04.シンラインキャビネット

スペースの有効利用を追求した、
オフィス収納のスタンダード。

既存シリーズ「システマシンライン」の機種追加として誕生した、シンラインキャビネット。あるお客様からの要望を受けて開発した結果、市場のニーズとも合致。今ではオフィス収納のスタンダードです。

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SR…ショールームスタッフ

辻井…業務システム室 室長  辻井 良雄

寺本…オフィス商品第1企画 1チーム  寺本 宜広

SR:インタビューにお答えいただくのは、辻井良雄さんと寺本宜広さんです。
まず始めに、シンラインキャビネット開発の立役者、辻井さんにお話を伺いたいと思います。シンラインキャビネットを開発・担当するようになったきっかけや、当時の市場、時代背景を教えてください。

辻井   良雄

業務システム室 室長。開発部門在籍時、シンラインキャビネットの開発に携わる。

パーソナル開発課課長 邑上 敦郎

寺本   宜広

オフィス商品第1企画 1チーム。主にシステム収納家具の開発に携わる。現在、新たなキャビネットの開発に取り組む。

パーソナル開発課課長 邑上 敦郎

辻井:シンラインキャビネットは、既存シリーズ「システマシンライン」の機種追加で、開発がスタートしました。最初に、そのシステマシンラインの生い立ちについて、少しお話しさせてください。
高度経済成長期から低成長期へと転換する時代、厳しい経済環境を乗り越えるため、各企業が内部事務の強化に着手しました。その中でオフィスの環境改善、特に、「狭いオフィスを広く使いたい」という声が高まります。そこでイトーキは、昭和52年に開催されたイトーキショウで、オフィススペースの有効利用法「イトーキ・スペース・セービング・システム」を展開し、オフィスの狭小問題に正面から取り組みました。システマシンラインは、そのショウでお披露目した製品のひとつです。壁面に2列の棚をすき間なく並べ、棚部分をスライドにすることでスペース削減を実現していました。その後、某自動車メーカーの希望を受けて、シンラインキャビネットの開発が始まりました。システマシンラインと同じように壁面に設置するタイプで、かつスライド部分が引出型のキャビネットが欲しい、とのことで生まれました。

SR:シンラインキャビネットという名前はどこから来ているのでしょうか?

辻井:シンラインのシンというのは、英語の「薄い」〔Thin〕を意味しています。ラインは「直線」〔Line〕ですね。従来品に比べて奥行が薄く凹凸が少ないデザインで、場所を取らないのが特長です。

SR:確かにシンラインキャビネットは、すっきりしたデザインですね。シンラインキャビネットを開発するに当たり、苦労したことはありますか?

辻井:従来のキャビネットは地板(ちいた)式と言い、最下段の棚になる部分が一枚板でしたが、このキャビネットは、スライド式に対応するため、初の分割地板式(最下段の棚になる部分が前後に分割され、中央部分がない状態)を取り入れました。しかし中央部分が無い分、今度は本体の強度確保の問題や『ねじれ』が発生するという問題が生じました。そこで強度を確保するため、ベースと強固に連結する構造にし、『ねじれ』については、大きな直角定規を本体にあてがい、各部の溶接をして製作しました。また製作時には、作業者が100kgに近いものを手で持ち上げるのですが、これがもう本当に大変で、作業者の負担を減らす設備を、毎日徹夜と休日返上で至急作りました。

SR:中央部分がない分、強度が確保しにくい…確かに素人でも何となく分かる、十分起きそうな問題ですね。新しい製品を作る際には、やはり難題はつきものなのですね。
そのような苦労の結果生み出されたシンラインシャビネット。辻井さんは現在は開発の現場を離れていらっしゃいますが、後進に繋ぎたいことはありますか?

辻井:シンラインキャビネットがここまでの長寿命な製品になるとは思っていませんでしたし、「いつまでもシンラインキャビネット人気に頼っていてはいかんのではないか?」ということを以前から大先輩とも話していましたが、ある意味「嬉しい限り」ですね。そこで私がうん十年前から実現したいなと思っているのが、「内面のフラットなシンラインキャビネット」です。それとシンラインキャビネットは横方向に対してthinではないので、「真」の「thin」を追求してほしいですね。コンピュータを使うようになって、「データで保存するからキャビネットは要らなくなるよ!」と言われた頃もありましたが、やっぱりまだまだ要るようですので、時代の変化に対応した「おもしろい」キャビネットの開発を願います。

SR:内面のフラットなキャビネット…これは素人にはなかなか想像が難しいですが、やはり開発者の方は想像力豊かでいらっしゃいますね。確かにこれだけデジタル化が進んでも、紙の書類はどうしても残るようで、今でもキャビネットに関するご要望は多くいただきます。
現在開発担当の寺本さんは、辻井さんの想いを受けつつ、今後どのようなものを開発していきたいですか?

寺本:諸先輩方が残して頂いたシンラインキャビネットの良いところを受け継いだ、シンラインキャビネットを超える、次世代のスタンダードとなるキャビネットです。30年前からオフィスのあり方や、それに伴うキャビネットのあり方も変わっています。例えば、ICTの発展に伴い、オフィスの移転の際には書類はすべてデータ化し、キャビネットの9割を減らしたという事例も報告されています。でも逆に言えば1割は残ったという事。その残りの1割はなぜ残ったのか?そこに何らかのヒントがあると捉え次世代キャビネットのスタンダードとは何かを真剣に考えていきたいと思います。

SR:偉大なる製品の良いところを受け継ぎつつ、それを超える製品を作る。口で言うほど簡単なことではないと思いますが、それをやろうとする寺本さんの意志が伝わってきます。
最後に、辻井さん、寺本さんにとっての、シンラインキャビネットとは何ですか?

辻井:「英知の集大成」ですね。私個人的には、シンラインキャビネットがTVドラマやTVニュースなどのメディアを通じて「見られる」「見える」「見てもらえる」ことが大変嬉しく感じていますし、自慢でも有りますね。

寺本:シンラインキャビネットはシステム収納のデファクトスタンダードになった製品ですので、なかなか簡単には壊せない文字通り「厚い壁」のような存在です。

SR:辻井さん、寺本さん、ありがとうございました。

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