がある。

撮影協力: RETHINK CAFE SHIBUYA
http://rethinkcafe-shibuya.jp/

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