トップメッセージ

明日の「働く」を、デザインする。その実現に向けて

明日の「働く」をデザインする。――「働く」のパラダイムが激変している今、イノベーションの歴史を持つイトーキだからこそ言える、既成概念にとらわれない未来への決意を込めたミッションステートメントです。
私の使命は、創業132年の歴史に裏打ちされた高機能・高品質を備えた製販一体の強みにデータドリブン経営を掛け合わせ、もっと大胆に、真剣に、チャレンジし、明日の「働く」をリードすることを通じてイトーキの成長と社会課題の解決を実現することです。

コロナ禍で私たちの働き方は一変しました。従来のオフィス勤務に加え、在宅勤務やワーケーションといった働き方が出てきて、会議も当たり前のようにリモートで行われるようになりました。もはや、働くことは、物理的な場所に縛られるものではなく、“Work From Anywhere”になってきている。その観点からこれからの働き方を考えると、リアルとバーチャルの融合系になっていくと予測できます。

当社は祖業のオフィス家具メーカーとしての実績に加え、上流のオフィス設計や構築、さらにはITやDX(デジタルトランスフォーメーション)の活用によって、新たな働き方やオフィス空間を世の中に提供しています。その領域への知見と経験を持つ私が加わることで、リアルとバーチャルをうまく掛け合わせて、ミッションステートメントが示す未来への前向きな広がりをさらに出せると考えています。

一般的に企業のミッションは耳ざわりのいい言葉が並びがちです。
しかし、難しいのは、ミッションを達成するために具体的なアクションをどう取るか。当社の根幹には開拓精神のDNAと、先見性に基づくIT企業にも負けない最先端テクノロジーがあります。これを社内プロセスに組み込んでいるのが当社の強みの一つです。

企業の根幹にある開拓精神とイノベーションのDNA

イトーキのDNAである開拓精神は、1890年に伊藤喜商店としてスタートした長い歴史に根づくものです。当社はこれまで、数多くの面白い製品を世に出してきました。

例えば、1903年に日本で初めてホチキスの輸入販売を始めました。製品名は英語の「Stapler」とはせず、製造元の社名から取りました。ほかにも「Fountain Pens」を万年筆として流行らせたり、魔法瓶もそうです。そうした製品を手にした人々は、「あの会社は誰も見たことのない面白いものを出す。次は何だろう」と期待を膨らませます。
これは今で言う、マーケティングやブランディングに該当しますが、そうした期待に応えてきた会社なのです。

私は営業で訪問したお客様に必ず「イトーキのチェアには部品がいくつ使われていると思いますか?」という質問をします。回答の大半が20~30個、多くても100個ですが、実は当社のフリップフラップチェアは344個もの部品を使用しています。
チェアは高性能になればなるほど非常に多くの機能・部品で構成されており、特に姿勢や体の動きに追従させるため、あらゆる場所に回転機構を備えています。回転機構が増えるとそれ以上に部品点数が増えるのが普通ですが、フリップフラップチェアは独自の技術により、大幅な部品点数の削減に成功しています。結果、特殊な構造・素材を用いることで、10カ所の回転機構をたった1つの部品で実現しています。

また、2006年度にゼロエミッションを達成した関西工場(滋賀県近江八幡市)では、製造プロセスごとに品質を担保しています。例えば、ロボットによる部品の溶着作業では、360°カメラが溶着後の部品を撮影し、画像をAIを使って認識・解析し、見本と照合します。不合格の場合は部品が溶着工程に戻されます。ここには高度な画像認識技術と自働化の仕組みがあります。

同時に、現場には「ちえくり」という文化もあります。これは、現場で知恵を絞り出し、できるだけ新たな動力を使わずに課題を解決するというもの。この技術と文化が1989年のデミング賞受賞にもつながっています。

数年前からは産学官の連携によるさまざまな実証実験を積極的に行っています。例えば大手音響メーカーや大学と共同で、テクノロジーを活用し、音声コントロールやAIによる音声分析を用いた創造的な議論につなげることを目的とした仕組みの研究に取り組んでいます。

オフィス1.0、2.0、3.0の掛け算で企業価値を高める

時代の変化とともに企業や事業の形は変わります。現在はオフィス1.0から2.0へ、さらには3.0の事業に取り組んでいます。この3つを掛け合わせることで、イトーキの価値をさらに向上できると考えています。

オフィス1.0の世界は、オフィス家具の製造・販売が主です。競合との差別化要因は品揃えや価格となり、価格競争に陥りがちな事業形態です。そこでオフィス2.0の世界では、もう少し上流のオフィス設計やオフィス構築を手がけることで付加価値を上げています。同時に、働き方のコンサルティングも始めました。当社は、社員に裁量を与えて働き方を選択させるActivity Based Working(ABW)というコンサルティングサービスも提供しています。

オフィス3.0の世界は、ITやDX推進による働き方改革です。
働き方改革は社員のパフォーマンスやエンゲージメントを高めるもので、どう魅力あるオフィスにしていくのか、生産性の高いオフィスにするのかをITやDXを活用して考えていきます。オフィス3.0では電機メーカーやIT企業が競合となります。そこで当社の強みをいかに発揮していくか。

ここでチェア、机、間仕切りなどのオフィス什器をIoTデバイスと捉えると、当社はさまざまなデータを取ることができます。例えば、高性能IoTセンサー「EXBeacon」を利用した「Workers Trail」というアプリケーションは、誰がどこでどんな仕事をしているかという位置情報を「見える化」するサービスとして提供しています。
ほかにも、チェアにセンサーを付けて体の形状を測定できるようにすれば、そのデータをもとに一人ひとりの身体の形状にあった最適なチェアをつくれるかもしれません。このように、働く人にとって居心地のいい、さらには生産性や効率性を向上させるオフィスをつくることは働き方改革を促進します。

生産性や効率性を高めるだけでは、社員のエンゲージメントを上げるオフィスにはなりません。例えば、コロナ禍の在宅勤務も、ITリテラシーが高く業務経験のある社員ならまだしも、業務経験の少ない新人や若手社員に質の高い仕事は難しいものです。
そこで教育・研修やメンタルヘルスケアを実施しようとしても、「オンラインで十分なのになぜ出社するのか」と言われてしまう。だからこそ「出社したくなる魅力のあるオフィス」であることが重要になるのです。当社の強みは、この領域で活躍できる優秀なデザイナー、空間デザイナー、一級建築士、コンサルタントがいることです。

現在はスマートオフィスのコンセプトを掲げ、オフィス3.0に取り組んでいます。例えばオフィス什器のデジタル制御が可能になれば、製造プロセスでのさまざまな環境配慮や、より精緻な在庫管理も可能になります。

オフィス1.0や2.0と違い、3.0はオンゴーイングです。例えば、オフィス設計ではCAD図面をもとに「人の流れはこうで、こうすれば働きやすいだろう」と仮説を立てますが、オフィス3.0では仮説が正しかったかどうかを使用状況から分析することで、次に取るべきステップを検討することができるようになります。

オフィス3.0で重要なのは、「イトーキしか出せないデータ、イトーキしか持っていないデータは何か」を考えていくことです。いわゆる、データドリブン経営によって当社しか出せないデータを価値として磨いていく。オフィス1.0で家具をつくる時は想像を膨らませていく積み上げ型のアプローチですが、オフィス3.0のデータソリューションは大まかな想像をし、施策を打ち、走りながら軌道修正していくアプローチです。
これは1.0、2.0、3.0のどれに特化した事業をやるという話ではありません。3つの掛け算で『明日の「働く」を、デザインする。』ことが当社の強みとなり、中期経営計画で掲げる高収益企業への体質改善や海外事業展開にもつながっていくのです。

中計の柱は、働く環境づくりと高収益企業への体質改善

現在、2023年度を最終年度とする中期経営計画「RISE ITOKI 2023」を推進しており、『ポストコロナの「働く環境」づくりをリードする』と『強靭な体質の「高収益企業」になる』をその柱としています。最終年には、売上高1,330億円(2021年度実績1,158億円)、営業利益60億円(同25億円)を目指しており、上乗せ部分は、海外事業、研究・物流・商業施設など国内設備機器事業、新たな働き方提案やDX活用による国内オフィス市場事業の拡大を図っていきます。

当社はこれまでヒューマンパワーに頼る部分が大きく、IT投資が少ないという課題がありました。今後、DX化を推進していくことで、高収益を上げる筋肉質な体質にしていきます。その中で、さらにポイントとなってくるのが人財です。例えば、現在はデータサイエンティストの採用が盛んですが、会社が最も必要とする人財とは、会社の業務を熟知し、ITを利用することで効果が出ると判断できる人です。若手で優秀な人財がイトーキにはたくさんいる。この人財の、DX人財へのリスキルが進めば企業体質は確実に良くなります。

海外事業の拡大については、前提として海外のオフィス家具メーカーはオフィス1.0の製造だけを手がけるところがほとんどで、また販売は代理店を通すのが一般的です。つまり、オフィス2.0や3.0の事業はジャパンモデルなのです。したがって、海外市場でシェアを伸ばすには、このジャパンモデルを使ったグローバル企業との提携が重要なキーになります。

私の10年後の夢は「世界のイトーキ」になることです。そのために日本でオフィス3.0の実績を出し、それをもとに世界を制覇する。すでにバーチャルの世界では国境はありません。より広いフィールドで『明日の「働く」を、デザインする。』を実践していくことで、日本も、世界も、そして地球も元気にできると考えています。

代表取締役社長
湊 宏司

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