(後編)実際のところ、ABWは成功したのか?ITOKI TOKYO XORKでの3年間の実践の成果と課題

COLUMN
2022/04/18

※こちらの記事は「(前編)実際のところ、ABWは成功したのか?ITOKI TOKYO XORKでの3年間の実践の成果と課題」の続きとなります。

前回の記事では、2018年11月から本社ITOKI TOKYO XORKで実施しているワークスタイル「XORK Style」の成果について、下記のポイントをご紹介いたしました。

  1. 生産性は年を追うごとに向上
  2. パンデミックによる在宅勤務推奨にも速やかに対応
  3. 社員間のコラボレーションは道半ば
  4. 組織の連帯感はさらなる検証が求められる

このように想定していた以上の成果が出たと思われる点もあれば、ありたい姿に達していない点もあります。そういった状況も踏まえながら、XORKで働くワーカーは今、アフターコロナの働き方についていったいどのような考えを持っているのでしょうか。社内でのアンケート結果から、いくつかの特徴が浮かび上がりました。

コロナ後も柔軟性のある働き方を求めている

XORKで働くワーカーに、働き方に関する価値観について聞いたところ、80%以上のワーカーが「コロナが収束しても、自宅等を含め場所を選んで働けるようにするべきである」と回答しました。一方時間の柔軟性に関しては、現在当社ではフレックス勤務制度等を導入していないこともあり、やや慎重な回答の傾向が見られました。それでも3分の2以上のワーカーが「何時に働くのかは社員が選べるようにするべきである」と回答しています。

Adecco Groupが実施した、日本を含む世界25カ国、14,800人のワーカーを対象とした調査では、勤務時間の半分以上をリモートで働く就労者のうち76%はパンデミック後も柔軟な働き方へのサポートが重要である、という結果が出ています。グローバルトレンドと同じく、XORKで働くワーカーもまた、引き続き柔軟な働き方を希望しているといえます。

XORKで働くワーカーの多くは今後も柔軟性のある働き方を求めている

以前の働き方より生活の質が上がったと感じるワーカーは6割以上

柔軟性の高い働き方を求める理由として、1つ挙げられるのが生活の質の向上です。同調査でも、「XORK Styleの働き方をすることで、以前の働き方よりも生活の質が上がったと感じる」ワーカーの割合は6割以上おります。何をもって「生活の質の向上」とするかは人によって様々です。例えば当社社員へのインタビューでは、始業前に家事や育児に時間を使うことができる、いったコメントがありました。

参考記事:「ABWの働き方を実践する社員の声vol.2 ~中堅営業が語る、ハイブリッドワークで実践する時間の有効活用~」

ただし、「家事や育児、介護負担が大きい人が在宅勤務を望んでいるだろう」「若年層が柔軟な働き方を支持するだろう」などと先入観をもって判断をしないことが重要です。上記でご紹介したAdecco Groupのレポートでは、年代や子どもとの同居の有無でオフィスの利用意向が異なる、という点も指摘しています。具体的には、若い世代や子どもと同居している人の方がオフィスでより長く働きたいと考える傾向にあるようです。ただしこれもワーカーの住宅環境や家庭環境によって様々でしょう。一律にオフィス出社もしくは在宅勤務の頻度を押し付ける、ある属性だけが柔軟な働き方を許されている、といった運用は悪手になりかねません。ワーカーが自身のニーズに応じて働く場所を選べる、ということが重要であると考えています。

柔軟性のある働き方をすることが生活の質の向上につながっている

柔軟な働き方を実践することが、自社で働き続ける動機になる

また柔軟な働き方を社員に認めることは、何も社員への「福利厚生」ではありません。調査では、「柔軟な働き方を実践することが、イトーキで働き続ける理由の1つになると感じる」という記述には7割以上のワーカーが同意しています。また優秀な人材を獲得するためであれば柔軟な働き方を認めるべき、という認識にも概ねワーカーは同意しています。着々と進む少子高齢化、高度スキル人材の不足。人材獲得競争が今後さらに激化する中、社員のリテンションは数ある経営課題の中でも優先度が年々高まってきます。

Adecco Groupの調査結果でも、41%のワーカーがより柔軟な働き方ができる仕事に転職しようとしている、または転職を検討していると回答しており、特に若年層において顕著です。当社の採用責任者へのインタビューでも、採用への好影響について言及していました。柔軟な働き方ができるようにすることは、社員だけではなく経営上のメリットにもつながるのです。

参考記事:「ABWの働き方を実践する社員の声vol.1~ABWをきっかけにオープンな人事部へ!人事が実践するペーパーレスな働き方とは~」

柔軟性のある働き方ができることが人材獲得競争での強みになる

コミュニケーションは対面重視、でもオフィス出社の大幅な増加は希望しない

当社の調査では、コミュニケーションについての意向も確認しています。社員同士のコミュニケーションや打合せを、「可能な限り対面で行う方が良い」もしくは「可能な限りメールやチャットで行う方が良い」という、両極端な選択肢の間で自身の意向を選択してもらったところ、本社のワーカーはどちらかといえば対面でのコミュニケーションを重視していることが分かりました。一方、新型コロナウイルス収束後のオフィス出社率や滞在率については、約6割が現行のまま(30~35%)でよいと回答しています。一見、二律背反にも見えるこの結果をどのように解釈したらよいでしょうか?

コミュニケーションへの意向は矛盾している?

活動によってオフィス/在宅での実施意向は異なる

先ほどの結果を紐解くヒントの1つとして、当社が枠組みとして採用している10の活動*1のうち、オフィスと自宅、どのような比率で行いたいかという意向を見てみましょう。1人で行う「高集中」「コワーク」についてはオフィスと自宅に利用意向が綺麗に分かれました。「電話/WEB会議」についてはやや在宅で行いたいとする回答割合が多いという結果でした。
*1 10の活動についてはこちらをご覧ください。

1人で行う活動は使いたい場所の意向が分かれる

また2人で行う「二人作業」「対話」は、どちらも圧倒的にオフィスで実施したいという意向が多い活動です。3人以上で行う活動のうち、「アイデア出し」はオフィスでの実施意向が強く、「情報整理」「知識共有」はややオフィス寄りに偏っているとはいえ、ほぼ均等に分かれました。

2人で行う活動はオフィスで行いたい人が多い
3人以上で行う活動のうち「アイデア出し」はオフィスの利用意向が高い

「情報整理」(計画の進捗を整理・議論)については、同じ時間を共有する必要はあっても、緊急度によっては同じ場を共有する必要はないかもしれません。「知識共有」(プレゼンターが聞き手に一方通行で話す)は、同じ場を共有することでライブ感があるというメリットもある一方、セミナーをオンラインで視聴したり、オンデマンドで好きな時間に見たりことの利便性は、ここ数年で多くの方が感じられたことがあるのではないでしょうか。

つまり、コミュニケーションの「同期性」、すなわちコミュニケーションで時間を共有することをどこまで重視するかによって、活動をどこで行いたいのかが変わるのだと思われます。「メールやチャット」よりも「対面」でのコミュニケーションを希望する割合が多いことから、当社の社員は非同期的なコミュニケーションよりは、同期的なコミュニケーションを中心に業務を進めることを希望しています。しかし必ずしも場所を共有すべき場面は多くなく、WEB会議で大半が代替可能なためオフィスへの出社率は高くなくても良いという感覚を持っているのだと思います。ただし「二人作業」「対話」「アイデア出し」はWEB会議のタイムラグで「同期性」が若干損なわれることでやりづらくなる活動であるため、オフィスの利用意向が高いのだと推測されます。

ところで、Veldhoen + Companyがまとめたホワイトペーパー「ON THE EDGE ハイブリッドワークの最先端:オーストラリアの事例からの学び」ではオーストラリアとシンガポールのワーカーに、活動ごとのオフィス/自宅の利用意向を調査した結果を紹介しています。オーストラリアのワーカーは当社のワーカーと同様に「二人作業」「対話」「アイデア出し」でオフィスを利用したいという意向が多い一方、シンガポールでは「二人作業」はオフィスと自宅が同程度、「対話」については自宅で行いたいという声が過半数を占めており、コミュニケーションについての意向は国や企業の文化によって異なることが推測されます。

いま、あらためて「社員が行きたくなるオフィス」に立ち戻る

前編の記事とあわせて、当社の本社での取り組みと現時点での成果、ワーカーの感じ方についてご紹介してきました。

まず、自己裁量をベースとしてABW(Activity Based Working)という柔軟な働き方に移行したことは、生産性実感の向上やパンデミックへの素早い対応が行えたこと、またワーカーの生活の質向上やリテンションにつながっていることから、成功だと言えるでしょう。

一方オフィスへの出社が制限されたことで、オフィスにいても他の社員に会えないという状態は、対面コミュニケーションを重視する当社の社員にとってはオフィスの意義を見失ってしまいそうになる状態でした。ハイブリッドワークを見据えて、あらためてオフィスに「ここでしかできない」活動をサポートする機能をオフィスに兼ね備え、「社員が行きたくなるオフィス」にすることで活気ある場を作っていく。それによりチーム内のコミュニケーションや連帯感、さらには部門を超えたコラボレーションや学びを起こしていく取り組みを、ITOKI TOKYO XORKでは加速させていきたいと考えています。

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