03.バーテブラチェア

技術力を高みへと導いた、
革新的なオフィスチェア。

1981年の発売以来、根強い人気を誇るイトーキのロングセラー「バーテブラチェア」。当時高機能とされていたあらゆるチェアの一歩先をいく、画期的な製品です。


SR…ショールームスタッフ

邑上…コストダウン推進部 部長  邑上 敦郎

SR:二次・三次開発から担当された邑上 敦郎さんに、当時のお話を伺います。

邑上(むらかみ)   敦郎

コストダウン推進部 部長。開発部門在籍時、バーテブラチェアの二次・三次開発に携わる。

パーソナル開発課課長 邑上 敦郎

まず始めに、バーテブラチェアを開発するに至ったきっかけや背景を教えてください 。

邑上:当時は、日本の事務用回転チェアはまだまだ「グレー色のビニール張りの椅子」が主流で、イトーキを含む大手家具メーカーが、ようやくカラー張地のチェアを手掛け始めた時代でした。世界はというと、ヨーロッパメーカーを中心に最新の人間工学に基づいて設計された高機能チェアが主流となっていました。
5本脚仕様やガス圧による上下昇降機能、ワンタッチでの角度調節機構、ハイバック、樹脂成型品で有機的なフォルムを持った背と座。現在では当たり前の仕様ですが、当時としては画期的でした。当然、日本の大手家具メーカーは、高機能チェアを次の開発ターゲットにしていました。

そのような中、オランダのオープンアーク社より、これまでのモノとは違う、一段と画期的な製品 『バーテブラチェア』の提携話がもちこまれました。海外の展示会でバーテブラチェアを確認すると、これが素晴らしかったのです。
既にあったヨーロッパ系の高機能チェアの更に上をいく、最先端の人間工学に基づいた前傾機構と 無操作での動きを実現していました。デザインも極めて特徴的な「蛇腹」構造。まさに驚きの椅子でした。加えて、ヨーロッパ系の高機能チェアは回転タイプのみのラインナップが主流でしたが、 バーテブラチェアはエグゼクティブ用から会議用のスタッキングタイプまで展開されました。そして更に、二人掛けチェア等のパブリック分野にまでも、人間工学に基づいた製品を投入していたのです。
社内で検討の結果、日本市場に合わせたデザインと日本人の体格に合わせたサイズの変更を行うことを条件に、提携することになりました。

SR:当時では、バーテブラチェアは衝撃的な製品だったのですね。バーテブラチェアの機能の高さは、今でもバーテブラチェアを気に入って使用しているお客様がいらっしゃるのでわかります。
業務提携から製品販売にいたるまでの過程で苦労したことを教えてください。

邑上:日本人仕様のバーテブラチェアを製作する事は、技術陣、デザイナー陣からみると大きなリスクを伴います。バーテブラチェアはオープンアーク社との提携のもと、ヨーロッパではカステリ社、アメリカではクルーガー社で既に生産されていました。しかし、それは逆にイトーキにとって困難な課題が多発することを意味します。

図面や技術情報が届くと、イトーキでは今まで使ったことのない技術のオンパレードで、技術陣は 全国からノウハウを集め、対応したそうです。また開発した製品は、オープンアーク社の厳しいデザインチェックを受けるため、非常に緻密に開発しなければなりませんでした。
これによりイトーキの技術力は飛躍的に向上しました。振返ると、ここでの苦労があったからこそ、イトーキは成功したのだと思います。  

SR:バーテブラチェアが発売されるまでは、開発者の方々のとてつもない挑戦があったことがよくわかりました。この時の努力と苦労が今のイトーキのベースを作ったのですね。
邑上さんは二次・三次開発を担当されたとのことですが、どのような製品を開発されたのですか?

邑上:絨毯用スタッキングチェア、タンデムチェア、ドラフトマンチェア、ラウンジチェア、オートリターンチェア、ミドルサイズの回転いす等です。
オープンアーク社のオリジナルにはなく、技術提携品という感じはありませんでしたが、日本独自の市場要求に応えるものが多く、非常に勉強になりました。

SR:邑上さんは、今後イトーキからどのような製品がうまれることを期待しますか?

邑上:今はオフィスという巨大なシステムの時代なので、プロダクトは重要視されなくなってきました。とはいえ、人が座るものですから、イトーキのチェアはすべて座り心地は良く、ユーザーフレンドリーなものばかりであってほしいと思います。また、その中でもお客様が所有する喜びを感じられる製品が存在してほしいと思っています。

SR:オフィス空間をデザインしているとはいえ、チェアは仕事の効率性や創造性を発揮する上でもとても大切だと思います。チェアといえば、イトーキの○○と言って頂けるようになるといいですね。
最後に、邑上さんにとって「バーテブラチェアとは?」

邑上:私にとって、バーテブラチェアは、「越えるに越えられない高い壁」でした。 バーテブラチェアを越えるチェアを開発する為、人間工学の研究やデザインの勉強、CAD・CAM・CAEの導入など、様々な努力を繰り返ししてきましたが、なかなか越える製品を開発することはできませんでした。その後、トリノチェアというヒット製品を発売し、ようやく開発者としての役目を果たせたように思います。

SR:開発者ならではの悩みですね。でも、邑上さん他開発者の皆さんのバーテブラチェアを越える為の継続的な努力・探究心があったからこそ、次のヒット製品であるトリノチェアを生みだせたのだと思います。
邑上さんありがとうございました。今後、トリノチェアについてもご紹介しますので、楽しみです。

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